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5エリーナside3


「くわぁ……ん」


 クロがとっても眠そう。此処の所毎日夕方には魔物との戦闘を想定して、3人と模擬戦をしてもらってるし、しかも寝る前にも私とも模擬戦をして貰ってる。今日は寝かせてあげよう。


「ごめんねクロ」


「うぁん!」


 森を抜けて大分遠くまで来て、今は長ーいトンネルの中。もう半日くらいは歩いてるけどまだまだ先が長そう。


「だぁっ! いい加減イライラして来たぜ!」


「お、落ち着いて下さい」


「そうですよ。怒ったところで歩かなければ先には行けません」


「確かにイライラしてくるね」


「だろ!?」


 ダンジョンの様に照らしてくれる光もなく、魔法で洞窟を照らすしか無く、魔法自体は大した事なくても半日もの間制御しなければならない事はなかなかストレスになる。剣を構えるのは簡単だけど半日も構えていれば腕だってだるくなるし、腰を落とす下半身も結構きつくなってくる。今の状態はきっとそんな感じ。


「走ろう!」


「え?」


「は、はし?」


「良いねぇ!」


 シアンとケーラが驚くのは何度か経験しているから。風になる事を。


「ほ、本気ですか?」


 ケーラが涙目になっている。大丈夫、私が初めてクロに乗った時の恐怖に比べれば大した恐怖じゃ無い。あ、今回はクロに乗るわけじゃない、自分の足で走るんだ。


「うん、もういい加減この景色には飽きたもん。それとも此処で一晩明かしたい?」


「は、走りましょう!」


 そりゃあ嫌でしょう。暗くてジメジメしてて変な虫とかいっぱいで怖いし。女の子が寝れる所じゃないもん。


「け、ケーラまで……分かりました、走りましょう」


「じゃあ、いくよっ」


「「はい!」」


「ウィンドラン!」


 手加減一切無しのウィンドラン。仲間の為に……ステータス2倍の全力ウィンドラン。強制的に走らされる恐怖。明日は3人とも筋肉痛必至かな。


「うぉっ」


「いっ」


「来たキタァァ!」


「転ばない様に気を付けてね!」


 速度が速度だし……転んだらえげつない事になるからね。歩いてる時とどれくらい違うんだろう。10倍くらいかな?

 走り出してからものの数十分で洞窟は抜ける事ができた。洞窟を抜けたすぐ先に広がる景色に目を奪われて、思わず魔法を解いちゃった。驚いたのは皆んな同じみたいで全員が固まってる。


「す、凄いです」


「聞いた事はありましたが……これは」


「すっげぇ」


 目の前に広がる景色は太陽が反射する、全てが白く染まった白銀の世界。


「な、なに? 何で白いの?」


 見たことのない景色。白いのは何? 思わず手に取ってみる。


「きゃっ、冷たっ」


 砂が冷たいなんて考えもしてなくて、びっくりしちゃった。


「……エリーも女の子なんだな」


「な、なによ!? ちょっと失礼じゃない?」


「はははっあんまり強ぇから忘れちまってたよ」


「グルァウ! ヴァウ!」


 クロのテンションがおかしい。白く広がる地面に足跡を付けて喜んでる。体長3メートルの巨狼がはしゃぐ姿ってなかなかシュール。


「こうやってあそぶんだよっ!」


〝バフッ〟


「痛っ!? え、冷たっ」


 なに? なんでそんな事するの? でもなんだか嫌では無かった。不思議、逆に何故か楽しくなってくる。


「仕返し!」


 テウラがやったみたいに、白い砂を手で固めた球を投げてみる。球はテウラにぶつかるとその形を崩してバラバラの砂に戻ってしまった。

 何これ。ーー楽しい。


「こ、これは雪って言うんですよ」


「雪?」


 白い砂は雪って言うらしい。


「水は冷たくすると凍りますよね?」


「うん」


「此処は寒いので、雨が凍ってしまうんですよ」


「へぇ!」


  説明を聞いてもよく分からなかった。だって氷ならなんでこんなに柔らかいの? でもそんな事はもうどうでもいいの、だって楽しいから。


「お前らもやるんだよ!」


 いつのまにか大量に作った拳大の雪玉をテウラがケーラやシアンにも投げつける。


「ちょっテウラ!」


「て、テウラさん!」


「フハハハッ掛かってこぉあい!!」


「よし! 皆んなでやっちゃおう!」


「良いですね! テウラを噂の雪だるまとやらにしてやりましょう!」


「こ、これが噂の雪合戦ですね!?」


 大人しいケーラも今ははしゃいでて可愛い。


「雪合戦……」


 雪で壁を作って防御壁を立てたり、全速力で投げて雪壁を一撃で破壊したり、球が当たれば身体が吹き飛ぶ。これが雪合戦か、楽しいけどハードな遊びみたい。弱い魔物なら雪で倒せそう。


