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14林のダンジョン9


 先程までの戦闘音が嘘の様だに静かな空間。

 ポーションを飲み込む音が鳴り響く。


 ポーションはネット市で大量買した中級ポーションだ。色は綺麗な緑で美味しそうだが……苦い。兎に角苦くて不味い。

 良質なポーション程色が濃くなっている。

 因みに体力のポーションが緑で魔力ポーションは青、どちらも回復できるものがエリクサーと呼ばれ、赤色だ。

 エリクサーは高価過ぎて普通は出回っていないらしい。

 状態異常のポーションは全て黄色だ。キャップの色を変える事で種類を間違えない様になっている。


 本来なら何本も飲まなければSS並みの体力は意味がないが、先程の戦闘ではほぼダメージはなく、睡眠もとった事で気休め程度に1本だ。


「よし、完璧だ!」


「雰囲気的に次が最後だよね?」


「私にはよく分かりませんが、そんな気がします」


「オルトはこのダンジョンを頂いた。と言った……それにあのデーモン・エンペラーの強さで中ボスってのはキツすぎだ」


 口々に肯定の言葉を発するエリーとコア。


「という事で、先に進もうと思うが」


「どうしたの?」


「多分オルトはデーモン・エンペラーよりも強い。だから一応確認しておく、やめておくか?」


「今更」


「私はアルさん達について行きますよ」


「グルァウ」


「よし、デーモン・キングの時の様な油断は絶対にするなよ」


「うん! ごめんね」


「任せてください!」


「グルォウ!」


「それと、約束してくれ。誰1人として、死ぬ事は許さない。全員無事にこのダンジョンを出る」


「約束」


「約束です」


「グルァウ」


 俺達は右手を中心に手と手を重ね合っていく。


「約束だ」


 俺は必ず野望を達成させる。

 奈々を見つけるし、エリーやコア、クロ。こいつらを絶対に死なせない。勿論、俺も死なない。同じ思いはさせない。

 絶対にだ。


「行こう」


「「了解! です」」


「グルァウ!」


 そして俺達は最後の間へと続く横穴に入って行く。


 その歩みは凛々しく、そして堂々としたものだった。


「意外と遅かったねぇ」


「アイツは倒してきたよ!」


「そんな事見れば分かるさ。それに奴じゃ勝てない事も知っていたよ。しかし、1人くらいやってくれると思ったのになぁ」


「どう言う事だ」


「そうだったねぇ。君達にはご褒美で色々教えてあげなくちゃいけないね」


「勿体ぶらないで」


「エリーナ。正直君にはあんまり関係ない事だよ」


 やはり、コイツは転生者の事を少なくとも知っている。


「そうだなぁ。先ず私の事から話そうか」


 そう言って静かに語り出す。




ーーーーーーーーー




「逃げろぉぉ!」


「バカヤロウ! ここを突破されたら終わりだ! 踏ん張れ!」


「だめだ! くそっ! 山の方からも攻めてきたぞ!」


「くっ……ここまでか……」


「どうなっている!?」


 私は何がどうなる訳もなく、叫んでいた。

 確かに先程まで、酒池肉林を愉しんでいたはず。


「何故、魔物が……しかもこんなに!」


「司令官! どうしますか!? 司令官!」


 次々と目の前で部下が殺されていく。


「夢だ……これは夢に違いない……」


「いやぁ!!」

「やめてくれぇ!」


 魔物達は、兵士も村人も関係なく殺していく。

 何故かって?

 自分よりも弱い生き物だから。ただそれだけだ。


 これは天罰だろうか。

 私はそこそこの家系、ミネラー家に生を受け、コネやコネを使って正規軍に入り、好き勝手、暴虐の限りを尽くした。きっとその罪だ。


 気に食わない奴は殺し、気に入った奴はレイプ。側から見たらゲスの極みだろう。


 そのことに気が付いたのは今が初めてだ。逃れられない死を目の前にしてやっと気が付いたのだ。

 今まではそれが当たり前で、自分だけが特別だと思っていた。


「神よ、私はあなたの僕にでも何でもなります。助けて……下さい」


 その時私は生まれて初めて神に祈り、涙を流した。



ーーーーーー



 未開の土地を開拓する為、ヴィルダン王国軍は東の山奥を行軍していると、小さな村を見つけた。


「オルト司令官!」


 司令官。そう司令官だ。司令官とは一般兵の肩書では一番上だ。次いで分隊長、兵士長、班長、兵士、訓練兵士からなる。


 この軍の中では私が1番偉い。


「どうした」


「前方に小さな村を発見しました!」


 ニヤァと下卑た笑みを浮かべるオルト。


「好きにしろ」


「はっ! ありがとうございます!」


 ヴィルダン王国からは〝村などが有れば保護せよ″と言われている。

 知った事か。司令官の私が「何もなかった」そう言うだけで何もなかった事になるのだ。


 たかだか100人も満たない村の1つや2つ、あってもなくても変わらない。


 それならば自分の軍の士気を上げる為、この村を利用しても誰も文句は言わない。

 勿論、私も楽しむがね。


 早々に兵士達は、村人達に有無も言わさず村に火を放つ。そしてストレス発散の為に男は殺し、溜まった欲望のままに女は犯す。金目の物が有れば懐に。それぞれが好きな事をし始める。


