7エリーナside5
可能性があるのに失敗するかも知れないから諦める。これは後悔の鉄則だ。どんな事でも迷う事は当たり前だけれど、後になってやっておけば良かったって大抵の事が思える。
目の前の人達を見捨てて行くことはしたくない。ごめんね、コア。もう少しだけ待ってて。
「此方が先程話していた不可視の魔法を発動してくれている魔術士です」
周りの視線が突き刺さる中、デルガさんは紹介を進める。
「初めましてですわ。私はジェンシーと申しますの。宜しくお願いしますわ」
ジェンシーはお嬢様と呼ぶにぴったりと言った美女だった。紫でしっかり巻かれた髪が存在感を主張する。足が悪いのか両サイドから支えられての登場をした。
でもこれで合点がいった。足が動かないなら街へ行ってみんなを助けるなんてできないもんね。そんなに凄い人が居てどうしてって思ったけどそれなら仕方ない。
「宜しく、私はエリーナです」
「テウラだ。宜しく」
「け、ケーラです。宜しくお願いします」
「シアンです……宜しく……します」
「「シアン!?」」
「目ぇ覚めたのかよ!」
「は、早く言ってくださいよ!」
「まだ、身体が痛かったんですよ」
シアンはクロの背で首だけ起こして話しているけど、角度的に無理があるのでちょっとホラーっぽい。
「もう大丈夫ですけどね」
そう言いながらクロの背からズルズルと降りてくる。やっぱりホラーだ。
「良かったぁ! もうどこも痛くない?」
シアンの全身を確認して見るが、傷も魔法やポーションのお陰で完全に塞がっている。
「ちょ、エリー。そんなに見ないで下さい。恥ずかしいじゃないですか」
「ごめんごめん。つい嬉しくて」
「いつから起きてたんだ?」
「多分この街? に入って少し経った辺りだと思います」
「じゃあある程度状況も把握してんのか?」
「なんとなくは、ですが。ここの人達を助けるのでしょう? もちろん僕も行きますよ」
「ごめんなさい。こっちで盛り上がっちゃって」
「いいえ、構いませんわ。目が覚めて良かったですわね」
「心配掛けてしまいましたね。すみません」
「いや、俺達こそ悪かったよ」
「し、シアンさん。ごめんなさい」
「大丈夫ですよ。気にしないで下さい」
そう言えば急に力が増した2人だったけど、シアンはどうなんだろう。後で3人にステータスプレートを見せてもらおう。
「それじゃあ本題に入らせて頂いてもよろしくて?」
「あ、うん! ごめんなさい」
「先ずデルガから何処まで聞いていますの?」
「はい。ほぼ全て現状について説明をさせて頂いた上でご助力して頂けるという話になっています」
「分かりましたわ。街の配置や魔物の種類や強さ等の詳しい情報はお聞きになって?」
「詳しくは聞いてねぇな?」
「では、そこからお話ししましょう」
「お願いするね」
「先ずダンジョンの位置は街のほぼど真ん中ですわ。これは良いですわね?」
ダンジョンの言葉でシアンがピクリと反応するが、何とか流れに水を差すまいと我慢した。
「あぁ」
「ダンジョンを中心に貴族街が並んでますの。つまり生き残った方々はこの辺りに居ると考えられますわ」
「何で危険なダンジョンの付近に人が居ると思うの? 普通ダンジョンからは遠い所じゃない?」
「街の端まで逃げられるのであればとっくに逃げていますわ。奴らは人間を殺さず捉える事で街の外へ逃げた私達をおびき寄せようとしていますの」
頭が良い魔物なんだ。って事はもしかしてまた魔王が居るなんて事は無いよね!?
「恐らく1番大きな貴族のお屋敷に親玉みたいな魔物がいるはずですわ」
「お、親玉ですか……」
「や、奴が……奴が必ず居るはずです。気をつけて下さい」
デガルさん、やけに含んだ言い方をするなぁ。
「奴ってなんだ?」
「奴は……バケモノ……ですわ」
「ジェンシー様をこんな姿にしてしまったのも奴なのです! SSランクの冒険者であられるジェンシー様を!」
「やめなさい。私はまだ正式にSSランクになった訳ではありませんのよ」
「じ、ジェンシーってまさか!?」
「まさか、ロルドラ・ジェンシーですか!?」
「う、うそ!? ほ、本物ですか!?」
「え、なに? 誰?」
本気で聞いた事がなかった。彼女の事だけではない、他の有力な冒険者の事だって知らないけど……
「そうですわ」
「知らねぇのか? ロルドラ・ジェンシー、俺が聞いたときはまだSランク冒険者だったが、今一番SSランクに近い冒険者だって話だったんだ」
「そ、そうです! 理力魔法の天才と呼ばれて居るんです!」
理力魔法? 聞いたことないけど、どんな魔法なのかな。
「理力魔法って?」
「あなた理力魔法も知らずに冒険者をしていらっしゃいますの?」
むっ。なんか鼻につく言い方。
「知らない」
「デガルからは Sランク以上の方々とお聞きしてますけど……本当にそんな力があるんですの? 無謀に挑戦しようとしてらっしゃるのならやめておいた方が良いですわよ?」
「じ、ジェンシー様。彼女達は……」
「そ、そうでしたわね。ごめんなさい。問題はそれだけではありませんの。そのバケモノを倒す前にダンジョンを枯れさせなければなりませんわ」
次から次へと魔物に出てこられては、守りに人数を裂かなければならないからだと思う。その辺りは初めから分かっていた事だし大丈夫。
「だ、ダンジョンを枯れさせるんですか!?」
そうだよね、もう限界だよね。さっきから気になってたもんね。ダンジョン。
「あぁ、気絶しててそこは聞いてなかったのか……」
「だ、ダンジョンを制覇しなければ魔物の援軍を止める事ができませんから、助け出すには1度ダンジョンを制覇して、か、枯れさせてから上の魔物と連戦しなければならないんです」
「なる程、分かった。話を続けて欲しい」
思ったより驚かなくて逆に私は驚いた。私達とは違い、先にこの地獄絵図を見てからだからインパクトが小さいのかな?
