プロローグ:6.5レビィの兄
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レビィ視点です
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僕とリリィが黒ノ栖家の人間になり1年くらい経った頃、メイド長の烏間さんが父さんからの伝言を伝える為にやってきた。
「今宵ご主人様より皆様にお伝えしたいことがあるという事ですので、18時になりましたらお城の方までおいでくださいませ。そこで食事会を開催致しますので」
それだけ言うと烏間さんは1度お辞儀をすると行ってしまった。
「相変わらず烏間さんは無愛想だな。あんなに美人なのに勿体ないな。まあ父さんにしか興味ないんだろうけど。それにしても、うーん食事会かあ久々だなあ。それにしても話ってなんだろね。リリィはどう思う?」
リリィは首をコテっと横に傾げて、
「うーんと.....またお父様が誰か新しい子供を連れてくるんじゃないかなぁ。私は次こそは女の子がいいなあ」
僕はリリィの言葉を聞いて考え込む。
(まあリリィの気持ちも分かるけど。確かに今いる兄弟の中で女の子はリリィと神無姉さんだけだからな。神無姉さんは常に忙しそうにしている柊兄さんにベッタリ引っ付いてるからリリィなんかに構う暇なんてないだろうし。それに皆を集める時って大概そうだからなあ。まあ行けば分かるか)
僕はそう結論づけて、約束の時間まで適当に時間を潰した。
そして僕達の考えは当たっていた。1つ予想してない事もあったけど。
◆◆◆◆◆
約束の時間になるとリリィと2人で父さんの城に向かった。
父さんの城に招かれた僕ら子供達は、大きな大広間に長い机の上に置かれた最高級のシェフが作った料理を堪能しながら、父さんが話をするのを待っていた。
(それにしても僕もそうだけど皆ここまでよくできるようになったよ。)
僕は皆のテーブルマナーを見ながらそう思った。
ここにいる子供達は皆父さんに目をかけられ、父さんの子供になった身寄りのない子供達だ。
だからその殆どがまともな環境で育ってきた者は少なく、皆ちゃんとした教育を受けてきた者がほとんどいなかった。それなのに僕の目の前には音をカチャカチャ鳴らす事なく完璧なテーブルマナーで食事を優雅に食べている。
(僕達もここに来る前は生きていくのに必死でテーブルマナーなんて覚えてる暇も、ましてやそんなこと頭にもなかったけど。まあちゃんとしないとここにはいられないから当たり前なんだけどね。)
かくゆう僕達もスラム街で途方に暮れている所を父さんに救われている。そしてあの時父さんが現れていなかったら僕達はどうなっていたかな?とあの時の事を思いだし苦笑した。
◆◆◆◆◆
僕達を生んだ両親はろくでなしだった。父親は仕事が上手くいかなくなると酒に溺れ、そんな父を見た母親は僕達を捨てて他に男を作って出ていった。そして父親はその腹いせか僕達に暴力を振るうようになった。
このままだと殺されてしまう。
そう思った僕はリリィと2人で逃げ出した。だけど子供2人でやっていける程、世の中は優しくできていなかった。そんな中スラム街の片隅で途方に暮れている僕達の所へ1人の男が現れた。
「お前がこの辺で盗みを働いている悪ガキか」
その男は今僕らのいるこの荒れ果てたスラム街に似つかわしくない高級そうなスーツを着て何人ものメイドをゾロゾロと引き連れその凶悪な肉食獣のような顔で笑いながら僕達を見下ろしながら話しかけてきた。
「おじさん達なに?見たところこんな所に用のある人って感じじゃなさそうだけど?」
「私は黒ノ栖勇一郎という。ある会社を経営している者だ。それにそれはこちらの台詞だ。お前達みたいな子供がこんな所で何をしている?家は?親は何をしている」
