プロローグ4.5:日向の気持ち
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日向視点です
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私は今しろちゃんの小さくなる背中をいつまでも見送っていた。
色名真白。それが彼の名前。
私をこの世界で1人じゃないんだよって教えてくれた人。
私の心をポワッと暖かくしてくれる人。
私の心を苦しくする人。
私の心を色んな感情に動かす唯一の人。それがしろちゃん。
私の大切な人。
◆◆◆◆◆
私が小学生になってすぐの頃、私のパパとママは天国に行ってしまった。
私が小学生になったお祝いにパパとママが私にプレゼントを買ってくれると言ってくれた、デパートに行った帰り道だった。
私達が車の中で楽しくお話しながら帰っていた帰り道、居眠り運転をしていた車とぶつかってしまった。
そして私が目を覚ましたのは病院の中だった。私は隣に座っていたママが庇ってくれて奇跡的に無傷だったみたい。
私は泣かなかった。周りの大人の人は悲しくてつらい時は泣いてもいいんだよって言ってくれたけど、とても悲しくて苦しかったけど、パパとママに会いたくてしかたなかったけど.....泣かなかった。
私はパパとママに何かあればすぐに泣いちゃう私にいつもおまじないみたいに言って聞かせてくれたから.....
◆◆◆◆◆
「日向は本当に泣き虫ねえ。でもね日向。そんなに泣いてばかりいると楽しい事がビックリして逃げちゃうわよ?」
「逃げちゃうの?」
「そうだぞ日向。悲しい時や辛いときこそ笑うんだ。そしたら楽しい事、嬉しい事が笑顔の日向が気になって集まってくるから」
「ホントに?」
「ああ本当だとも。試しに笑ってごらん?」
パパに言われて私はぐっと涙を引っ込め無理矢理に笑顔を作った。
「よーし。いい子ね。日向は。じゃあそんな日向の為に今日はママが日向の大好きなお鍋作ってあげる」
「じゃあパパはこうだ!」
そういってパパは私を肩車してその場でグルグル回ってくれた。
「どうだ?日向?笑顔でいると楽しい事や嬉しい事が集まってきただろ?」
「うん!」
◆◆◆◆◆
私にとってのパパとママが残してくれた大事なおまじない。
だから私は泣かなかった.....泣けなかった.....大好きなパパとママを悲しませたくなかったから.....
天国にいるパパとママに私は大丈夫だよって教えてあげたかったから.....
でも私にとってパパとママが居なくなっちゃった事は、私にとってのその悲しみは、自分が思っている以上に大きくて私の心は壊れそうだった。
そんな時、私はしろちゃんと出会ったんだ。
◆◆◆◆◆
草木が青々と輝いて、空が真っ青に澄みわたって、もうすぐ夏がやってくる。そんな気配を感じさせる日だったな。
私はママのママ、私にとっておばあちゃんになる人に引き取られておばあちゃんがやっている孤児院にやってきた。
「日向。お前に会わしたいのがいるんだよ。名前は真白っていうんだけどね。日向と同い年なんだけどそいつは恥ずかしがりやで中々友達が出来なくてねえ。日向友達になってあげてくれないかい?」
「うん!わかった!」
私がそう言うとおばあちゃんはおしわで一杯の顔をくしゃっとして笑って「ありがとね」と言って笑顔で頭を撫でてくれた。おばあちゃんの顔はおしわで一杯だけど笑った顔がママにそっくりでママに撫でられてるみたいで嬉しかったな。
そして私はおばあちゃんに連れられて孤児院のお庭にあるブランコの前にやってきた。その男の子は下を向いて1人でブランコに乗って足をプラプラさせて寂しそうにしていた。
「真白ー!ちょっとこっちに来てみな」
おばあちゃんがそう言うとその男の子はブランコから降りてトボトボと下を向いて俯きながら歩いてこっちに来た。
「真白。この子は日向って言ってね、ばあちゃんの孫だ。訳あって今日からここに住む事になったから仲良くしてやってくれるかい」
それだけ言うとおばあちゃんは家の中に入っていった。
私は緊張して胸をドキドキさせながら頑張って目の前の男の子に話しかけた。
「日向オールブライトです。お友達になって下さい」
私の声を聞いて男の子は顔を上げた。
黒い髪を所々はねさした頭に、大きな黒い瞳に、小さな顔は女の子みたいに可愛らしい顔をしていた。
そして私の言葉を聞いた男の子は最初は驚き次に嬉しそうな顔をした後、最後に泣きそうな顔をしながら私にこう言ってきた。
「ダメだよ。俺といたら一緒に苛められちゃうよ。俺の目変なんだ。ドキドキしたり悲しくなったりしちゃうと目の色がかわるんだ」
それを聞いた私は、
(そんな事ができるなんて凄い!)