 行軍はつまらないが、これだけは楽しみだ。


 そして好きなだけ村を蹂躙した後、事件が起こる。


 そして話は先程まで戻る。



ーーーーーー



「その言葉に嘘、偽りはないか?」


「え?」


「我の僕となり、何でもすると言う言葉だ」


 気が付くと全ての時が止まったように何もかもが停止していた。


「こ、これは」


「もう一度しか言わない。我の僕となるか?」


 よく分からないが、何でもいい。助かるのなら何でも。


「なる! いえ、なります! なんでもします! だから……」


「良かろう」




ーーーーーーーーーーーー




「そして私は魔神様より魔眼とダンジョンを頂き、更に……」


 オルトの体がメキメキと音を立てながら変形していく。


「この身体を授かったのだよ!!」


 身体が大きくなり、2メートルに達し、カラスの頭が2つ。カラス人間とでも言えばいいのか、頭だけがカラスとなっている。その頭は後頭部と後頭部がくっ付き、左右を向いて1つとなっている。


 パラメータを直ぐに発動してオルトを確認する。

 触れていないので詳細は分からないが1つだけ分かった事がある。


【マモン】


「マモン……」


「ま、マモンと言いましたか!?」


「な、なに? 凄いの?」


「マモン……7人の魔王の1人。強欲を司る魔王と聞いた事が……」


「魔王って!?」


「強いのか?」


「強いなんてものじゃありません」


「驚いたか? そう、私は魔神様より魔王として新たな生を受けたのだよ」


 どうやら元々この世界の住人っぽいので転生者ではないらしい。


 それにダンジョンを貰ったという事は、やはりダンジョンは人工のものだった様だ。

 しかし何か違和感を感じる。ここのダンジョンは何かを育てる目的で作られた気がしてならないのだ。段々と強くなる敵に、見やすい視界。休憩所やあのタイミングでの無限ゴーレム。

 どうしてもコイツが作ったものとは思えない。


「私の使命は魔神様の邪魔になり得る者を消す事。つまり転生者を消す事なのだよ」


 俺達を消すと言う以上、育てる意味がない。

 何かがおかしい……

 しかし今はそんな事を言っている場合では無い。


「転生者ってなに?」


「転生者……聞いた事がありません」


「言ってなかったが、俺は元々別の世界で生きていたんだ」


「別の世界……」


「前の世界で色々あって、神を名乗る者にこの世界へ転生してもらったんだ。代わりに魔神を倒す事を条件にね。お前達を巻き込みたくなかったから、敢えて言わなかった。多分クロも転生者だ。クロとはたまたまこっちで一緒になっただけで、前の世界では知らなかった。クロ本人も転生者の自覚は無いと思う」


「ずっと……秘密にしてたの? 私が信じられないの?」


「私達、仲間だって言ってくれたのはアルさんですよ?」


「すまない」


「そんな……」


「エリー。今は目の前に集中しましょう。アルさん、後でしっかり聞かせてもらいますよ」


「そうだ……ね!」


「あぁ、それで頼む!」


「もう、いいかな?」


 律儀なやつだ。俺達を待ってくれていたのか。


「その前に、どうして俺達が転生者だと分かった」


「この魔眼だよ。この世の全てを知る事ができる、鑑定眼というものだよ」


 人神も魔眼がどうのとか言っていた気がする。


「これを人に使えば、相手のステータスも知る事ができる。転生者は皆異様なスキルを持っていると聞いていたからね。直ぐに分かったよ」


 なるほど。何となく話が纏まってきた。


 魔神はオルトを魔王にして、自分の脅威となり得る転生者を消す使命を与えた。そしてオトルは俺やクロを見つけて、ついでに勇者と名のつく称号を持つエリーをも殺そうとしていという事だ。


「だから私には分かっていた。デーモン・エンペラー……彼では君らに勝てない事をね」


 デーモンのステータスも俺達のステータスも分かるのだから当然だろう。


 そして俺達のステータスを見てもこの余裕……俺達に勝てる自信がある。という事だろう。


 分かってはいた。デーモンを使って村を滅ぼした事。デーモンより奥の部屋にいる事。デーモンを倒したらと言った事。

 イコール、デーモンより強いのだろう。


 しかし、それが俺達のステータスを知った上での余裕だとは思わなかった。


 もし、俺達のスキルの中身まで知った上で言っているのなら、まず勝ち目はない。


「さぁ、お喋りの時間はもう終わりだ……」


 マモンの威圧感が増してくる。


「この前は殺し損ねたが、今回は私が直接手を降してやる!!」


 マモンは真っ黒な瘴気を周囲に霧散させていく。


「うっ」


「なん、です、か」


「これ、は」


「グゥル……」


 パラメータ発動。


 ステータス異常。【呪】

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