「家はない.....僕達は家を出てきたんだ。あいつから逃げる為に.....それに僕達に.....リリィに暴力を振るうあんな奴なんて親なんかじゃない。だから僕達は逃げてきた」
僕は嫌な事を思い出させるその黒ノ栖勇一郎とかいう男に、自分でそう言いながら自分に力がないせいでリリィに大変な思いをさせている。そんな僕の不甲斐なさに腹立ち、なんの関係もないその男を睨めつけながらそう答えた。
そしてその時その黒ノ栖勇一郎とかいう男は何が嬉しいのか笑っていた。そしてその頬を更に吊り上げながら僕達にこう言った。
「そうか!逃げたか!それがお前達が出した答えなんだな。
だがそれは逃げたのではない。お前達に生きるという意思の強さがあったからだ。だが意思の強さだけでは真に強いとは言えない。だから2人にはチャンスをやろう。お前達が自分達の力だけで生きていく術を、肉体的、精神的な強さを得るチャンスをやる。そしてもし私に真の強者だと認めさせる事が出来たら私の持ちうる全てのものやろう。さあどうする?」
僕達はこの時はまだ目の前の人物が世界を代表する黒ノ栖カンパニーの社長だなんて知らなかったし、やたらと強さに執着する変な男だと思った。だけど目の前の男からは僕が欲して止まない百獣の王のような威圧感と何より相手を否応なしに黙らせ、屈服させる絶対的な強さのようなものも感じた。そして僕自身今の環境から抜け出せるなら、自分達の力だけで生きていくだけの強さを手に入れられるなら、そしてなによりリリィを守る強さが手に入るなら、僕はそう思い彼に付いていこうと、利用してやろうと思った。
「分かりました。よろしくお願いします。黒ノ栖さん。僕はレビィ・テイラーです。こっちがリリィ・テイラー」
そう言って2人で頭を下げると黒ノ栖さんは小さく肩で笑った後こう言った。
「違うな。お前達は今日から黒ノ栖家の、私の子供になるんだ。レビィ黒ノ栖に、リリィ黒ノ栖だ」
そう言うと黒ノ栖さんは豪快に笑い出した。
そして僕とリリィはその男の、父さんの、子供になった。
◆◆◆◆◆
食事会が終盤に差し掛かった頃、僕があの時はまさか父さんの子供になるなんて思わなかったなと昔を思い出しながら食事をしていると、僕達の中で一番年上の柊兄さんが食事の手を止め、ナプキンで口を綺麗に拭き取った後、父さんに今日何故皆を集めたのか問いただした。
「父さん。今日はどうして皆を集めたんですか?まあ忙しい中、父さんが僕達とこうして食事を一緒にしてくれて僕達は嬉しく思っていますが。また新しい僕達の兄弟が出来るのですか?」
「察しがいいな柊。そうだ。まだ確実に来ると決まったわけではないが、あの時のあいつの目を見る限り俺の息子になるだろうな。確実に。名を真白と言ってな年は今年で13になるんだったか?まあ中々面白いやつだぞ。連れてくるとすれば来週になるな。その時はよろしく頼む。お互いを高め合い、己の強さを磨きあってくれ」
「そうですか。分かりました。その真白君が父さんの息子になるという事は僕達にとっては兄弟です。皆で少しでも父さんに近づける様に、黒ノ栖家に相応しい強き者を目指して精進していきます。.....話はそれだけでしょうか?」
「そうか.....よろしく頼むぞ。いや話はもうひとつあってな。その真白が息子になればそれで私の子供となる者。私の後継者候補となるものは最後になる。その真白も含めて、今いる私の子供達の中から後継者を選ぼうと思う。そしてその日は今から3年後とし、その時点で獅子の位に上り詰めている者の中から選ぶ。話は以上だ。我が子供達よ。それまで皆でお互い競い合い己を高め真の強さを見つけろ。そしてそれを私に見せてみろ。私にその強さを見せ、認めさせる事ができれば私の今持つ全てのものをくれてやる!」