と単純に驚き興奮してしろちゃんにせがんちゃったな。
「本当!?見たい見たい!見して!」
それでしろちゃんは私がいきなり近づいていっちゃったから驚いて目を大きく見開いた後、しろちゃんの瞳の色がキラキラと色々な色に変化した。
私はそれを見た瞬間に自分の今見ている世界が急激に変わった気がした。
とても澄みきった空の中を私は小さな鳥になって、ずっと先まで続いているいくつもの虹のアーチの中を気持ちよく飛んでいる。
そんな夢みたいな世界にいったような感覚になった。
だけどそんな夢みたいな世界は急に終わってしまう。
私の目の前にはしろちゃんが目をギュッと閉じて何かに怯えるように体を震わせていた。
「何で閉じちゃうの?とてもキレイだったよ?まるで空に出る虹みたい。それに私だって皆と目の色違うよ?だからお揃いだね」
私はそう言ってしろちゃんに笑顔を向けたけど、しろちゃんは驚いた顔をして右目から一筋の流れ星が通ったみたいに涙を流した。それを見た私は何か嫌な事言っちゃったのかな?とパニックになった。
「ごめんなさい!私何か嫌な事言っちゃった!?何か悲しくなる事言っちゃった!?」
「ううん違うよ。日向ちゃんは何も悪くないよ。俺....泣き虫なんだ。そんな風に俺の事気味悪がらずに優しいこと言ってくれる人ばあちゃん以外にいなかったから.....でもばあちゃんの言った通りだ。嬉しい時でも涙って出るんだ。でも俺、今日からあんまり泣かないように頑張る事にするよ。あんまり泣いてたら友達の日向ちゃんが心配しちゃうもんね」
しろちゃんがそう言って腕を振り回して私の真似してきたから私が恥ずかしさのあまり怒っちゃった。でも最後はなんだかおかしくて2人で吹き出して笑っちゃったな。
そして私としろちゃんは友達になった。
私はさっきしろちゃんが私の真似をしてきた仕返しと私がいつもママに泣いていた時にしてもらってたみたいに頭を撫でてあげた。
しろちゃんは恥ずかしがってて可愛かったな。
しろちゃんのこの時流した涙は悲しい涙じゃなかったけど私はしろちゃんに心の中をポワッて温かくして欲しかったから。
◆◆◆◆◆
私がしろちゃんと友達になれてからの日々は毎日が楽しかった。一緒に公園で遊んだり、一緒に勉強したり、喧嘩をした時もあったけどそれも含めて楽しかった。
しろちゃんと一緒にいると心が動く。
色んな感情が心から溢れてくる。
そんな日々を過ごしていた中でしろちゃんと遊んだ後の家に帰る帰り道でしろちゃんの言った一言が私の心の奥でずっと隠して、ごまかしていた気持ちを起こしちゃった。
「日向ちゃんはすごいよ。皆で鬼ごっこして躓いて転んだ時もあんなに血が出てたのに全然泣かなかったし、俺なんかちょっと悪口言われたくらいで泣いてばかりだったのに.....日向ちゃんは強いね」
「ううん.....本当にそんな事ないよ.....それよりしろちゃん!今日の晩御飯はなんだろね!?私はお鍋がいいなぁおばあちゃんの作るお鍋好きなんだぁ!それにみんなで食べるとおいしいし。しろちゃんは?」
私はそういってごまかしたけど心の中は悲しい気持ちで一杯になって溢れそうになっていた。
私は全然強くない.....
パパとママの事を考えるだけで胸が張り裂けそうになる.....
