第43話:15歳の春、卒業(とナンパ)の季節
月日は流れ、俺はついに15歳。卒業式のシーズンがやってきた。
学園に入った頃よりも、俺の体はさらに進化を遂げていました。もはや特注の制服ですら、一度深く息を吸い込めばボタンが弾け飛ぶほどの巨体です。
「ふぅ……。このキャンパスライフも、あと少しで終わりか。そう思うと、なんだか名残惜しいな」
俺は学園の廊下で、丸太のように太い腕を組み、しんみりと呟きました。
……もちろん、名残惜しいのは勉強でも友情でもありません。この学園に咲き誇る、美しい「花々」との別れです。
「今だ。リナとエルザが、卒業の書類手続きで席を外しているこのチャンス……逃す手はない!」
俺は岩石のような大きな手で前髪をかき上げ、ターゲットを探しました。
すると、向こうからセクシーな眼鏡をかけた、魔法学担当の美人教師・マリア先生が歩いてくるではありませんか。
「マリア先生! 卒業を前に、俺の『大胸筋の鼓動』を聴いてくれませんか? 先生との別れを惜しんで、筋肉が激しくビートを刻んでいるんです!」
俺はマリア先生の前に立ちふさがり、はち切れそうな胸板をピクピクと動かしてアピールしました。
「あらディエスくん。相変わらず凄い筋肉ね。でも、その鼓動は心臓病じゃないかしら?」
「ガハハ! これは恋の病ですよ! 先生、放課後に二人きりで、筋肉の基礎構造について……いや、俺たちの未来について語り合いませんか?」
俺がこれでもかと爽やかな(つもりの)笑顔を作って口説いていると、背後に極低温の殺気を感じました。
「……ディエス様? 何を語り合うんですか? 未来? 筋肉?」
振り返ると、そこには黒髪のリナが、鬼のような形相で立っていました。
手には「退学届(予備)」と書かれた恐ろしい紙束が握られています。
「げっ、リナ! い、いや、これはだな、お世話になった先生に感謝の気持ちを伝えていただけだ!」
「感謝の気持ちを伝えるのに、わざわざ胸板をピクピクさせる必要がありますか!? 先生、すみません! この筋肉ダルマは私が責任を持って、卒業式まで鎖で繋いでおきますから!」
「ひえっ、リナ、痛い! 耳を引っ張るな!」
「黙りなさい、この絶倫ゴリラ! 貴方が目を離した隙に他の女の先生や後輩を口説き回るから、卒業式の打ち合わせが全然進まないんですよ!」
リナに耳を引っ張られ、ズルズルと引きずられていく俺。その横を、銀髪のエルザが静かに並んで歩きます。
「……ディエス様……女好き、直らない。……でも、その不潔なところも……野性的で、いい」
「エルザさん、肯定しないでください! ほら、ディエス様! 早く戻ってスクワット一〇〇〇回です! 余計な元気が出ないように絞り尽くしてあげますから!」
「ガハハ! 絞り尽くされるのは嫌いじゃないが、スクワットは別腹だぜ!」
俺はリナに怒鳴られながらも、最後にマリア先生へウインクを飛ばすのを忘れませんでした。
卒業まであとわずか。俺の「筋肉と美女への愛」は、騎士団へ行っても止まることはなさそうです。




