第4話 王の誤り
俺、エール・ツベルクリンは親友のウカイ・マギカボックスに何も言えないでいた。
今日の夕方ごろ、学園から帰ってきた第3王子ホルテンジアからアテネ嬢を追放処分にしたという話を聞き、即座にウカイに連絡した後に息子を締め上げて洗いざらい吐かせると、よりにもよって第1級。それももう、王族専用の転移門を使い国境都市に送ってしまったという。慌てて第2王子ルクソールに確認に行かせると既に獣人国に送られた後。ルクソールの親友であり、彼女の兄でもあるガリアも合わせ4人で集まるも、2人の重い雰囲気に声が出なかった。
唐突に、ルクソールが頭を下げ。涙をこぼし出す。
「2人とも……すまない。俺がホルテンジアに、いやせめて転移門に注意を配っていれば……」
「いや。俺のせいだ。俺は妹が王宮に来たのに気付いてやれなかった!」
「だが! ホルテンジアの様子がおかしいのもわかっていたのに! 見張りだって付けられたはずなのに! 放っておいたのも俺なんだ……」
ルクソールは、そこまで絞り出すように言うと。急に顔を上げて俺を見つめる。
「そうだ! 親父、いやエール王! 俺を追放処分にしてくれ!」
言うが早いか。ルクソールが俺の両肩を揺さぶってくる。思いつめたルクソールをガリア殿が羽交い締めにする。
「落ち着け! お前が行って何になる!」
「止めるな! あの子は、アテネちゃんは俺に憧れたせいで学園なんかに入る羽目になったんだ!」
「確かにお前みたいになりたいと言っていた! だがそれがどうしたっていうんだ!」
「俺のせいなんだ! だから、だから!」
ガン、と大きな音が響く。
その音で、争っていた2人も、俺も、発生源—ウカイの方を向いた。
「……アテネは、それを望んでいない。あの子は、君が来ても喜ばない」
重く響く声に、誰もが声を挟めない。
「あの子をただ追いかけるのではない。ちゃんとこの国に居場所を戻してやって、迎えに行ってあげなくては意味がないんだ」
それを言うと、ウカイは顔を上げる。そこには、有無を言わせないほどの決意がにじんでいた。
「エール。学園は通常監視をいれられない。だが、権限を濫用した王子の見張りでねじ込めるか?」
「ああ。記録用魔道具も手配する」
「ルクソール王子。懲罰刻印の解除方法。見つけていただけますね」
「研究部門の指揮。取らせていただきます……!」
「ガリア。お前はアテネの嫌疑が晴れ次第、獣人国でアテネを迎えに行ってこい」
「任せてくれ!」
「俺は、あの小娘がぐうの音も出ないほどの証拠を揃えてくる」
目標を持った4人が立ち上がる。もう、最初の安穏とした空気はなく、迎えるための闘志が燃え上がっていた。