でもパパとママのおまじないの言葉を必死に心の中で繰り返して笑顔を作ってた。パパとママの言った通り笑顔でいたら嬉しい事、楽しい事をたくさん運んで来てくれた。
しろちゃんとも会えたし友達もいっぱい出来た。だけどそれでもパパとママが居なくなった悲しみは消えてくれない。
私は1人なんだって思い知らされる。
◆◆◆◆◆
その日の夜。私はパパとママがいなくなってから今まで1度も泣いた事がなかったけどその日は心が苦しくて、悲しくて、遂に泣いてしまった。寝ている皆を起こさない様に、心配をかけない様に、布団を頭から被って必死に声が出ないように泣いた。だけど1番見られたくない人に、1番心配をかけたくない人に見られちゃった。
「日向ちゃんどうしたの?怖い夢でも見ちゃった?」
「.....しろちゃん?.....ううん何でもないよ。私は大丈夫だから」
私はしろちゃんに心配をかけたくなかったから笑顔でそう答えた。だけどしろちゃんには私が無理して笑ってるのが分かっちゃうみたい。
心が悲しい気持ちで壊れちゃいそうなのが分かっちゃうみたい。
しろちゃんはその小さな手を私の頭に乗せて優しく撫でてくれた。
「日向ちゃんどう?ちょっとは心の中ポワッする?温かくなる?俺なんかじゃ日向のお母さんみたいには出来ないと思うけど.....」
しろちゃんがそんな事を言うから私は、そんな事ない!ママに撫でられているみたいだよ!って大声で言いたかった。けど皆も寝てるし私も泣いてたからしろちゃんの胸に顔を擦り付けて必死に左右に振って違うよって伝えた。
私は涙が収まった頃に何で泣いちゃったのかしろちゃんに話した。
パパとママがいなくなっちゃって不安で不安で仕方ないこと。
私はこの世界で1人なんじゃないかって思っちゃう事。
そしたらしろちゃんはとっても優しい顔でこう言ってくれた。
「大丈夫だよ。日向ちゃん。俺がいるから。ずっと一緒にいるから。それにばあちゃんもいるしさ。だから1人で泣くことないんだよ。また恐くなったり泣きそうになったら言って?俺がちょっとでも日向ちゃんに心の中ポワッってしてもらえるように頑張るから。」
私はしろちゃんにこう言われて嵐のように私の心の中を暴れまわってた悲しい感情が静かに収まっていく感じがした。
私は1人じゃないんだ。
私にはしろちゃんがいるんだってそう思えた。
それと同時に悲しみの感情が収まっていった後に温かい感情が心の中で灯ったような気がした。
パパとママの事を思う気持ちとは違う種類の温かい気持ち.....
そっか私の中でしろちゃんってこんなにも大事な人なんだな.....
私の心の中にずっといてくれるんだな.....
そう思うとついしろちゃんに甘えたくなっちゃった。
「しろちゃんありがとう。ママに撫でてもらってるみたい.....今とってもポワッってしてるもん。うん.....大丈夫.....しろちゃんがいれば全然恐くならない。1人ぼっちだと思わない.....でも.....もうちょっとだけナデナデして?」
私がそう言うとしろちゃんは照れて頬を染めながらも私をずっと撫でてくれた。私はしろちゃんとずっとこうして2人で一緒にいたいなぁと思った。
だけどある人が私達の所に来たことで無理になっちゃった.....
◆◆◆◆◆
12月の雪がしんしんと降っていたある日。
その人はやってきた。
その人は黒いスーツ姿にライオンみたいな顔をしたすっごく恐そうな人だった。
その人がおばあちゃんに案内されておばあちゃんの部屋に入っていき、誰だろう?と思っていたらその後にしろちゃんがやってきて入っていってしまった。
私はいけないことだと思ったけどついつい気になってドアの前で話を聞いてしまった。
何でもその人は黒ノ栖勇一郎さんといって黒ノ栖カンパニーという子供の私でも知ってるおっきな会社の社長さんみたい。黒ノ栖さんは自分の後に会社の社長さんを出来そうな人を探していて、その子が立派な社長さんになれるように色々な勉強を自分の所で教える為に世界各地の孤児院とかを回ってその社長さんになれそうな子供を探してるみたい。
黒ノ栖さんはしろちゃんの事はあらかじめ色々調べてるみたいで、そんなしろちゃんにこう質問していた。
「色名さんに聞かせてもらったが君は勉強にスポーツに熱心に取り組んでいるようだね?君くらいの年頃の子供は遊びたい盛りだろうに、何故だ?」
