プロローグ2:真白の小さな決意
中々進みません。
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8/30加筆、修正しました。
日向が来てから、日向と俺が友達になってからの俺の日常は劇的に変わった。
俺の周りにはたくさんの人が集まるようになった。
いや違う.....
いつも俺と一緒にいる日向に集まってきているんだ。
日向は人懐っこいし、面倒見もよく、とても明るい。日向と一緒にいると、不思議と心の中が陽だまりの中にいるような、とてもあたたかい気持ちになる。加えてあの天使のような誰が見ても美少女にしか見えない容姿なので、孤児院の子供達はもちろん近所の俺達と同じくらいの年齢の子供達も集まってきて、みんなと友達になっていた。
だけど最初の頃、子供達は俺が一緒にいる事が分かると俺だけを除け者にして遊ぼうとしていた。
それを見た日向が珍しく怒った。
「仲間外れはダメだよ。皆で遊ばないと楽しくないでしょ!それに私はしろちゃんと1番遊びたいの!」
頬をぷく~っと膨らまして皆にそう言い聞かせていた。
それから最初は皆日向が言うからしぶしぶといった感じで俺と遊んでいたけど、しばらく遊んでいるうちに皆も俺と普通に接してくれるようになって、俺も皆と友達になれることができた。
皆と遊んだ後、空が茜色に染まっていく帰り道に俺は日向に今日の事のお礼を言った。
「日向ちゃん今日はありがとね。日向ちゃんのおかげで皆と友達になれたよ。ありがとう。こんなに楽しかった1日は初めてだよ」
俺がペコリと頭下げて笑顔でお礼の言葉を口にする。
「ううんそんな事ないよ。しろちゃんは優しくてカッコいいから皆しろちゃんの事をよく知ったら私なんかいなくてもすぐに友達になれたよ」
そう言って日向は灯りがポッとついたようにはにかんだ。
「ううん.....そんなことない。やっぱり日向ちゃんはすごいよ。
皆で鬼ごっこしてた時も躓いて転んであんなに血が出てたのに全然泣かなかったし、俺なんかちょっと悪口言われたくらいで泣いてばかりだったのに日向ちゃんは強いよ」
「ううん.....本当にそんな事ないよ.....
それよりしろちゃん!今日の晩御飯はなんだろね!?私はお鍋がいいなぁおばあちゃんの作るお鍋好きなんだぁ。それに皆で食べるとおいしいし。しろちゃんは?」
「俺は何でもいいよ。ばあちゃんのご飯どれもおいしいし」
「それもそだね~」とたわいもない話をしながら帰った帰り道。
俺は一瞬見せた日向のあの笑顔がしばらく頭から離れなかった。
顔は笑っていたけれど俺には日向が泣いてるように見えたんだ。
◆◆◆◆◆
その日の夜。
全てのものが寝静まったような夜の中で誰かがすすり泣く声が聞こえた。
誰が泣いてるのか周りを見回してみても他の子供達が起きている様子はなかった。しばらく聞き耳をたてて耳を澄ましていると、その泣き声は真下から聞こえてきている事に気が付いた。
俺は身を乗り出して下を見てみると日向が布団を頭まで被って声を噛み殺す様に泣いていた。
俺は下に降りて日向のベッドまで近づいて行った。
「日向ちゃんどうしたの?怖い夢でも見ちゃった?」
「.....しろちゃん?
ううん何でもないよ私は大丈夫だから」
日向がそう言うと俺に初めて会った時みたいに笑顔で答えた。
でもあの時の笑顔とは全然違った。
俺に初めて見せてくれた笑顔は蕾の花がパァっと開くような、その笑顔を見た瞬間にこっちまで笑顔になる。そんな笑顔だったのに今は顔は笑っていても、あの時思った絵本に出てくる天使のような笑顔には俺には見えなかった。
だけど俺には彼女が何故泣いているのか分からなかったし、どうすれば今の悲しく辛い気持ちを無くしてあの天使の笑顔をしてくれるのか分からなかった。だから俺は日向と初めてあったあの日、日向がしてくれたように俺の心を落ち着かせてくれたように、日向の頭に少し震える自分の小さな手を置いてゆっくりと出来るだけ優しく撫でた。
「日向ちゃんどう?ちょっとはポワッてしてきたかな?俺なんかじゃ日向のお母さんみたいには出来ないと思うけど.....」
俺がそう言うと日向は瞳を大きく見開いていきなり俺の胸に飛び込んで来て、顔を擦り付けながら首を左右に振っていた。俺はいきなりの事で驚いて日向にされるがままだった。そして日向はゆっくり顔をあげると不安そうな顔で俺にこう言った。
「ううんそうじゃないの。しろちゃんがママの事言うからびっくりしちゃって.....
実はパパとママの事考えてたの.....
どうしてパパとママは私を置いて天国にいっちゃったのかなって。
私はこのままずっと1人なのかなって。
そう考えたら段々恐くなっちゃった。ごめんねしろちゃん起こしちゃって」
日向はそう言うと俺に申し訳なさそうな顔をしていた。
俺は馬鹿だった。勘違いしていたんだ。
日向は俺なんかと違って両親がいなくてもいつも笑顔で、みんなに元気をあげてる心の強い、物語に出てくるような天使のような奴だと勝手に思い込んでた。でもそうじゃなかった。
日向も両親がいなくなって、不安で不安でしかたなくて、この世界に1人ぼっちだと思いこんで、心が壊れそうになって、ずっと1人で怯えていたんだ。
俺は日向の今の辛い気持ちを聞いてこう答えた。
「大丈夫だよ日向ちゃん。俺がいるから。ずっと一緒にいるから。それにばあちゃんもいるし、だから1人で泣くことないんだよ。また恐くなったり辛くて泣きそうになったら言って?俺がちょっとでも日向ちゃんにポワッてしてもらえるように頑張るから。」
俺はそう言いながら日向の頭を撫でてやると、日向は撫でられて気持ちがいいのか目を細めていた。
「しろちゃんありがとう。ママに撫でてもらってるみたい.....今とっても心の中がポワッってしてるもん。
うん.....大丈夫。
しろちゃんがいれば全然恐くならない1人ぼっちだと思わない.....
でも.....もうちょっとだけナデナデして?」
日向が泣いたばかりの潤んだ瞳で上目遣いでそうお願いしてきたので、俺はそんな日向を見てドキドキして、(絶対目の色変わってるよ)と自分で自覚しながら俺はもう一度日向の頭を撫で始めた。
すると日向は「えへへ~」とマシュマロみたいな柔らかそうな頬を緩ませて俺の胸に預けてきた。
俺はそんな日向を撫でながらどうすれば日向が笑顔でいられるか、子供ながらに足りない頭で考えるようになる.....
次回金曜更新予定です