そう父さんは宣言し席を立ち大広間から出ていった。
それを聞いた僕も含めた父さんの子供達の心はざわつき、辺りは喧騒に包まれた。僕達は父さんの後継者になる為に集められたが、今まで明かされていなかったその詳細が今公表されたんだ、皆が騒ぐのも無理はないと思う。
皆が興奮し騒いでる中、柊兄さんが立ち皆に静かにするように促してくる。そしてこの場は一瞬にして静けさを取り戻した。
「皆落ち着くんだ。確かに今日の父さんの話は僕も驚いた。それに父さんの後継者になる道が明確になったんだ気持ちが昂るのも分かる。だがここで気持ちを浮わつかせては駄目だ。僕達は今まで通り己自身と向き合い己の強さを高めていこうじゃないか」
そして柊兄さんが話を終えるとその場で一斉に拍手が巻き起こる。
黒ノ栖柊
彼は僕達の中で父さんの後継者に一番近い男だと言われている。文武共に常にトップでさらに獅子の位に常に位置しつづけている。そして父さんの初めての息子として認められた人でもある。彼がどんな経緯で父さんの息子になったかは分からないけどそんな彼は僕達の事を色々と気にかけてくれて面倒もよく見てくれたり僕達のまとめ役のような立場にいる。だから柊兄さんを慕って自分が父さんの後継者になるのを諦め柊兄さんのサポートに回っている子供達も何人かいる。
そんな柊兄さんが父さんが選んだ最後の後継者候補に興味をもった。
「でもその真白君という子はどんな子なのかな?父さんが最後に選んだってだけあって中々有望な子なのかもしれないね?あの父さんがあんな機嫌よさげに話すのは珍しいからね」
僕もそれは思った。確かに父さんは普段は血に飢えた獣の様な、油断をすれば食べられちゃうんじゃないかと感じてしまうくらいすごい威圧感を放っている。だけど今日の食事会の時の父さんはとても上機嫌で終始笑顔だった。その笑顔も充分怖かったけど.....
俺は自分の父親に対して失礼な事を考えていると柊兄さんの近くに座っていた他の兄さん達が柊兄さんに話しかけていた。
「それでも柊兄さんが父さんの後継者になるのは揺るがないと思いますよ?」
「なんたって柊兄さんは常に武道、勉学共にトップですからね。それに指導者としての資質も誰にも負けてないと思います。ここにいる皆柊兄さんを慕ってるんですから」
それを聞いた柊兄さんは苦笑しながら答えた。
「そんなことないよ。僕もまだまだ精進しなきゃいけないと思ってるしね。まあ皆が慕ってくれているのは嬉しいけどね。」
そういった柊兄さんの言葉を周りの者はそんなことないと否定しながら柊兄さんがその周囲を宥めた後、最後にこう締めくくった。
「まあ僕達にもまた新しい兄弟が出来るかもしれないんだ。もし来ることになれば歓迎してあげよう。そして黒ノ栖家の、父さんの子供に恥じぬように日々精進していこう」
柊兄さんのその言葉で食事会はお開きとなった。
◆◆◆◆◆
(まあ僕はリリィと2人で生きていけるだけの力が手に入ればいいしね。それにその真白さんって人も多分僕達と同じように録な環境で育ってきてないだろうし、父さんに必要ないと判断されればそこでおしまいだから皆みたいに死にものぐるいでやっていくんだろうな。ここの人間は柊兄さんに気に入ってもらって自分は後継者になるのを断念してその後についていきその恩恵を得るか、誰も信用も必要もせず1人孤独に父さんの後継者を目指すか。その2つだからな。まあ僕とリリィは例外だけど。僕は運動神経も頭の方もましなほうだからいいとしてリリィは勉学の方はまだ大丈夫にしても武道の方がてんでだめだからなあ。まああんな事があったんだからしかたないか。そこは僕がフォローしていけばいいか。)