確かにしろちゃんは何年か前から勉強にスポーツに熱心に取り組むようになった。学校から帰っても遊んでくれる事が少なくなったし、夜遅くまで勉強をしてる日も多くなった。その上におばあちゃんに頼みこんで近所の剣道や空手の道場にも通わせてもらってた。私も何でだろう?とドア越しに思っていたら、しろちゃんがびっくりすることを黒ノ栖さんに話し出した。
「えっと.....守りたい奴がいるんです。そいつはいつも自分より周りを優先して自分の事は二の次で、自分自身が辛くて苦しい時に周りに心配かけないように夜に1人でコッソリ泣くようなやつなんです。だからせめて俺くらいはそいつの負担にならないように、出来たらそいつの辛くて不安で泣きそうな時に支えてられるように強くなりたいと思ったんです。でも俺馬鹿だから.....こんなやり方しか思いつかなくて.....すいません何か上手く言えなくて」
その言葉を聞いて私は石像の様に固まってしまった。
確かに今思うとしろちゃんが色々と頑張りだしたのは、私が夜に泣いてしまった日から少ししてからだ。私はそんなしろちゃんに構ってくれなくて文句を言ったりした時もあった。それなのに私は自分の事ばっかりでしろちゃんがどんな気持ちでそんなに頑張ってるのか考えた事がなかった。そして私はしろちゃんに頼ってばかりいる情けない気持ちとかしろちゃんがいなくなっちゃうかもしれない苦しい気持ちとかが心の中でぐちゃくちゃになってその場から逃げるように自分の部屋に戻った。
◆◆◆◆◆
夜になって他の子達が遊んだり勉強したりしている中で私はしろちゃんが話があるからと庭のブランコの前まで呼び出された。そこでしろちゃんは私が昼間の話を聞いて元気のない私を心配してくれた。けど私は心の整理がついてなくてついつい怒鳴っちゃった。しろちゃんも初めは驚いてたけどすぐに私が2人の話を聞いてたのに気づいたみたい。
「もしかして聞いてたのか?俺と黒ノ栖さんの話.....」
「うん.....おばあちゃんの部屋に怖い顔した知らないおじさんが入っていったから誰だろうと思って見に行こうとしたらその後しろちゃんが来て.....」
私が正直に話すとしろちゃんは真剣な表情になってしろちゃんの気持ちを話してくれた。
その話を聞いて私はウソつき!ずっと一緒にいてくれるって言ったのに!とか別に強くならなくてもいいよ!とかそんな自分の身勝手な言葉が出そうになる。でもしろちゃんがよく考えて、覚悟をして決めたんだっていうのはしろちゃんの表情を見て分かったし、元はと言えばパパとママが死んじゃってそれを乗り越えられなかった私が原因でしろちゃんは大変な道を進もうとしている。そんな弱くて覚悟のない私にはしろちゃんを止める資格がなかった。
だから私はこの時に決めた。
しろちゃんが心配しなくていいように、しろちゃんと同じくらい強くなってしろちゃんにふさわしい女の子になろうって。
だけど.....やっぱりしろちゃんと離ればなれになるのは寂しいし、苦しい。
だからそんな弱い私はしろちゃんにちょっとだけ元気を分けて貰うようにお願いした。
「正直しろちゃんが居なくなったら寂しいし、不安だけど.....しろちゃんが頑張ってるんだって思ったら私も頑張れる.....でも私は弱いから一人だとすぐ泣いちゃうから.....しろちゃん。迎えに来てくれるまで頑張れる様にしろちゃんの元気ちょっとだけ分けて?」
そして私は目を閉じて顔を上に少し向けて唇を少し前に突きだした。そして私が自分でも分かるくらい顔を赤くしながら待っているとおでこに柔らかく温かい感触があった。でも私がして欲しかったのは違う所だったからついついイジワル言っちゃった。それでお互い恥ずかしさを誤魔化すように騒ぎながら初めて会った時みたいに2人で笑いあった。
◆◆◆◆◆
そして時間はあっという間に経ち、私達が小学校を卒業を迎える日が来てしまった。
学校の友達と卒業を祝いあったその後、二人で帰った桜並木道。
学校の校門まで来たところで黒ノ栖さんが待っていた。
しろちゃんは今から大変な所に行くのに「ちょっと行ってくるよ」なんて近くの公園に行くみたいな感じだったからちょっと可笑しかったな。だから私も「行ってらっしゃい」っていつもの感じで送り出した。
でも.....私はこれでしろちゃんにずっと会えなくなるなんて思いもしなかったよ.....
次回金曜日更新予定です