2亀裂
一人称を極めていこうと思うのですが、なかなか難しいですね……
「ーーーっ、てててて」
頭……痛い。私、どうしてたんだったかな。アルとクロは!?
「えっ2人とも倒れて!? って息してるから大丈夫か」
エリーナはキョロキョロと辺りを見渡す。
うわぁ……凄い事になってるよ。殆どの木が燃えちゃってる……確か毛を失う前に炎は消した筈だからもう大丈夫だよね? 100メートル先くらいまでいっちゃってるよねこれ。
「夢かと思ったけど……そんな訳なかったかぁ」
どうしようかな、これ。流石にこのままって訳にはいかないよね。
「そう言えば、あれからどれだけ経ったのかな?」
太陽がサンサンと輝く青空を見上げる。
今はお昼かな。あの事故の時も太陽が出ていたから……数十分かな? それとも数時間? もしかして、何日か過ぎてるとかないよね?
あれ? コアが居ない……私1人じゃあ何もできないし、とりあえずアルを起こそう。
「アル! 起きて!」
「……」
うぅ、なかなか起きない。
「起きろぉ!」
流石にこれだけ揺さぶれば……!?
「……」
嘘でしょ。てこでも起きない気なの?
「おはようエリー。今日も可愛いね」
「……」
あんまり起きないからお人形アル君として遊んでみたけど、恥ずかしいな。
「うぅ……頭が痛い……」
「あっアル!? おっおはよう」
き、気付いてないよね?
「なんで抱えられてるんだ?」
「あ、あんまり起きないから心配になっちゃって……」
わざとやってるとかそんな事ないよね。
「と、とにかく。目は覚めた? ちょっと周りを見てみて」
アルが自分で燃やした木々を見渡す。
「ん……あちゃあ……」
「これ、何とかしないと不味いよね」
「そ、そうだな」
「それとコアが居ないよ? 探しに行かなきゃ」
「コア……そうだコアだ!」
「ちょ、え? なに?」
び、びっくりした……
アルディは質問に答える事なく水魔法と土魔法の混合魔法である木魔法で辺りの木々を修復していく。
え、何も言ってくれないの?
「ちょっとアル?」
「ちょっと、待ってくれ。俺も整理がついて無いんだ」
「分かった」
何があったか分からないけど、尋常じゃない事が起こったんだよね。それくらい分かる。もう何年もアルと居るんだもん。話してくれるまで待ってよう。
それにしても凄いな。凄い勢いで木が生えて来る。アルの魔力もかなり回復したって事だよね。クロも大丈夫かな?
エリーナはクロの傷も確認しておこうと、クロの横でしゃがみ込む。
「うん、傷も殆ど治ってる。大丈夫そうだね」
ん? でも数分じゃあここまで治らないよね。幾ら人間より回復力が高いって言ってもここまで早くは治らない。て言う事は結構時間経ったのかな。
◇
アルディはこの時、意識を失う直前の出来事を思い出して反芻していた。
よし、元通りとはいかないものの殆ど再生完了かな。まぁ、生えたばかりなので目新しさは目立つが普通の林だ。これくらい許して欲しい。
さて、どうやってコアの事を伝えるか……林を再生させながらずっと考えていたが一向に良い方法が思い付かない。正直に言わない方がいいか? コアが俺達の前から姿を消した。それはイコール裏切りだ。こんな事を知ったら間違いなくエリーは傷付くだろう。俺達は仲間だ、ここは正直に言おう。
「コアが裏切った」
エリーは俺の言葉に何も言うことができず、暫く押し黙ってしまった。エリーにとってコアの裏切りという事はそれ程あり得ない事だったからだろう。
どれだけ俺に対して信頼を寄せていても、はいそうですかと簡単に納得できる話ではない。
エリーナの中で結論が出たようで、やっと話し出した。
「そんなの嘘だよ」
「いや、本当だ」
俺もエリーも何から聞けば良いのか何から話したら良いのか分からずに黙り込む。風が吹く音がやけに大きく聞こえる。
「……あり得ないよ……だって私達は仲間じゃん! 何かの間違いだよ! アルの聞き間違いとか、見間違いとか!」
そんな程度の確信で言う訳がない。俺だってこんな事は言いたくないんだ、何度も言わせないでくれ!