僕はそんな事を考えながら食事会を終え自分の部屋へと向かっていた。正直僕はあまり次に来る父さんの子供、真白さんについてはこの時は関心も興味もなく特に気にしていなかった。
「レビィどうしたの?そんな難しい顔して」
「ん?いや相変わらずリリィは面白い顔してるなと思ってさ」
「もぉ~!ほっといてよ!そうやってレビィはいつもはぐらかして私を除け者にして1人で抱え込むんだから.....たまには私にも話してよ!.....私なんかじゃ力になれないかもしれないけど.....」
そうやってリリィは顔を膨らませて怒ったと思ったら、今度は下を向いて落ち込んだりしてホントに面白い顔するやつだなと思いながらも、乱暴にリリィの頭に手を乗せてくしゃくしゃっと撫でた後に言ってやった。
「別に何も抱え込んでなんかないよ。次に兄弟になる真白さんって人とは仲良くやっていけるかなって思ってさ」
「ホントだね。女の子じゃなかったのは残念だけど優しい人だったらいいなぁ。他の兄さん達は皆いつもピリピリしてて怖いから.....」
「そうだな。まあここにくるのはほとんどが両親がいなかったり、録な環境で育ってきてない奴ばっかりだからな。人を信用できなくなっても仕方ないよ。僕達も人の事言えないし。まあ期待しないで待ってよう」
「うん.....」
僕の話を聞いてリリィはさっきに輪をかけて風船が萎んで行くように元気がなくなった。多分ここにくる前の事を思い出してしまったんだろう。そして僕は頭をかきむしりながらめんどくさいなあと思いながらリリィに言ってやった。
「心配しなくてもリリィには僕がいるだろ?ダメダメな妹を守っていくのは何でも出来る天才的なお兄ちゃんの義務だからな。リリィはその後ろをピョコピョコアヒルの子供みたいに着いてくればいいの」
俺が胸を張ってガシガシ頭を撫でてやりながらリリィにそう言うと、リリィは僕の手を払い除けてきた。
「もぉ~!さっきからレビィ頭撫でるのヘタ過ぎ!髪がくしゃくしゃになっちゃったじゃない!」
そうやって2人でいつも通りケンカをしながら食事会の大広間を後にした。
◆◆◆◆◆
そして一週間が経ち父さんからの呼び出しがあった。
僕が修練場で汗を流し、部屋に帰ってシャワー浴びようと思った時だった。
「あ、お疲れ様レビィ。さっき烏間さんが来て父様の伝言を伝えにきてくれたよ。夜の6時にお城に来るようにだって」
「そっか。という事はその真白さんって人が黒ノ栖家の人間なるって決心したんだな。分かったよ。まだ時間があるから少し汗を流してくるから待っててよ。リリィはその間に準備しておいて」
「うん。分かった」
そういってリリィは自分の部屋へパタパタと走って行った。
「さて僕も行くか。さて真白さんはどんな人かな?」
そして僕は新しい兄弟になる真白さんに思いを馳せながら風呂場に向かった。
◆◆◆◆◆
僕達が城につくと他の皆は学生服に身を包み整列して父さんの帰りを待っていた。
「もぉ~レビィが遅いから私達が最後だよ!男の子のくせにお風呂長いよ!」
悪かったよと頭をポリボリ掻いて苦笑しながら皆の並ぶ列にリリィと2人で並ぶ。
そうして程なく待っていると父さんと共に1人の少年がやってきた。その少年は僕と同い年くらいだろうか、髪は所々はねていて顔は小さく中性的な顔だちで女の子みたいな顔だちをしていた。そして物珍しいのか城の中をキョロキョロと見回していた。
(あれが真白さんか.....何というか僕達が来たときと違うな。警戒心とか懐疑心とかそういったものがあまり感じられない。僕達が来たときは皆敵に見えたもんなのに。まあ柊兄さんが皆をまとめているおかげで今はまだましだけど。.....ん?何だ?今瞳の色が.....変わった?気のせいか?)
