1 異世界への扉
勝手気ままに内容を考えていくのでこれから先のことは一切決まっておりません。
主人公の護が精神的にも肉体的にもどの様に成長して行くのかを楽しみに読んで下さると幸いです。
少しばかり唐突ではあるが、俺の黒歴史を赤裸々に語ろうと思う。
俺は生れつき体が小さくひ弱だった。力も弱く線も細い。それは男であるはずなのに女に間違われる程。そんな奴の学生時代は大抵いじめられっ子と相場が決まっていた。
先ずはどれ程運動神経が無いのか聞いて欲しい。腕立て伏せは伏せたら戻れない。走れば転ぶ。体育祭で派手に転んで最下位、もはや学校の名物とかしていた。
男らしくなる為に始めた空手も7年間道場に通い続けた14歳の俺が10歳の小学生に負ける。
それだけじゃない。あの時だってーーー
「ーーー護? 大丈夫? 私が運んであげるから場所教えて」
おっと、今は担任に荷物運びをさせられている所だった。目の前の少女は幼馴染の清水奈々だ。事ある毎にお節介を焼く系の幼馴染とでも言えば分かりやすいだろうか。現在も俺が持っているダンボールを奪うように持っていく。
幼馴染の奈々もトラウマの1つだ。俺が空手を始めたと聞き、追うように空手を習い始めた。そんな奈々は速攻で俺を追い抜き、全国優勝するに至るまで極めてしまった。
そんな彼女は成績優秀、容姿端麗のパーフェクトガールで校内にファンクラブが存在するする程だ。幼馴染の俺が言うのもなんだが、パッチリとした目に小ぶりの鼻と健康的な濃いピンクの唇は薄く、それでいて確かな弾力を主張するかの様な存在感。小さな顔に全てを詰め込み、黒くて長い髪はそれらを引き立てる様に包み込んでいる。
そんな彼女の隣にはいつも虐められっこで陰気な幼馴染の男がいた。これが彼女を守れるくらいの男か高身長のイケメンだったりしたら誰も文句は言わないだろう。
これが理由で絡まれる事も多い。その度に全国一の空手を鑑賞できる訳だが、俺が絡まれている理由に気付いていないと言う天然さも持ち合わせて居る。
幼い頃から己の見た目に悩み、空手は上達せず、隣でメキメキ成長する美少女。美少女に守られ、日常生活すらも心配される俺の気持ちが普通の人間に理解できるだろうか?
できるわけがない。
こんな生活を送っていれば強くなりたいと願ってもバチは当たらないだろう。
「聞いてる? この荷物は何処に運べばいいの?」
「いいよ、自分で持てるって!」
「何いってるの!? 怪我でもしたらどーするのよ」
ちなみに荷物は重さ5キロもない程度のダンボール一箱だ。
「どんなけひ弱なんだよ! そのくらい持てるわ!」
「いいのいいの、ここは奈々ちゃんに任せなさいっ」
結局断った所で言い出したら最後、毎回却下されるのはお決まりのルーチンだ。
「美味しいクレープのお店を見つけたの、一緒に行こ!」
同じ空手部に所属している俺達はスケジュールも必然的に被るわけで、特に断る理由もないので了承する。
「あぁ、分かった」
教室までの間奈々は一方的にクレープについて熱くかっていたがあまり興味がなく殆ど記憶に残っていない。
「お、いつも仲良しだね〜」
「荷物は男が持つものでしょ」
「奈々ちゃん! 僕が荷物持ってあげるよ!」
いや、もう目の前だから、目的地。相変わらず奈々は何処でも人気者だ。
「早乙女くんは女の子に荷物を持たせるなんて情けないとは思わないのかい?」
「漢たるもの———
「あぁ、漢は凄いね」
上から生徒会長と空手部部長、生徒会書記だ。
会長はメガネに黒髪で、指先でメガネの位置を直す様はこれぞ生徒会長と言ったものだ。
空手部部長はまさに漢! というガッチリとした身体で、制服はサイズを間違えてるよ、と教えてあげたくなる程パツパツになっている。実際たまにボタンが飛ぶことがあって前の席の生徒が驚いている。
書記は優しそうな顔立ちだが割と毒舌で有名だ。茶色がかった柔らかな長髪が裏エスの本性を隠している。
因みに早乙女は俺の事だ。フルネームは早乙女 護。
「私が勝手にやってる事だもの護は悪くないのよ?」