「グルォウ!」


 クロも参戦してる。さっきまでは足跡で楽しんでたけど雪合戦に参加したくなったのかな? 球作れないけど。今は後ろ足で雪を掛けまくってテウラを埋めている。


〝ドザザッ〟


 クロの起こした振動で木の枝から大量の雪がクロの上に落ちて、顔だけがひょっこりしてる。


「おお! これが雪だるまですか!?」


「ふふふ……あははっ楽しいね!」


「いや、もうさみぃって!」


 言われてみればこんなに雪って言う氷に囲まれているのにこんな格好じゃあ寒いに決まってるよね。


「ファイア」


 とりあえず暖まれる様に焚き火でもしようと炎魔法の初級ファイアを使う。燃やすものがないから魔力で維持しなきゃ。


「おおっ有り難いぜ」


「て、手がかじかんでいだいでず」


「さささ、寒くてたまりませんでした」


 楽しいけど毎日は厳しいな。こんなに寒い所で暮らしたら風邪引いちゃう。


「グゴアアアアアッッ!!」


 魔物!?


「て、敵です!」


「あれは!」


「し、シルバーベアじゃねぇか!?」


「そ、そんなシルバーベアがなんで……」


「シルバーベアってどんな奴なの?」


「ほ、ホワイトベアの上位種です」


「ホワイトベアですらAランクでこの地域の厄災と呼ばれる程の魔物なんです! その上位種ともなれば……」


「Sランクって事ね」


「そう言う事さ」


 通常はダンジョンでもないのにSランク級の魔物が出る事は無いらしい。この前シアンに聞いた事だけど、最近世界中で魔物の異常発生が起きてるらしい。シーネ村だけじゃなく、いろんな村や街、国が魔物の恐怖に怯えてるんだとか。

 その中の1つで、何かの足掛かりになるかもしれないとネット市へヴィルダンから遠征にでたのがイアンさんらしい。それなら団長が出てこればいいんじゃないかって聞くと、世界中が魔物の脅威に晒されている今は重大な戦力である団長は国に置いておきたいんだとか。


「よし、みんなでやってみよう! 危なかったら私とクロが助けてあげるから」


「「「はい!?」」」


「いやいやいやいや、冗談はやめてくれよ」


「そ、そうですよ!? あああ、あんなの、か、勝てるわけないじゃないですか!」


「流石に無理ですよ! エリーとクロならなんとかなるかも知れませんが、僕達にはとても」


 皆んなそう言うけれど3人ともそれぞれステータスも上がってるし、私の予想だとなんとかなると思う。そろそろちゃんとした実践を経験した方がいいって考えてたから丁度いい機会かも知れない。私以外じゃあクロか弱い魔物ならくらいとしか戦えていなかったから。


「大丈夫。3人でやってみて。自分の力を信じて」


「本気、なんだな?」


「じ、冗談きついですよ」


「全く、無茶言いますね。でも、エリーに言われたらやれる気がしてきました」


 何だかんだでやる気になってくれたみたいでそれぞれに武器を構えだす。


「やってやるぜ」


「あ、危なくなったらちゃんと助けてくれるんですよね?」


「もちろんだよ! ね? クロ」


「グルォウ!」


「頼むぜマジに」


 3人がどう戦術を組むか。これにかかってる。実力は確かにシルバーベアの方が上。でも実力差のある戦いなら慣れてるでしょ?