俺が真白さんを観察していると服の袖をクイクイとリリィが引っ張ってきた。
「どうしたリリィ?」
「何となくだけどあの真白さんって人他の兄さん達と違う気がする。何か優しそうな感じがする」
「確かにな。まあこれから会う機会はいくらでもあるんだ。その時に話してみてうまくやっていけたらいいな」
「うん!そうだね!」
そういってリリィがニッコリ笑っていた。
そしてその時は以外と早く訪れた。
◆◆◆◆◆
真白さんに柊兄さんがこの黒ノ栖家、学園の事を話した後、父さんが最後に少し話をして締めくくった後、今日は解散となった。
そしてリリィと僕が部屋の前までやってくると僕達の部屋の隣の部屋の前で何か考え事をしている人がいた。真白さんだ。
「あなたは確か真白さんでしたよね?」
「そうだけど君たちは?」
「僕はレビィ黒ノ栖といいます。こっちがリリィ黒ノ栖僕の妹です。こんな言い方をするのは変ですが本当の兄妹です血の繋がったね。」
「わ、私はリリィ黒ノ栖です」
そして僕達は真白さんに頭を下げる。
「まさかあの有名な真白さんが僕達の部屋の隣なんて。これからどうぞよろしくお願いします。と言うか真白さんなんてよそよそしいですね。もう僕らは家族なんですから真白さんは今年で13歳になるんでしたよね?じゃあ僕より1つ上でリリィの2つ上ですから真白さんは僕らのお兄さんになりますね。なので僕達の事もレビィ、リリィと呼んでくれてかまいません。いいよね?リリィ?」
「は、はいよろしくです。真白お兄ちゃん」
「う、うんよろしくレビィ、リリィ」
そうしてお互いの自己紹介をした後にこれからは兄弟になるから仲良くしましょう。そう話すと真白兄さんは目を見開いて驚いていた。
僕がどうしたんだろう?と思っているとリリィも気になったんだろう。真白兄さんの顔を覗きこんでどうしたのか聞いていた。
僕はリリィのその行動に目を大きく開けて驚いた。
リリィは前の両親の暴力がきっかけで男の人とまともに話したりできなかった。ましてやあんなに相手に顔を近づけて覗きこむなんて事できるはずなかった。
僕がそんなリリィの様子に驚いて言葉を失っているそんな矢先にそれ以上の出来事が起こった。
リリィが真白兄さんに近づいて顔を覗きこんだ瞬間に真白兄さんの瞳がカラフルに色々な色に変化した。
そしてそれを見たリリィは手を叩いて褒めていて、僕もそのカラクリが気になって真白兄さんに聞いてみた。
するとどうやら真白兄さんは特異な体質らしく、感情の変化によって瞳の色が変化するらしい。
(やっぱりさっき僕が見たのは勘違いじゃなかったんだ)
僕がさっき見たのが気のせいではなかったのかと納得していると真白兄さんはその瞳の色が変わる話をしてくれた後悲しい顔をしていた。多分その瞳の事で色々周りから言われたんだろう。
そして気味が悪いよね。という真白兄さんの言葉を僕達2人は否定した。
僕は単純に驚いたと言い、リリィは虹のようだと言った。
そしてリリィの言葉を聞いて、真白兄さんが笑いだした。
それを見たリリィは自分の言葉が信じてもらえていないとでも思ったのか、涙目になって真白兄さんに詰め寄っていた。
「どうして笑うんですか!?本当に凄いと思ったんですから!」
「あははごめんねリリィ。いや、昔君と同じ事を言った奴がいてさ.....それで嬉しかったんだありがとね」
真白兄さんによるとリリィと同じ事をいった人が昔いたらしく、それが嬉しかったらしい。
僕の勘ではおそらくガールフレンドだと思う。そしてその真白兄さんのガールフレンドはどんな人かなあと勝手に想像していたら真白兄さんがリリィに驚くべき事をした。
真白兄さんはリリィの頭を撫でていたのだ。
とゆうか真白兄さんには驚かせられてばっかりだ。心臓に悪い.....
(さっきみたいに仲良くしゃべったりあんなに顔を近づけていただけでも驚きだったのに、僕以外の男の人に触れられて平気なんて.....いつもなら触れられた瞬間に顔が真っ青になるのに今は大丈夫そうだし.....)
