SSドヴァーリの奮闘
久々にすげぇ奴に会っちまったぜ。
あんなすげぇ奴らの武具を作った事はねぇ。
やると言っちまった以上やるしかねぇ。今に見てやがれ、すんげぇやつ鍛えてやるからな。
突然現れたアルディとか言う小僧はSランク並みのステータスをしてやがった。
それだけじゃねぇ、その連れの奴らもBランク並みだ。大体従魔からしてそのBランクの嬢ちゃんより強いってんだぜ? しかもその従魔にまで防具を仕立てろってんだから。
変わった奴らだ。普通従魔と言えば盾みたいなもんだ。普通は使い捨てにして次々に新しい従魔を従えていくものだが……
おっと話が脱線していっちまったな。
「流石にSランク冒険者に似合った剣は今の俺には鍛えられねぇ。がしかし、この街じゃあ俺しか奴に振れる剣は鍛えられねぇ。先ずは素材からだな」
ただの鉱石じゃあ大した強度は出せねぇし……
「そうだ! 確か倉庫にダマスカス鋼があったな!」
奴の剣は今の俺に鍛えられる最硬度の鉱石ダマスカス鋼でなんとかしよう。
嬢ちゃんとコアちゃんは鋼にしよう。軽くて取り回しが良いやつが良いだろうからな。
先ずはコアちゃんの剣から鍛えよう。
確かスピード重視のタイプだったな……
短剣だったか。
「ただの短剣じゃあつまらねぇな。伸縮タイプはどうだ? いや、予算が足りねぇな……」
嬢ちゃんの片手剣には魔晶石を使う予定だ。他の武器に魔晶石を使えるほど余裕がねぇ。
「より軽く、より早く……」
コアちゃんの筋力値に短剣なんて勿体ない。普通の片手剣もなんかしっくりこない。
何か工夫を……
そうだ!
「双剣にすりゃあいいじゃねぇかっ!」
これなら片手剣より小さくできるし強度も増す。軽くて取り回しもいい。手数や身のこなしで翻弄していくスピードタイプにはピッタリだ。
炉にの火に石炭を焼べて火力を増す。
鍛治は温度管理が命だ。ここを見誤っちゃいけねぇ。
石炭に火が移るまでに準備を整える。金床にハンマーに材料。これらを丸太の辺りに並べていく。
この丸太の上に金床を置けば腰も痛くならねぇしハンマーを掛けたりできる。なかなか便利だ。
形さえ決まれば後は打つだけだ。
次は嬢ちゃんの片手剣。魔法剣士には嬉しい魔晶石を組み込む。これが一番金がかかった。
正直赤字だがこれは俺の経験になる。どれもこれも今までで最高級の武具だからな。
次は防具か。これも重ければ動きに支障が出る。それにサイズが変えられるものとか言ってやがったな……
「無茶を言うぜ……」
世界中何処を探してもそんな防具ねぇ……
ちょっと大袈裟だな。世界は広いからあるかも知れねぇな。
「弱音は吐いちゃいけねぇ」
魔晶石無しで稼働する機構を考えねばならんな。
「魔晶石は一定距離以上で自動的に魔力を蓄えたり放出したりするが……」
銀は魔力が通りやすく、魔法師のステッキを作る時は銀と魔晶石で作ると聞いたことがあったな。
「だぁっ! んな事言ったってなぁ」
「お疲れ様です!」
「んあ?」
「ドヴァーリさん大丈夫ですか?」
「あぁ、坊主とコアちゃんか」
「私もいるよ!」
「おぉ、すまんすまん」
「クロは外で待たせて居ますよ」
「そうか。どうしたんだ? まだ約束の日には早いだろう」
「えぇ、もしかしたらお食事もしっかり摂られて無いのでは、と思いましてお土産をお持ちしました」
「おお、すまんな。気にしなくても良いんだが……」
正直言って似合った剣を俺には鍛えられねぇんだから代金だって本来は貰うべきではないのかもしれん。
しかしわしにも生活がある以上材料費分だけ払って貰おうと思ったのだが……
「フルーツパイとヴィルダン産の牛肉です」
「すまんな」
「まぁ、実の所ドヴァーリさんの仕事を見学させて貰おうと言うのが本当のお邪魔した理由なのですが……」
「何馬鹿なこと言ってやがる! と言いたいところだが、まぁいいだろう。何を作っているかは当日までのお楽しみだが……少しくらい見せてやろう」
「本当ですか!?」
冒険者の癖に鍛治屋の仕事が見たいとは変わった奴だな。
「しかしなぁ、今は魔晶石を使わずに魔力をどうやって防具に通そうかと思ってなぁ」
「成る程。ただ鍛えるだけじゃいい武器や防具は作れ無いんですね」
「あたぼうよ! 銀なら魔力が通りやすいんだがなぁ……」
「銀ですか?」
「あぁ、だが銀じゃあ強度がでねぇし……他の金属とくっつかねぇから伸縮する防具を仕立んのに頭抱えてんだよ」
「クロの防具? 大きいもんね、クロ」
「うーん、鍛治の事は私には分かりません」
「素人の考えで申し訳ありませんが……銀が魔力を通しやすいと言うなら、水銀とかはどうですか?」
「……それだ! それなら無理にくっつける必要もないし防具の中に仕込んでおけば……いける! いけるぞ!」
その発想はなかった。ありゃあ魔晶石や魔核に比べりゃあ魔力を溜めることもできねぇし、殆ど使われねぇからな。
それに身体にゃよくねぇと言うが、壊れた時に身体に触れねぇようにすりゃあいい。
「悪りぃなオメェさん達。水銀は良いアディアを貰ったが、ありゃ身体によくねぇ。オメェさん達がいたんじゃ作業できねぇや」
「いえ、そう言う事でしたらまたの機会にお邪魔させてもらいます」
「すまねぇな」
「またね!」
水銀か、先ず防具の中に空洞と水銀を貯めるタンクを作って中を流れても常に水銀が切れないようにする機構を考えて……
よし、後は小僧の両手剣だな。
奴には小細工は必要ねぇ。ありったけの硬さと切れ味。それだけだな。
後はダマスカス鋼を鍛え上げるだけよ!
ーーーーーー
そして小僧達は旅立っちまった。
世の中には色んな危険がゴロゴロ転がってやがる。また無事に会える保証はねぇが、小僧達ならきっと大丈夫だ。
俺は小僧達の事が心底気に入った。こんなにも自分に技術がねぇ事を情けねぇと思った事はねぇ。
街一番の鍛治師と言われて、心の何処かでこれくらいで良いだろうと満足しちまってたのかも知れねぇな。
次に奴らと会うまでには必ず奴らに似合った剣を鍛えられる様になってやる。
確か遥か西の国のどっかにドワーフの里があると聞いた事がある。
そこには伝説の鍛治師が居ると言われてた。先ずはそこへ行ってみようと思う。