「あいつは! さようならって言ったんだっそれ以外にどう説明がつくんだよ!」
「それが聞き間違いじゃないかって言ってるの! アルだってあの時は意識朦朧としてたんでしょ!?」
確かに朦朧としていたが、何度も考えた結果からやっと出した答えなんだ。もう間違いないと、覚悟を決めて話した。俺にとってもコアは大切な仲間だ。軽はずみな気持ちで言えるはずもない。
故にこの事実が本当だったのか時間を掛けて反芻し、意を決して話したのだ。
こんな話を聞いたら、エリーも心中穏やかで居られなくなる事くらい分かっている。俺だって仲間であるコアに裏切られたと言う現実を素直に受け止め切れずに苛立っているんだ。
「コアの事。信じられないんだ」
エリーナは言ってはいけない事を口にしてしまった。
「そう言う事を言ってるんじゃないだろ!? お前はっあの状況を見ていなかったからそんな事が言えるんだ! 俺だって信じていたさ、コアの事は仲間だって! 簡単な気持ちでこんな事言ってるんじゃ無いんだ!」
「見てないよ! もしそれが本当だったとしても、何かあるのかも知れない。そう考えるのが仲間なんじゃないの!?」
そんな事くらい分かってる。コアに只ならぬ事情があるだろうと言う事にすら気がつかない程馬鹿じゃない。勿論その可能性も考えていたし、寧ろ何かある可能性の方が高いと思っていた。
人間誰しも考えていた事を考えていなかっただろ? と責められて腹が立たない人間はいない。当然俺も例外では無かった。
「そんな事くらい分かってる! 大体、エリーが信じてくれなかったからだろ? 仲間の言う事を信じないのはどっちだよ!?」
感情に任せて放ったこの言葉は悪手だった。先程と同じ事だ。当然エリーナにとって仲間以上の存在であるアルディに仲間と思って無いのか? と言われて冷静で居られる筈も無いだろう。
「……もういい。私1人でコアの事探すから」
「くぅうん……」
「クロ……起きてたのか」
こんなに激しい言い争いをしたんだ。当然起きるよな。ごめん、クロ。
「クロもコアの事探しに行こう?」
いきなりの問い掛けにクロは暫く考えるように静止した。その結果エリーについて行く事にした様だ。俺としても別行動を取るのであればエリーにはクロと居てくれた方が安心してできる。クロは頭がいい。その辺りの事も考えた結果が着いて行くと決めたのかも知れない。
「勝手にしろ」
この時お互いに頭に血が上り、冷静では無かった。後に後悔するとも知らず、別々の方向へ歩いていく。
◇
「ねぇクロ?」
「うぁん」
「ごめんね……ずっと一緒だったのに、寂しいよね。私達の喧嘩に巻き込んでごめん」
「うぁん」
私だってこんな事望んでなかった。ただ、コアが私達を裏切っただなんて信じたくなくて……多分ただの八つ当たり。そんな私にクロは何も言わずに着いてきてくれたんだ。
「私の事が心配で着いて来てくれたんだよね……アルなら1人で大丈夫だから……」
今はこれで良いんだ。確かに八つ当たりだったかも知れないけど、アルだってもう少し言い方があると思う。一緒に探しに行こうとか、助けてあげようとか、そんな風に言って欲しかった。
「うぁん!」
クロはこっちだとでも言わんばかりにエリーナを先導する。
「なに? こっちなの? もしかしてコアの場所が分かるの?」
返事しないけど……違うのかな?
「じゃあアルの所?」
クロはブルブルと水を掛けられた犬の様に身体を振るう。
……違うんだ。何かがこの先にある事を伝えようとしてるのは間違い無いと思うんだけど……やっぱり反応的にコアの事だよね?
「コアの匂いでも見つけたの?」
「うぁん!」
やっぱりコアの事だったんだ。多分最初に返事をしなかったのは詳しい場所までは分からないって事かな。
クロは覚醒モードになる。
「グルォウ」
「乗れって事?」
「グァウ」
もう慣れたけど……やっぱり最初の恐怖がトラウマになってるのかな。ちょっとだけ怖い。でもそんな事言ってられないよね、待っててコア。必ず見つける。私達は仲間なんだから!
