プロローグ:真白と日向
今日から週1くらいのペースで書いていこうと思います。どうか生暖かい目で見守ってやって下さい笑
3/12加筆、修正しました
3/25加筆、修正しました
4/1加筆、修正しました
4/8加筆、修正しました
4/18加筆、修正しました
8/21加筆、修正しました。
「アリス~そこのお菓子取ってくれ~」
「嫌ですよ今ボス戦で忙しいんですから」
ゲームやマンガ、お菓子等があちこちに散乱する部屋の一室。
2人の少年と少女がゴロゴロと転がりながらゲームを楽しんでいた。ここだけ見ればよくある気心の知れた2人が部屋で遊んでる風景だろう。
ただ1つ違うとすればそこは草木が鬱蒼と生えまくり、まず地球ではお目にかかれない獣達が蔓延る大森林にポツンと立つ木造の一軒家の中だという事。その場所が地球ではない異なる世界という以外は。
「真白さん今日も冒険行かないんですか~?」
「明日からでいいんじゃね?」
◆◆◆◆◆
いつもの朝、いつもの景色、何も変わらないいつもの日常、そんな世界で俺は生きていた。
俺の人生はあんまりいいもんじゃなかった。
そりゃいいことも沢山あったよ。可愛い幼馴染みもいたし、よく近所の奴や学校の奴には俺の変な体質のせいで苛められたりした時もあったけど、最後には仲良くなれたし、だけど何事にも中途半端でビビりで泣き虫で、そして弱い自分のせいで最後は全部台無しになったよ。
この世界での俺の人生は真っ黒だった.....
思えば赤ん坊の頃から終わってたなぁ
◆◆◆◆◆
どっちが空か地面か分からないくらい降り積もった雪の中に赤ん坊の俺はいたらしい。
そこにいつもの様に新聞を取りに来た孤児院をしているばあちゃんに拾ってもらった。
そう。俺は捨て子だった。あり得なくない?そんな雪がシャンシャン降りまくってる中、自分の子供を捨てるか普通?もうちょい暖かくなってからでもよくね?笑
まあ唯一幸運だったのはその梅干しみたいなしわしわの顔をしたばあちゃんがよくしてくれた事だ。 そのばあちゃんは俺によくこう言って聞かせてくれた。
「あんたわねぇ真っ白な世界から私の所に来てくれたから真白って名前なのよ。だからあなたが生きる世界はどんな色にも染まるの。一体真白が生きていく世界はどんな色になるのかしらねぇ」
そうやっていつも俺を撫でてくれていたっけ。
でも皆が皆ばあちゃんみたいに優しい人間ばかりじゃなかった。
◆◆◆◆◆
俺が小学生に上がったくらいの頃、俺は皆とは違う所があるという事に気づいた。
俺は少々変な体質で気持ちが昂ったり、落ち込んだりすると、瞳の色が変わるのだ。
孤児院にも他の子供達がいたがその頃は俺より小さな子供達しかいなくて、特に気味悪がられる事はなかったので、孤児院の中では問題なかった。だけど俺が小学校に上がってからその状況は変わってきた。その色んな色に変化する俺の瞳を見た近所の子供達や学校の奴等によく苛められた。近所の子供達は俺と同世代の子供達が多く、自分達と違う事が気味悪いのだろう。
「お前なんで目の色変わるの?何なの?目だけカメレオンになっちゃったの?」
「お前捨て子なんだろ?そんな気持ち悪い目してるから捨てられたんじゃないの?」
「そのうち体の色も変わってくんじゃないの?ギャハハ!」
「う~」
てな具合に俺はよく近所のクソガキ共に泣かされていた。相手に言い返して拳の1つでもお見舞いしてやればよかったが、当時の俺は人見知りが酷く気が弱かったので相手に言い返す事も殴りかかる事もできなくてよく泣いてた。そんな時だ。俺がアイツと出会ったのは.....
