1罪過
第3章に入りました!
まだまだ続きます。よろしくお願いします!
「っ!! 夢!?」
「おはよう。アル」
どうやら俺は眠ってたらしい。
目を覚ますと上には青空。周りは木々。どう見てもダンジョンの外だ。ダンジョンの外に出た記憶がない。
夢……だった、のか?
「おはよう」
「お、おはようございます……」
「運んでくれたのか」
「うんん。コアがダンジョン核をアイテムボックスに仕舞った瞬間ダンジョンが消えた? のかな、それで気が付いたらここに居たんだぁ」
エリーが干し肉を齧りながら説明してくれる。
「クロは?」
「クロは寝てるよ」
「みんな無事で良かった。本当に」
クロも毛布を掛けられた状態で寝息たてていた。
本当に良かった。クロは大怪我をしてしまうし、エリーやコアも一時はどうなる事かと思った。クロに関しては生きているのが不思議なくらいだ。
そう言えばずっと激しい戦いが続いてたから忘れてたが、クロには【不屈】があったな。確か【不屈】はどんな攻撃でも必ずHPが1は残る。だったな。
これのおかげでなんとか全員生きて帰れた様なものだ。だからと言って今後は無茶はさせないように気を付けないとな。
「そっか……結構寝てた?」
「数分だけだよ」
「ごめんごめん。疲れてたみたいだね。安心したら寝ちゃったみたい」
数分だけか。そう言えば夢の中でスキルがどうとか言ってた様な……
ただの夢とは思えない程リアルだったし、一度確認してみよう。
パラメータを開いて確認すると、新しいスキルが増えている。
あの夢は現実だった様だ。という事は人神はいや、カグツチとはもう会えないって事だ。
折角名前も聞けたのに……
最後まで俺の事を考えていてくれたのに何もできなかった。せめてカグツチが望んだ神々の何かを防ぐ事と生き抜く事。これが俺にできる最後の恩返しだ。
増えていたスキルは
【神炎】
全てのものを焼き尽くす炎。
全てを焼き尽くす……どんな炎なのか全くイメージできない。
とりあえずマスターさせる。
コアなら聞いた事があるかもしれないな。
「なぁ。コア」
「はっはい!」
「どうしたんだ?」
本当は【神炎】について聞いてみようと思ったのだが、明らかに目を覚ましてからコアの様子がおかしいので調子を聞いてみる。
「どうも……してませんよ?」
「そっか……何かあるなら遠慮しなくていいからな?」
「ありがとう……ございます」
「ところで【神炎】ってスキルを聞いた事あるか?」
「……聞いた事ないです」
「エリーも聞いた事……ある訳ないか」
「なんか失礼じゃない!? まぁ、無いけど」
物心ついた時から一緒に居るんだから俺が知らない事を知ってるわけがない。そう思っただけだ。
他意は無い。
「知らないよなぁ」
「それがどうかしたの?」
「今起きたら【神炎】ってスキルが増えてたから知ってるかなって」
「使ってみればいいんじゃない?」
まぁ危なければ消せばいいか。水魔法も上級だし。
「使ってみようかな」
「森の中なんだから、上に放ってね?」
木々が燃えて山火事になんてしたくないからね。
「了解っ」
俺は狙いを定める掌を上空に向ける。
「コアも気をつけてくれよ?」
「……」
「コア?」
「……はいっ」
エリーの呼びかけでようやく反応する。
「エリーはクロを頼むよ」
「任せてっ」
「いくよっ……神炎っ」
魔力を放った瞬間、辺りに白い光が霧散した。
「ちょっアル!」
「うおぁ! やばい!」
真上に放った炎は、その余波だけで周囲の木々を消滅させていく。
直ぐにスキルの発動を止めて水魔法の魔力を練り上げる。
「っ!」
違和感を感じてステータスを確認する。
魔力がほぼ0になっていた。
【神炎】の消費魔力は半端じゃないらしい。
すぐにアイテムボックスから魔力ポーションを取り出す。
一気飲み。全力で飲み干す。
「ビッグウェーブ!」
名前の通り大量の水を波のように出現させる魔法だ。
天災の様に現れた津波級の水がものの数秒で蒸発する。
今までにない程大量にビッグウェーブを放っていく。
それと同時に水蒸気爆発が起こらないように蒸発した水蒸気を性質変化で瞬時に消していく作業もなかなか骨が折れる。