「今話して貰いました通り、ダンジョン、上のバケモノ。これらとどうしても連戦になってしまいますの。本来なら私も一緒に行きたい所ですけれど、この足では行けませんわ。ですので貴方方がダンジョンを制覇し、上で戦闘が始まり次第私達もそこに赴き、市民達は結界で守りますわ。そうすれば守りは気にせず戦えますし、それくらいなら私でもできますわ」
「しかし、その作戦には問題が2つあります」
「そうですわ。貴方方がダンジョンを制覇するのと私達が街に辿り着き、結界を展開するのが同時でなくてはなりませんし、ダンジョンまで貴方方が魔物達に気付かれる事なく侵入しなければなりませんわ」
この作戦にはどうしても人質が絡んでくるからね、バレちゃったら人質に危害が及んじゃう。だからこんな作戦を立ててるんだろうけど……私が考えている事ができるなら全て上手く筈。
「ケーラの魔法で彼女の足は治せないの?」
「た、多分できます!」
「へっ? 回復と言いましたの?」
確か回復魔法の使い手は中々いないんだっけ?
ケーラも本当はここにいる人全員治してあげたいんだろうけど4千人はちょっと……ね? でもジェンシーだけなら大丈夫。
「うん。ケーラは回復魔法が使えるの」
「……正直、驚きましたわ。デガルから強いと聞いてましたが、理力魔法の言葉知らないし見た目はそんなに強くなさそうですし、本当にダンジョンなんて制覇できますの? なんて思ってましたわ。ましてやあのバケモノを倒すなんてとも……」
なんだろう。今、喧嘩売られてるのかな? あぁダメだ我慢できない。
「あなた、そんなに理力魔法とやらが凄いっての? 知らないからってなんなのよ。いいよ。その喧嘩、かってあげる。私達が強いかどうか……その身体に教えてあげる」
「ちょ、エリー。悪いな、こいつはちょっと田舎の出でよ? 強ぇのは間違いねぇよ」
「こ、こんなところで喧嘩してどうなるんですか!? お、落ち着いて下さい」
「良いですわ。丁度貴方方の力を試したいと思ってましたの」
「ちょいちょいちょい! ジェンシーも落ち着けよ」
「何呼び捨てにしていますの?」
「え、いや……」
「ケーラ。治してあげて。4千人も魔法で治すのは無理があるけど、彼女なら戦力になる訳だし、連れて行けるなら一緒に行った方がいいと思う。まぁ、足手纏いにならなければ、だけどね」
「カチンですわ。あなたなんか足が動かないくらいのハンデがあって丁度良いですわ」
「え、ちょ、そ、あえ? ままま、待ってくださいよぉ。ど、どうしましょうテウラ!?」
もはやテウラとシアンは諦めて距離を取り、観戦モードに移行しつつある。
「わ、分かりましたよ! とと、兎に角、ジェンシーさんの足を治しますから待ってください!」
結局何だかんだとジェンシーの足に回復魔法を掛ける。
「ひ、ヒール!」
「驚きましたわ。本当に回復魔法なんて使えたんですのね? 本物を見るのは2度目ですわ」
まだ言うか。とことんやりたいみたいだね。
「あのぅ……お二人とも、本気でやるつもりなのでしょうか?」
「「もちろん! ですわ」」
「こんな街のど真ん中では……」
「大丈夫ですわ。ちゃんと結界は張りますし、彼女もそれくらいの加減はできますでしょう? よっぽどのバカじゃなければ、ですけどね!」
ちらりとこちらを一瞥して話す。
「加減しても弱っちい結界じゃあ意味ないかも知れないけどね! もう立てるでしょ? 早くやりましょ」
いつのまにかしっかり足を治したケーラも離れていた。
「オリジナルスペース! ですわ! この結界は異空間のようなものですわ。消費魔力は半端じゃあありませんけれど、余程のことが無ければ壊れませんわ」
早いっ。ケーラや私より早い詠唱かも知れない。流石SSランクの魔術師ね。兎に角、そんな大層な結界なら、遠慮なく暴れられる。ここ数日で大分技術も上がったと思うし、久し振りに本気で戦えるかな?
「いきますわよっ! 大口叩いたのですから、簡単にやられませんわよね!?」
「そっちこそ! 本気で行くよ!」
まだ本調子では無く、大量の魔力を消費した彼女とステータスアップのスキル無しの私、どちらも本気と言うには少し違うかも知れないけれど、実力を測るには十分だよね!?
更新遅くなりました!!
急いで仕上げたので少し読みにくかったかも知れませんがまた読み易いように編集させて頂きますのでご容赦ください!!