僕の心が驚きと心配で充たされていると案の定リリィがその場に座り込んでしまった。
僕がやっぱりダメだったかと思い駆け寄ろうとしたが.....やめた。
確かに男の人に触られたという驚きもあったんだろうがリリィの顔を見て思いとどまった。リリィは目を細め顔を真っ赤にしてとても気持ちよさそうな顔していたからだ。僕はその顔を見ていたら何故かイラっとしたので真白兄さんにリリィが恥ずかしがりやだと話してやった。すると案の定リリィが僕に突っかかってきたが僕はそんなリリィを適当にあしらっていると真白兄さんがリリィの事を心配してくれた。
「でもさリリィとかも皆と一緒に父さんの跡取りを目指してるの?だって武道の鍛練とかもあるんだよね?」
(そうなんだよな。リリィは昔のトラウマのおかげで男の人とまとに節する事ができない。だから僕が教えているんだけど.....)
僕が真白兄さんに言われた通りの事を本当にどうしようか考えているとリリィが失礼な事を言ってきた。
「それが勉学の方はなんとかついていけてるんですけど武道の方が全然上達しなくて.....レビィと一緒に鍛練したりしてるんですが.....レビィは教え方がヘタで.....だから位もまだ鹿の位のままで.....」
「失礼だな!僕の教え方は完璧だよ!ただリリィが僕の完璧な指導についていけてないだけだよ!」
リリィが僕の教え方に難癖をつけてきたからほっぺたをつねってやるとリリィが反撃してきたので取っ組み合いになった。そんな中真白兄さんは他にも疑問に思う事があったらしく僕に質問をしてきた。
「ごめん取り込み中の所悪いけどちょっと聞いていいかな?位って何?」
それを聞いて互いの頬をつねりあっていた僕達が動きをピタッと止めて驚いた。
この学園では位はとても重要だからだ。それを知らない事に驚いたがあの烏間さん達ならしかたないかと納得する。ここで働いてくれるメイドさん達はこちらから言えばある程度の事はしてくれるし、答えてくれるし、教えてくれる。
だけどこちらから聞かなければ何も答えてくれない。父さんの方針で相手の向上心、貪欲に求める姿勢というものを見る為のものらしい。
(まあメイド長の烏間さんは父さんにしか興味がないから私情もあるかもだけど)
僕がここのメイドさん達の不親切さならしかたないかなと思いながら、階位制度について説明し、ちょっとだけほんの少しだけ、僕が自分が今鷹の位だと軽く自慢したが、「へーそうなんだ」と軽く流されて内心ちょっとショックだった。
(.....真白兄さんはここに来たばかりで学園の事を知らないからしかないけどさ.....)
僕がそんな真白兄さんの態度に少し悔しい思いを滲ませながら、階位制度の事は僕の説明で納得してくれた。次に何故自分が有名になってるかが気になっているみたいだった。
「それはですね真白兄さんあなたで最後だからですよ」
「最後?」
僕はこの前食事会で父さんが話していた事を話した。
真白兄さんで父さんの子供となるのは最後ということ。
その真白兄さんも含めた今いる子供の中から父さんの後継者を決めるということ。
そして僕らの中で父さんが最後に選んだ子供だからよく考えた上で決めたであろうこと。
僕の話を聞いて理解してくれた真白兄さんだったが首を傾げて思案顔をしていた。
また新たな疑問にぶつかったらしい。
「そうなんだなるほどね。でもレビィとリリィはそんなに俺に親切にしてていいの?ライバルなわけでしょ?まあ俺自身本当に大した事なくて皆の買い被りなんだけださ」
そう言って力なく笑う真白兄さんに対して僕とリリィがここにいる理由、皆と違って父さんの後継者にそこまで拘ってなく、僕とリリィ2人でやっていけるだけのお金と生きていくすべが手に入ればいいという事をリリィの頭を撫でてやりながら、真白兄さんに説明した。