手を抜けば死ぬ……
現状、僅かに消滅する速度の方が早い様だ。
「エリー! 手伝って!」
「分かってる!」
既に詠唱を終えたエリーもビッグウェーブを発動させる。
「ビッグウェーブ!!」
もう魔力が切れそうだ。元々0の魔力にポーション分しか回復していない為に足りないのだ。
水魔法を同時に2種類も使ってるのだから。
片手でアイテムボックスから魔力ポーションを数本抜き取る。
「エリー! 魔力は持つか?」
「大丈夫!」
俺は取り出したポーションを口を使って開け、全て飲み干す。
「あと少しだよ!」
エリーの言う通り、殆どの炎は鎮火済みだ。
もう水蒸気はいいだろう。
「消えろぉおお!!」
2人掛かりで何とか炎を消し終えた。
「もう……加減くらい……して、よね」
エリーがそのまま地面に倒れ込む。
大丈夫、ただの魔力切れだ。
「ごめっ」
急に俺の身体も重くなる。何度も無理したからだ。ポーションで誤魔化していたがもう動けない。
今度からもっと加減を調節して使おう。そう反省しながら俺もその場に倒れ込む。
「ごめんなさい。アルさん。エリー。ごめんなさい」
「コ……ア?」
何で泣いてるんだ。
「さようなら……です」
「な……に……」
何で……どうして? これじゃあまるで最後みたいじゃないか……俺はそのまま意識を保てずに眠ってしまった。
ーーーーーーーーー
〝完了。ダンジョンを解放します。核は貴方達の物です〟
やっと……やっとダンジョン核が手に入ります。正直ダンジョン核を持ってこいなんてできるわけないって諦めてました。
ごめんなさい。アルさん。エリー。私にはどうしてもダンジョン核が必要なのです。
〝ドサッ〟
「アル?」
「……アルさん」
エリーが直ぐに駆け寄ってアルさんの容態を確認してくれました。
「大丈夫。眠ってるだけ見たい」
「よかった……」
私は何故心配してるのでしょうか。初めからこうするつもりだった筈です……そうだっまだダンジョンを1人で抜けるのは無理だから、だから心配しただけです。
「じゃっじゃあアルさんが起きるまでに準備を済ませておきますね」
「そうだね、ありがとう」
お礼なんて言わないで下さい。
私はダンジョンダンジョン核をアイテムボックスに仕舞う為にダンジョン核に手を触れて魔力を流します。
「え? なに?」
ダンジョン核をアイテムボックスに入れた瞬間、空間に陽炎が立ち周囲の風景がガラリと変わりました。
ジメッとした洞窟からカラッとした太陽の真下で木々に囲まれて居たのです。
「ダンジョンが……消えた?」
「そう、みたいですね」
「アルとクロは!?」
「大丈夫です。そこに居ますよ」
ちゃんとアルさんもクロちゃんも外に出られたみたいです。
元ダンジョンがあった場所にはもう何もありませんでした。それはダンジョンが消滅。通称枯れた事を意味します。
今ならこっそり居なくなってもバレないかも知れません。
「ねぇ、コア。毛布出してあげて?」
「……えっあ、はい」
私は毛布を取り出してクロちゃんに掛けてあげます。
「お腹空かない?」
「干し肉なら少しだけ残ってますよ?」
「食べる」
「分かりました」
私はエリーにアイテムボックスから干し肉を出してあげます。
「っ!! 夢!?」
「おはよう。アル」
もう起きてしまったんですか。これで暫くは皆さんから逃げ出す事ができなくなってしまいました。
「おはよう」
「お、おはようございます……」
「運んでくれたのか」
「うんん。コアがダンジョン核をアイテムボックスに仕舞った瞬間ダンジョンが消えた? のかな、それで気が付いたらここに居たんだぁ」
エリー、お行儀が悪いですよ。といつもの様に言いそうになってしまいました。短い期間でしたけど、濃い時間だったせいか随分とこのパーティに馴染んでしまったみたいです。
「クロは?」
「クロは寝てるよ」
「みんな無事で良かった。本当に」
本当ですよ。何度も死に掛けましたし、クロちゃんなんか生きてることが不思議なくらいです。本当に良かった。大変だったけどなかなか悪く無いものですね冒険も。
あれ。今私、喜んでます?
