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3.11。あの日、あの瞬間を忘れない

奇跡

作者: 雨音れいん

大きな希望も大きな絶望も抱かずに

なんとなく生きてきた日々

朝目を覚ましてその後することは

毎日だいたい同じで退屈に感じてた

それが何の前触れもなくある日突然崩れてしまうと

誰が知っていただろう

法と秩序で守られ戦争もないこの国は安全そのもので

平和に慣れすぎて危機の意識から遠ざかっていた

明日は必ず来るという保証は

本当はどこにも誰にもないのに


失ってはじめて気付く尊い存在

永久にやり直せない過去

口を開けた心の深い傷痕



 今ここに居る奇跡を繋いだ手の温もりから感じたい

 明日消えてしまうと知ってたら

 その手を離しはしなかっただろう




あの長い一瞬に浮かんだのは君の心配ばかりで

どうかあの人を助けてください

あの人を守ってくださいと祈り続けてた

また会えなくなるなんて思ってなかったから別れるとき“じゃあね”としか言わなかった

それが最後に交わした言葉じゃあまりに悲しすぎるよ



 今ここに居る奇跡を君を抱きしめて確かめ合いたかった

 あの日日常が崩壊してしまうと知ってたら君と離れたりはしなかっただろう




 無数の瞬きが天に上り

 闇に沈んだこの国を照らした


 いかないで

 ぼくを置いていかないで

 その願いはもろく砕け

 君は空の瞬きになった



 今ここに君が居ない

 今ぼくはここに居る

 残酷なその運命を何度も呪った

 もしあの日 あの時……その憤りは行き場を失うだけ

 どんなに悔やんでも君はもう還っては来ないから



 今あの日と変わらぬ日常が戻り

 昼も夜も明るい街は人で溢れてる

 人は何故悲しみを忘れていくのだろう

 いつまでも過去を振り返ってばかりじゃ前に進めないとはわかっているけど



 今ここに居る奇跡を噛み締めてぼくは空を仰いだ

 あの碧空の彼方に君がいた過去を見て



風が吹いて


雲が流れ


切れ間から射す光が地上のぼくを照らす


ぼくは時の流れを感じた



 今ここに居る奇跡を他人ひと他人ひとの心を繋いだ日々を忘れはしない

 明日消えてしまうとしても君に恥ずかしくないように

 ぼくは一日一日を大切に刻んでいくよ






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