「そうであったとしても彼には男性としての見栄やプライドが無いのかと問いているわけです」
「俺が漢と言うものを一から教えてやろう、部活は休みだが俺が直々に残っ———
「それはダメ! 今日は、その、ね?」
ね? とか言いながら俺の方を見るな。みろ、そんなこと言うもんだから一瞬でクラス全員俺の敵だよ? 部長なんか殺気込めてんの? ってくらい睨んでるじゃないか。
「今日はなんだ!? 早乙女! お前まさか清水さんと……貴様と言うや———
「はいはい、落ち着いてね。会長も、仕事が残ってるんですから行きますよ!」
言わせてあげようよ最後まで。
「行くわよ! 早く準備して!」
3人が去った今がチャンスとばかりに急かしてくる。
「おっけ、おっけ。分かったから」
「よし、忘れ物はないわね?」
俺だって早くここから立ち去りたいよ。クラスメイトの殺気がこもった視線が痛いんだ。
「で、クレープ屋ってどこにあるんだ?」
門を出て帰路がいつもと同じなので聞いてみた。
「私達の家と学校の丁度真ん中くらいかな??」
「そんな店あったか?」
「最近できたのよ……ってあぁ! お家に財布忘れちゃった!」
「いいよ俺が出すから」
「ダメ! 今日はダメ」
「今日は?」
「あ、いや、違うよ? いつもダメだけど! と、とにかく! 取りに帰るの!」
あぁ、そうか俺の誕生日か。今日で15になるんだった。何をそんな必死になっているのかと思えば、可愛いやつだ。
奈々は悪いと思ったのか、やけに距離が近くなる。今は腕を抱かれた状態で歩いている。こんな事今まで無かったのだが……おかしいな。いつもより余所余所しい? いつもより化粧が濃い気もするし顔も赤い。あ、やばい。こっちまでドキドキしてきた。何年見てようが可愛いものは可愛いのだ。自分でも耳まで真っ赤になってる事が分かるほど照れてきた。
そうこうしている内に家の前だった。
「ちょっとまってて?」
そう言って腕から離れていく。もう少し、なんて言えないまま奈々は家の中へ駆け込む。
ちなみに俺達の家はお隣さんだ。物心ついた時には一緒に遊んでた。
当然気付いていると思うが俺は奈々の事が好きだ。多分奈々も同じ気持ちのはず。一度彼氏を作る気はないのかと聞いたことがあるが、本当に良いのかとキレられたこともあった。
俺は鈍感関係主人公じゃ無い。ここまで条件が揃っていればわかる、思い違いでは無い。
ついでなので俺も荷物を置いて行くことにした。
「ただいまぁ」
「あら、護? 出掛けるの?」
奥の台所から出て来たのはエプロン姿の母親だ。結構な歳なのに可愛らしい雰囲気がまだ残っている。若い頃は可愛かったんだろう。俺がこんな見た目なのも母親の血が濃いせいだ。
「あぁ、うん」
「奈々ちゃんでしょ」
にやにやした顔だ。
「そうだよ。多分誕生日だからね」
「あら、珍しい。自覚してたの? 奈々ちゃん、いつもみたいに張り切ってんでしょう? いつもどうり驚いてあげなさいよ?」
危ないからフライ返しを振り回しながら話すのはやめてほしい。
「今年も誘われるまで誕生日のこと忘れてだけどね」
「まだ若いのに自分の誕生日忘れるってどうなってんのよ」
「やかましい」
うちは基本的にオープンで仲がいい。実は密かに自慢の1つだが、口に出すのは恥ずかしいので言ったことはない。
「今日は早く帰って来なさいね? 奈々ちゃんにも言っておいて。今日はご馳走だからん」
「やめんか気持ち悪い」
ウインクをしながら話す母を尻目に家を出る。
玄関を開けると頬を膨らまして怒る奈々がいた。
「遅いっ」
「ごめんごめん。あっ今日はご馳走だから早く帰って来いって」
「あ、そうだ! 私からお願いしたんだった! ちょっと挨拶してくる!」
そう言って俺を押しのけて俺の家に入って行く。人に遅いとか怒っておいて……
「行くわよ〜〜!」
戻って来るなりこれだ。
「はいはい」
やっと俺達はクレープ屋を目指して歩き出す。
近い、近いよ奈々。先程と同じように嬉しそうに俺の腕を引いている。さっきから当たってる。あれが……
いかん違う事を考えて気を逸らさねば!!