「そっか……結構寝てた?」
「数分だけだよ」
「ごめんごめん。疲れてたみたいだね。安心したら寝ちゃったみたい」
そんな簡単に謝りますけど、心配したんですよ?
「なぁ、コア?」
……心配?
「はっはい!」
「どうしたんだ?」
「どうも……してませんよ?」
「そっか……何かあるなら遠慮しなくていいからな?」
「ありがとう……ございます」
「ところで【神炎】ってスキルを聞いた事あるか?」
「……聞いた事ないです」
「エリーも聞いた事……ある訳ないか」
「なんか失礼じゃない!? まぁ、無いけど」
ふふふ。声を出して笑いそうになりました。アルさんとエリーは本当に仲がいいです。2人のやりとりを見ているとなんだか嬉しくなってきます。
「知らないよなぁ」
「それがどうかしたの?」
「今起きたら【神炎】ってスキルが増えてたから知ってるかなって」
名前からしてとんでも無いスキルである事は間違いなさそうですけど……
「使ってみればいいんじゃない?」
「使ってみようかな」
「森の中なんだから、上に放ってね?」
それとこっちも向かないで欲しいです。
「了解っ」
アルさんは掌を上空に向けます。
「コアも気をつけてくれよ?」
アルさんのスキルの習得率は異常です。私も何故かアルさんとパーティを組んでからスキルの習得率が高い気がします。何か特別な事があるのでしょうか。そのお陰でかなり強くなる事が出来ましたけど……
「コア?」
「……はいっ」
考え過ぎでしょうか。
「エリーはクロを頼むよ」
「任せてっ」
「いくよっ……神炎っ」
「ちょっアル!」
「うおぁ! やばい!」
えっちょっと、何ですかこれは!?
「っ!」
それから何とかアルさんとエリーの2人で鎮火する事ができました。
「もう……加減くらい……して、よね」
「ごめっ」
あれだけの炎魔法と水魔法を使ったんですから、ポーションで誤魔化していても限界のはずです。2人とも地面に突っ伏してしまいましたが、当然です。
あれ? あこれはチャンスです?
今しか無いです……
これで最後……もう……会えなく……なって……最後。
あれ? 何で私、泣いてるんでしょう。
「ごめんなさい。アルさん。エリー。ごめんなさい」
これでいいんです。ずっと、そのつもりだったのに……初めから分かっていたのに、どうしてこんなにっ。
「コ……ア?」
「さようなら……です」
「な……に……」
ごめんなさい。信じてくれたのに。
アルさんが初めてキレイだって言ってくれた事、本当に嬉しかったです。だって、人間なのに獣人の私に軽蔑どころか、キレイなんて気持ちを抱くなんてありえない事ですから……それにエリーと友達になれた事だって本当に嬉しかったです。
私は人間で獣人にこんな態度を取る人を私は初めてでしたから、アルさんは何処か遠く、私の全く知らない文化で育った人なのかも知れない。もしそうだとしたらダンジョン核の事について、私の知らない情報を持っているかもしれない。そう思った事がアルさんに近付いたきっかけでした。
実際は情報どころか何もこの世界の事を何も知らないし、何処か抜けていますし優しいし、いざとなったら頼れるし……あれ、おかしいですね。
これ以上ここに居たらおかしくなってしまいそうです。もう後戻りはできません。でも、足が動かないんです。
二度と会えない。そう思ったら……
そうか、私は皆んなの事か大好きだったんですね。
「うごけぇえええ!」
コアは両の脚を双剣で突き刺した。そして走り出す。
「ごめんなさい。アルさん。ごめんなさいエリー。ごめんなさい。クロちゃん。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。大好きです」
コアは大粒の涙をキラキラと光らせながら林を駆けていく。