「いくぜぇええ!!」


 テウラが地面を這う様にシルバーベアに迫る。紅の瞳が輝線


「グォア!」


 シルバーベアは両腕を地面に叩きつける事で視界を遮り、テウラの突進を防ぐ。


「そ、その程度なら! ファイアストーム!」


 舞い上がったのは殆どが雪だからとかしてしまえばいい。水蒸気で視界を奪われたのはシルバーベアの方だった。その混乱を利用して跳び上がるテウラ。


「フライ!」


 シアンがテウラを更に上空へ飛ばす。


「い、イリュージョン!」


 ケーラがテウラの像をシルバーベアから見えない位置に作り出した。テウラの隠し技だったイリュージョンもタネがわかれば誰にでもできる光魔法だけど、テウラの魔力では自分の像を作り出す程の効果は出せ為にケーラがイリュージョンを発動する。


 そして水蒸気の霧が晴れていく。


「いくぜぇ!」


「上手い!」


 思わず叫んでしまった。ケーラの作り出した像から声が聞こえる様、シアンがサウンドリフレクションで像から声を出した。いくらシルバーベアがSランクと言えど視覚と聴覚の2つも騙されるんだから確実に一撃入れられる!


「グゴウ!」


 目の前から来るテウラの像、それに気付く事なく仕留めたっと言わんばかりにニヤついた笑みで、まるで丸太の様に太い腕を槍の様に二本も使って突き出す。


〝ザスンッ〟


 その極太の槍は完全に空を切って地面に突き刺さる。


「「今です!!」」


 自分の腕が空を切り、像が目の前で霧散した瞬間シルバーベアの顔が歪む。


「食らいやがれぇ!」


 上空から加速度をたっぷり乗せた一撃をシルバーベアの背中に突き立てる。


「グゴアアアアアッッ」


「やれ! ケーラ!」


 テウラは剣から手を離してシルバーベアの背から飛び降りる。


「はい! さ、サンダーボルト!」


 名前の通りまさに落雷の様に激しい一撃がテウラの剣からシルバーベアの身体を中から壊す。


「グ……ボア」


 血を吐き出したものの倒れる事はなくなんとか踏み止まる。


「マジかよ」


「タフですね」


「か、簡単には行きませんかっ」


 流石はSランク。連携は上手いけど相手は一段も二段も格上の相手。どうしても火力が足りない。と言っても威力を何倍にも引き上げられたサンダーボルトを受けてダメージがない訳ではない。


「大丈夫! 効いてる! あと一押し!」


「そ、そうですよ! 私達が相手にしてるのはSランクなんです! で、でも、互角以上に戦ってます!」


「そうだな。簡単にいく訳ないか」


「動きも前より鈍くなったし、いけます!」


 シルバーベアはまだ電気の痺れか痛みで動けないでいる。罠の可能性も捨てきれないけど少なくともダメージは確実に溜まっている。だから今がチャンスなのは間違いない!


「畳み掛けるぞ!」


「ファイアソード!」


「さ、サンダーボルト!」


「乱衝破!」


 シアンの炎を纏わせた剣戟を軽く弾き飛ばし、2度も同じ攻撃を受けてたまるかと全力でシルバーベアが跳び退く。


「シアン!」


 弾かれた事で残心をとる事ができないシアンに怒涛のサンダーボルトと衝破の嵐が降り注ぐ。


「くそっ!!」


「し、シアン!」


「ぐぁああっ」


 極限まで高めた3人の連携は一切の無駄がない。つまりほんの一瞬でもタイミングが狂えばこうなってしまう。


「グゴア!」


 テウラとケーラの剣技と魔法が止むと同時にシルバーベアはシアンへ飛び掛る。


「それはさせない」


 【逆境】の効果も含めた最大の速度でシアンを救い出す。


「シアン! しっかりして!」


「……っ」


 いけない。なんとか息はしてるけどこのままじゃあ。身体も所々焼けてるし、刀傷も酷い。とにかくポーションを飲ませなきゃ!


「飲んで!」


 蓋を開けたポーションを無理矢理口の中に突っ込むとなんとか自力でポーションを飲み干していく。今の所は大丈夫そう、早目に何処か治療できるところに連れていければ……


「ちくしょう! ちくしょうちくしょうちくしょう!!」


「な、情けないです! 許せない、自分が!!」


 自分の手で仲間を傷付けてしまった事が兎に角許せないんだ。Sランク相手に勝てると奢ってしまったせいだと。


「トラウマなんかにならなきゃいいけど……」


 ちょっと待って。2人の力がどんどん上がっていく。テウラは紅の謎のオーラを纏い、ケーラは辺りの魔素をぐんぐん取り込んでいく。


「どう……なってるの?」


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