そ、そうだ! 今年はどんなサプライズをする気だろう。クレープ屋で何かあるんだろうか? バースデークレープとかあるのかな? いや、そんなありきたらなものではないだろう。年々サプライズのグレードが上がっているからね。
遂にクレープ屋が見えてきた。その間ロックされた腕が外れる事はなかった。
「あ! あれよあれ!! あのお店!!」
喜びを隠しきれない子供の様に俺の右手を無邪気に引っ張って先を急かす。
「おいおい、危ないからそんなに急がないでーーー」
ーーーあっ
信号、赤だ。それに気付いた俺はふと右側を見る。
〝ふぁーーーーーー!!〟
大きなトラックがクラクションを鳴らしていたがそんな事はどうでもいい。すぐさま俺は引っ張られる右手に全神経を集中して人生最大の力を込める。
「っぶなっ!!」
奈々と繋いだ手を全力で引く。
くそっ!! 男だろ! こんな時くらい気合い入れて力出せよ!!
ーー足りない。
「くっぅ」
「え?」
奈々は今頃気が付いたようだ。このままでは2人とも……! そう思った瞬間、奈々は俺の手を振りほどいた。その時奈々はーー
ーーー笑っていた。
血に染まり力なく横たわる奈々の姿。慣性の力で尻餅をつく俺。
「あっ……」
状況についていけない。パニック。
「きゃーーーっ!!」
「おい! あれやべーだろ」
周りの喧騒で我に返る。知りたくもない現状を把握。
「あう、ゔぁぁああ!!」
声にもならない声を出して倒れこむように奈々に縋り付く。
「な、なな? おい嘘だろなぁおい?」
今自分に出来ることーー
奈々の顔の近くへ顔を近付ける。息、してない。こんな時、日本人なら誰でも知ってる。俺は急いで心臓マッサージを始めた。
「あっあっ、、な、奈々? なぁ」
心臓マッサージをやめない。
「目、、開けろよ、クレープ、、食べんだろ? おごってやるからさ?」
頬に熱い何かが流れる。
「いつも、いづもぞうだ……寝起き、わるずぎんだよ」
無理やり笑う。
「今年、は、どんな、サプライズ、なんだ? だのしみに、しでたん、だぜ?」
こんな時に去年のサプライズの事を思い出す。
「起きろよ!! おい!! 馬鹿野郎!! いつまで寝てんだ!!」
溢れる涙が止まらない。
「いつもいつも勝手なことばっかりしやがって!! フザケンナよ!!」
本気でやる心臓マッサージをするのはかなりしんどい手が麻痺してきた。
それでもやめるわけにはいかない、だってそうだろ? 0.1%でも可能性があるならやめられない。
「なぁ……頼むよ……おき……て」
いくら呼びかけても返事をしない。もう何を言っても届かないのかーー
時が経つにつれやるせない気持ちが大きくなっていく。
「あぁ……っうっあ……」
俺がもっと早く気がついていれば、いや、もっと力が強ければ。奈々を、奈々を守れたのに。何が護だ。
ーー俺は生まれて初めて自分の事を呪った。
強く、強くありたかった
全てがどうでもよくなった。俺にとって奈々はそれくらい大切な存在だったんだと、今やっと気が付いた。
この気持ちももう伝えられない。もう遅い。どれだけ願っても……戻って来ない。
ーーそんな簡単に割り切れはわけがないだろ!!
「あああああぁぁぁっ!!」
俺はまた叫んでいた。その瞬間。周りの音が消えた。
さっきまで救急車のサイレンや周りの喧騒で包まれていたのが急に閑散とする。取り乱していた俺もこの変化には流石に気がついた。
周りを見渡す。風景に変化は何一つない。まるで時が止まったかの様に全てが止まっていた。
「どうなってるんだ」
全てが止まっている中1人だけこっちに向かってくるのに気が付く。
「やぁ、もう一度チャンスが欲しくないかい?」
ここから護の全てが始まりました。
SS神様の日常と話が繋がるところもあるので是非読んでみてください!!