「そしたら……コアと一緒にアルの事一発ぶん殴ってやるんだから!」
「グルォウ!」
なんだかんだでも戻る気がある事を確認したクロも嬉しそうに返事をした。
「ふふふ、クロも一発やっちゃう?」
林を抜け草原を駆け抜け、また森に入って暫く走ると森を真っ二つに割る様な大きめの街道と交差する様に2人は当たった。
西へ行くには街道沿い行けば遠回りする事になる。街道は今いる所よりも低い場所を通っており、クロは一気に街道を飛び越る事にした。
「陣形を乱すな!」
「こんな奴らに遅れをとるな! 我々はヴィルダン王国聖騎士だぞ!」
「弓兵! 放てぇぇい!」
「うぉっうぉっうぉっ」
「ひゃあっはぁ!」
戦闘!? 兵士とオークキングかな。ちょっとやばそう。兵士達が押されてる。
「クロ! 戻って!」
「グルォウ!」
クロは着地と同時に地面を蹴り、先程の戦いの場へダイブする。
オークキングは確か、Bランクの魔物。上から見た限り数だと40〜50くらいかな。中にAランクのオークエンペラーも居るみたい。
「あいつが親玉ね」
今の私なら大丈夫! 私でもやれるって自分に証明するんだっ。Bランクの魔物は大したことない。【仲間を持つもの】の効果を得た状態だけど、Aランクのゴーレムとだって渡り合えたんだ。素のステータスだってやれるはず。
ちょっと不安なのはオークエンペラーかな。それでも一対一なら倒せるよね。
「援軍か?」
「いや! 魔物だ!」
「テイマーじゃないか?」
「テイマーなんかアテになるかよ!」
テイマーさんは嫌われてるのかな? テイムって確か自分よりも弱い魔物を従えるって言ってたし、明らかにテイマーさんって戦闘職じゃなさそうだから……確かにあんまり強くなさそう。そうだよね、いつもクロと一緒に居るからよく考えてなかったけど、クロが特別なんだよね。
エリーナはクロの背から飛び降り、オークキングの群れのど真ん中に降り立つ。
「クロ! 手出し無用だよ! 私がやるって言ったんだから1人でやる!」
オークキングの棍棒をまるで羽のように避け、急所の喉だけを綺麗に斬り裂いて行く。
大丈夫。いける。やっぱりBランクの魔物ならスキルの効果が無くても戦える!
聖騎士達はエリーナの美しい闘いに見惚れてただ立ち尽くして居た。
今の内に詠唱を終わらせて、魔法で一気にっ!
「ウォーターショットガン!」
何十発もの水の弾丸がオークキング達の眉間を撃ち抜いていく。
これで弾は全部発射……やっぱり。オークエンペラーだけは広範囲型の魔法じゃあ倒せなかったか。ちゃんと兵士の皆んなに当たらないようにしたけど大丈夫かな?
ちらりと聖騎士達を一瞥する。
皆んな座り込んじゃってるけど大丈夫そうだね。じゃあ後はオークエンペラー2体を倒すだけ!
「はぁあああ!!」
エリーナは一気にオークキングの屍の中を駆け抜けてオークエンペラーに肉迫する。オークエンペラーは当然懐に入れまいと巨大な棍棒を振り降ろす。
遅い! こんなの見え見えだよっ動きは最小限っそれから棍棒を足場にして、跳んで喉を、斬る!
「鈍いよ」
オークエンペラーは喉から鮮血と撒き散らしながら仰向けに地面に倒れ込む。
残り、一体。一瞬で終わらせる。今使える最大の魔法で決着を付ける!
「ウォーターカノン」
大質量の水の塊がオークエンペラーの身体に風穴を開け、後ろの崖まで抉る。ここまでものの十数秒だった。
「大丈夫?」
返事しないけど、ビックリしちゃったのかな。とにかく注意しておかないとね。
「この辺りは危ないよ? まだダンジョンから出た魔物達がうようよいるんだから」
「ダンジョン!! やはり有るのだな!?」
聖騎士の内の1人がダンジョンと言う言葉に反応する。