するとリリィのバカが僕が頭を撫でるのがヘタだとか言うので、優しい優しいレビィお兄ちゃんが恥ずかしがり屋のリリィに変わって、真白兄さんに頭を撫でてやって欲しいとお願いしてやった。
するとリリィは恥ずかしがりながらも、撫でて欲しいのか上目遣いで真白兄さんに無言の懇願をしていると、苦笑しながら真白兄さんはリリィの頭を撫でてくれた。
そしてさっき同様にマヌケな声とバカみたいな幸せそうな顔をしていた。
そんな時リリィは真白兄さんに頭を撫でられると、何故こんなに幸せな気分になるのか真白お兄さん聞いていた。
その様子を僕は見ながら真白兄さんが答える前に、僕が撫でている時はそんな顔したことないくせにと内心でイラついていると、リリィがやっぱり僕がするときと全然違うと抜かしてきたので、いくら温厚な僕でもキレてしまい、さっきのバトルの続きが始まった。
そしてお互いの頬を餅のように伸ばしあっていると、真白兄さんが静かに1つ1つ大事なものを愛でるような優しい顔つきで理由を話してくれた。
「昔....ね俺がもっとちっちゃい頃にそうやっていつも頭を撫でてくれた奴がいたんだ.....そいつに撫でられると今のリリィちゃんみたいに心に灯りが灯るっていうかひだまりの中にいるような気分にさせてくれるんだよ。だから俺もそいつにもずっとこんな気持ちでいてほしかったから、いつも撫でててたんだ。だからかな。どうゆう風に撫でてあげたら相手が喜ぶか、大体分かるようになったんだ。でもそいつバカでさ。いっつも人の心配ばっかして、夜1人になるとこっそり泣いてたんだ。自分だって辛い事があったくせにさ.....だからかな。俺はそいつに泣き止んで欲しくて、ずっとあのヒマワリが咲いたような満面の笑みを見せて欲しくて、そいつみたいに頭を撫でたんだ。じゃあそいつはまた笑顔を見せてくれて.....その時に思ったんだ。俺はこいつがずっと笑顔でいられるように強くならなきゃいけないってさ。それで俺はここに来たんだ強くなるために、そいつを、そいつの笑顔を守れるように。まあまだまだダメダメだけどね。ここに来て右も左も分かんないし」
話終えた真白兄さんは恥ずかしそうに頬をポリポリかいていた。
そして僕はさっき予想していた事が確信に変わった。
(確実にガールフレンドだな。しかもかなり大事な人っぽい。リリィこれはかなり厳しいぞというか無理だな)
そんな風に内心思っているとリリィも真白兄さんの雰囲気をみて感じ取ったのか真白兄さんにその人は恋人なのか聞いていた。
「恋人!?いや違う違う!うーんそうだなあ強いて言えば.....家族かな?まあ俺は黒ノ栖家の人間になったから変な話かもしれないけど」
僕はそれを聞いて嘘だなと思っているとリリィがわけの分からない対抗心を燃やしていた
「そうですか!家族ですか!じゃあじゃあ私と真白お兄ちゃんも兄弟になったから家族ですよね!?日向さんと同じですよね!?」
そう問い詰められた真白兄さんはすごい剣幕のリリィにたじろいでいた。とゆうか引いていた。
「う、うんそうだね」
それを聞いたリリィは満面の笑みで嬉しそうにしていた。僕はそれが可笑しくてつい笑ってしまった。するとリリィに怪訝な顔で見られた。
(リリィ.....兄弟になったら結婚できないんだぞ?まあ面白いから本人が気づくまでほっとくか。にしても真白兄さんか.....あのリリィが初めてあった男の人にここまで心を許すなんてな.....父さんのいう通り面白い人みたいだ。さずがは黒ノ栖家最後の息子って事かな?まあこれから面白くなりそうだね)
僕は真白兄さんに会う前と会った後での彼への考えを180度変えて、これからの学園生活に胸を踊らせた。
次回金曜日更新予定です