第51話:筋肉少尉、爆誕!?(と、やっぱり台無しな表彰式)
マナ・イーターの群れを「物理」で壊滅させたニュースは、司令部を驚愕させました。
しかし、魔法を一切使わない男をいきなり高位に据えるわけにもいかず、下された辞令は現実的なものでした。
「ディエス・フォン・バルカス。貴官を本日付で**『特別独立遊撃小隊』の小隊長、少尉**に任命する」
王都の練兵場。ロジャー大尉が、苦笑いを浮かべながら任命状を手渡しました。
「ガハハ! 少尉か! ちょうどいい、まずは俺の岩石のような上腕二頭筋を、部下たちにじっくりと拝ませてやるぜ!」
「……少尉、ですか。一番下の将校ランクですね。でもディエス様、小隊長ということは、貴方の『理不尽な命令』に従わなきゃいけない犠牲者がついに公的に決まったということですよ」
漆黒の髪を揺らすリナが、ディエスのはち切れそうな軍服の袖を整えながら、呆れたようにため息をつきました。
その横では、銀髪の従者エルザが、主の丸太のように太い首周りを見上げて満足げに頷いています。
「……ディエス様。……少尉、かっこいい。……部下、まずは5人。……全員、筋肉ダルマにする」
「エルザさん、嫌な予言はやめてください!」
リナのツッコミが響く中、バルトス大尉が小声で付け加えました。
「バルカス少尉。君の部隊は、魔法が効かない特殊事案のみを扱う『掃き溜め』だ。部下は5人しかいないが、全員が軍の鼻つまみ者だ。……それから、君の暴走を記録し、事務的に処理する副官としてハンス准尉を付けておく。彼は魔力が低くて閑職にいたが、頭だけは切れる男だ」
「ガハハ! 副官か、いいじゃねぇか! 5人の部下と1人の副官、合わせて6人の筋肉予備軍だな!」
ディエスは、目の前に並んだ5人の「もやしっ子」な魔導士たちに向き直りました。
彼らは、目の前にそびえ立つ重戦車のような肩幅と、鋼鉄の甲冑のごとき厚みを持つ胸板を誇示する大男に、完全に腰が引けています。
「いいか野郎ども! 魔法は杖で振るもんじゃねぇ、大胸筋で絞り出すもんだ! 今日からお前らの杖は、全部重さ十キロの『鉄の杖』に交換だ! 腹筋が割れるまで飯はプロテインのみだと思え!」
「「「「「ひ、ひぃぃぃぃぃっ!!?」」」」」
悲鳴を上げる部下たちを尻目に、ディエスは丸太のような太い腕で力こぶを作り、空に向かって高笑いしました。
魔法軍の歴史に、最も暑苦しく、最も「物理」な最小単位の部隊が誕生した瞬間でした。
【参考:王国魔法軍の階級序列】
(上に行くほど偉い)
軍団長
副軍団長(2名)
将軍
大佐 / 中佐 / 少佐
大尉(中隊長・百人規模)
中尉
少尉(小隊長・最小の指揮官) ← ★現在のディエス
准尉(ベテラン・専門職) ← ★現在のハンス
曹長 / 軍曹(下士官)
兵長 / 二等兵(一般兵)←他の小隊員、新兵




