第45話:17歳 伝説の卒業式(とはじけ飛ぶ制服)
ついに卒業式当日。17歳になった俺の体は、この数年間の「自分への追い込み」によって、もはや生物としての限界を超えようとしていました。
「ディエス様……。いい加減にしてください、その**広背筋**を!」
学園の控室。黒髪のリナが、鬼の形相でメジャーを振り回していました。
俺は今日のために特注の制服を用意したはずなのですが、今、その背中が「ミシミシ……」と不吉な音を立てています。
「ガハハ! 悪いなリナ。卒業の喜びで、つい背中に力が入っちまった!」
「笑い事じゃありません! だから言ったでしょう、広背筋を意識して歩かないでと! 採寸し直す身にもなってください! 貴方が一呼吸するたびに、私の三日間の努力(お裁縫)が無に帰すんですよ!」
リナはキレながら、俺の丸太のように太い腕のまわりをバタバタと走り回って布を継ぎ足しています。
その横では、銀髪のエルザが無言で、しかしどこか誇らしげに俺の巨大な背後で直立していました。
「……ディエス様の背中……地平線みたい。……広い。……守りがいがある」
「エルザさん、見惚れてないで手伝ってください! ボタンが、ボタンが今にもミサイルみたいに飛んでいきそうですから!」
リナのツッコミが響くなか、なんとか制服に体を押し込み(物理的に詰め込み)、俺たちは式場へと向かいました。
式が終わると、勇者アリオスと聖女クレアが駆け寄ってきました。
アリオスもまた、俺の指導のおかげで、制服の上からでもわかるほど胸板が厚くなっている。
「師匠! ついに卒業ですね。俺はこれから、世界を巡る武者修行の旅に出ます!」
「アリオスくん、修行の合間には、私がしっかりプロテイン入りの聖水を処方しますからね」
クレアはすっかり「筋肉の管理栄養士」のような顔つきになっています。
アリオスは俺の手を握り、真剣な目で問いかけました。
「師匠……ディエス様は、これからどうされるのですか?」
「俺か? 俺は予定通り、王国魔法軍に入隊する。……まあ、魔法軍って名前だが、俺がやることは一つだ。魔法使いどもに『筋肉の輝き』を教えてやるのさ」
俺が岩石のような拳を突き出すと、アリオスは深く頷きました。
「魔法軍……。ディエス様が入れば、もはやそれは『筋肉軍』ですね。……俺も、師匠に負けないよう、旅先で巨岩を担いできます!」
「ガハハ! 期待してるぜ!」
リナが横で「魔法軍の予算が、全部ディエス様の食費に消えないか心配です……」と溜息をつき、エルザは「……軍の制服、もっと、頑丈に……作らせる」と決意を固めていました。
こうして俺たちは、思い出が詰まった学園を後にしました。
目指すは王国魔法軍。そこには、まだ見ぬ強敵と、さらなる高タンパクな毎日が待っているはずです。




