第6話 獣人男の移動
「ゴルゴム。それそろあの時期だな」
「そうだな。楽しみだ」
俺とパルメは、行きつけの飯屋でダベっていた。
「なになに? なんの話?」
そこに割り込んできたのはアテネ。すっかり町に馴染んで、むしろ懐の深さと明るさで町の人気者になっている。
「ああ。港街に行って生の魚を食うんだよ」
「生のお魚? 美味しいの?」
「俺たちは旨いと思うけど……お前はどうなんだろうな?」
「うーん。ミミズより美味しい?」
「あっ……」(察し)
まあ、時折重い話題をさらっと出してくるが。
「アテネ。お前も行くか?」
「うん! 楽しみ!」
だが、こうして屈託なく笑う姿を見ると、つい顔がほころんじまう。
「ゴルゴム。港街ってどう行くの?」
「近くの街から列車に乗って、王都の駅を経由して……6時間くらいだな。8000Gほどかかる」
「んー。まあ最近ゴルゴムたちと稼いできたからね。8000Gくらいは出せるよ!」
そう。こいつはそこそこ戦力になるので、一緒に魔物狩りのバイトをしている。一緒だと戦闘時間が短くなるため、頭割りでも少しだが稼ぎが増えた。
「じゃあ、3日後に出るか。移動ついでにできるバイトがないか探しとく」
「わかった」
「りょーかい!」
そして3日後。町の奴らから見送られつつアテネは旅立った。
「ところで。ゴルゴムもパルメもずっと宿にいたけど、家とかないの?」
「ん? ああ。俺とゴルゴムは流しでフリーターやってるのさ」
「ふりーたー?」
「いろんなとこで魔物を退治しながら放浪してるってこと。カニバルはどこも強い魔物が溢れてるからそうそう食いっぱぐれないしな」
「じゃあ私もふりーたーになる!」
「おう。頼りにしてるぜ!」
街で列車に乗っても、港街についても、アテネは大はしゃぎだった。
「ゴルゴム! パルメ! この『さしみ』って美味しいね!」
「ああ。この季節の魚は特に旨い」
「本当に1年これが楽しみなんだよなー」
刺身も気に入ってもらえたようで何よりだ。