◆◆◆◆◆
桜が散り、徐々に夏の気配が近づいてきたある日。ばあちゃんが1人の女の子を連れてきた。
そいつはばあちゃんの孫らしく両親が事故で死んでしまい、ばあちゃんに引き取られたそうだ。
そいつは俺と同じで今年小学校に上がったばかりで、母親が日本人で父親がイギリス人のハーフらしく、髪は金髪で頭の上の方で小さくツインテールにしていて顔を動かす度にそのツインテールがピコピコ動いていた。瞳はチワワみたいにくりっくりで海のような真っ青な瞳、唇は赤い花びらがのったような薄い唇でこっちを見てニッコリ笑っていた。そして俺を見てこう言ってきた。
「日向オールブライトですお友達になって下さい」
「天使だ.....」
俺はその日向の甘く澄みきった声を聞いて、今まで皆に苛められて荒んでいた氷の様に凍りついている俺の心が太陽に照らされてゆっくりと溶けていき、やがてポカポカと胸の真ん中からゆっくりと暖まっていく。そんな感じがした。
俺は彼女の事を天使かと思った。って言うか小声で呟いてた。
俺はこんな優しい言葉をばあちゃん以外にかけてもらった事がなかったし金髪碧眼の女の子なんて見たことがなかった。それによくばあちゃんが読み聞かせてくれた本に出てくる天使によく似ていたのだ。だけど俺は日向の申し出に顔を歪ませて俯く。
「ダメだよ俺といたら一緒に苛められちゃうよ。俺の目変なんだ。ドキドキしたり悲しくなったりしちゃうと目の色がかわるんだ」
すると日向は大きく目を見開いて俺にずいっ!と近づいてきてお互いの鼻と鼻がくっつくぐらい顔を近づけてきた。
「本当!?見たい見たい!見して!」
そんな事を言いながらその日向が急に近づいて来たもんだから俺はパニックになり、瞳の色が目まぐるしく変化する。そして急いで目をぎゅっと閉じると、
(絶対に嫌われた。気味悪がられた)
俺は思った。今までがずっとそうだったから.....
だけど日向から発せられた言葉は、俺が思っていた事とは全然違うものだった。
「何で閉じちゃうの?とてもキレイだったよ?まるで空に出る虹みたい。それに私だって皆と目の色違うよ?だからお揃いだね」
日向はそう言ってさっきと変わらない笑顔でこっちを見ていた。
俺はその瞬間に涙が出た。
多分その時俺は、あれだけ皆に気味悪がられて、自分ですら嫌いだ嫌だと思っていた瞳を、日向はキレイだと言ってくれた事が、俺の存在を認めてくれた事が嬉しくて心から安心してしまってつい泣いてしまったんだろうと思う。
俺は存在してていいんだと。
ここにいていいんだと。
だけど今度は日向が俺が急に泣いたもんだから自分が何か悪い事を言ったと思って逆にパニックになってたっけ。
「ごめんなさい!私何か嫌な事言っちゃった!?何か悲しくなる事言っちゃった!?」
そう言って日向は手を上下にバタバタ振り乱してあわあわしだした。
「ううん違うよ。日向ちゃんは何も悪くないよ。
俺....泣き虫なんだ。
そんな風に俺の事気味悪がらずに優しいこと言ってくれる人ばあちゃん以外にいなかったから.....
でもばあちゃんの言った通りだ嬉しい時でも涙って出るんだ。
でも俺、今日からあんまり泣かないように頑張る事にするよ。あんまり泣いてたら友達の日向ちゃんが心配しちゃうもんね」
俺がさっきの日向の真似をして腕を振り回しながらいたずらっ子のように笑うと日向が「も~っ!」と頬を餅のようにぷくっと膨らませると、ぷっと2人で吹き出して笑った。
「でもそっかよかった。じゃあこれからよろしくお願いします。しろちゃん」
そう言うと日向は俺の頭を細くて小さな手で撫で始めた。
「ちょっと日向ちゃん恥ずかしいよ」
日向が「さっきのお返しだよ」とペロッと小さな舌を出して笑顔になった後、眉を少し下げ寂しそうな顔をしてポツポツと話始めた。
「お母さんがね.....私が泣いてる時とかこうやって撫でてくれたの。そうしたらねだんだん胸がポカポカしてきて泣き止んじゃうの。それでね.....温かい気持ちになるの.....しろちゃんもポワッってしてきた?」
「うん.....何だか胸の奥の方でじんわり温かいのが広がっていく感じがする.....って言うかそのしろちゃんって言うのも恥ずかしいよ.....」
「え~何で可愛いのにワンちゃんみたいで」
そう言いながら日向は俺の頭を撫で続けていた。
そして俺には日向と言う友達ができたんだ。
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