第48話:王国魔法軍、入隊初日の洗礼
ついにこの日がやってきました。
俺、ディエス・フォン・バルカスは、黒髪のリナと銀髪のエルザを従え、王国魔法軍の駐屯地の門をくぐりました。
「いいですかディエス様。魔法軍はエリートの集まりです。周りは全員魔法使いなんですから、筋肉で解決しようとしないでくださいね!」
リナがキレながら俺のはち切れそうな軍服の袖を引っ張ります。
その横では、銀髪のエルザが周囲を警戒しつつ、俺の背中を見つめていました。
「ガハハ! 分かってるって。俺は今日から『魔法使い』としてやっていくんだ」
俺は右手の指に光る、魔防変換の指輪をさすりました。
これは、受けた物理的な圧力を魔法防御に変換するという、俺のためにあるようなレアアイテムだ。
「お前たちが新兵か。私は教官のロベルトだ」
現れたのは、インテリそうな眼鏡の男でした。
彼は俺の丸太のような太い腕を軽蔑するように一瞥すると、冷たく言い放ちました。
「魔法軍において、筋肉など無価値だ。まずは基本の『魔力障壁』を見せてもらおう。私の魔法を、魔力の壁で防いでみろ。できないなら即刻クビだ」
ロベルト教官が杖を掲げると、鋭い氷のつぶてが俺に向かって放たれました。
「……よし、今だ!」
俺はあえて指輪をはめた拳で、己の巨大な胸板を「バチィィン!」と力いっぱい叩きました。
その瞬間、指輪の効果が発動! 俺の筋肉の物理防御が、そのまま強力な魔法防御へと変換されます。
ガキンッ!!
魔法の氷が俺の胸に直撃した瞬間、目に見えない「何か」に弾かれ、粉々に砕け散りました。
「な……!? バカな、生身で防いだとでもいうのか!?」
「ガハハ! 目が悪いな教官。今のが俺の編み出した、最新の『魔力障壁』だぜ!」
俺は分厚い胸板をピクピクと躍動させながら、平然と言い放ちました。
「筋肉を高速で震わせて魔力の膜を作ったんだ。名付けて『大胸筋バリヤー』。……いや、『魔法障壁(物理)』だな!」
適当なことを言うディエス。
「き、筋肉を震わせて魔力だと!? そんなデタラメな魔法理論があるか!」
ロベルト教官が顔を真っ赤にして叫びますが、目の前で魔法が弾かれたのは事実です。
「……教官。……ディエス様の言う通り。……今のは、高度な魔法。……見えなかったの?」
エルザが冷ややかな視線で追い打ちをかけます。
彼女は俺が指輪を使ったことを知っていますが、主の「魔法使いだと言い張る」という方針に全力で乗っかったのです。
「もう! ディエス様! 指をそんなに勢いよく胸に叩きつけたら、普通の人は骨が折れますよ! そもそも、それが魔力障壁だと言い張るのは無理がありすぎます!」
黒髪のリナが頭を抱えてツッコミを入れますが、俺は意に介しません。
「いいか、もやしっ子ども! これが俺の『筋肉魔法』だ! 文句があるなら、俺の大胸筋を貫いてみろ!」
魔法を信じるエリートたちの前で、俺は高らかに笑いました。
王国魔法軍。俺の筋肉が「最強の魔法」として認められるまで、この茶番は続きます。




