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第40話:公爵家からの招待状(と、筋肉のお礼)

ボリスとの騒動から数日。俺の元に、カトラス公爵家から「正式な招待状」が届いた。


「……ディエス様、これは罠ですよ。絶対にそうです。あのボリスの家ですよ? 玄関を開けた瞬間に、上から一トンの鉄球とか降ってきますよ」


リナが、いつにも増して鋭い目つきで招待状を隅々までチェックしている。


彼女は知的な雰囲気を漂わせながら、俺のはち切れそうなシャツの隙間に指を突っ込んで「ここから毒矢でも狙われるんですからね!」と真顔で警告してきた。


「ガハハ! 鉄球? ちょうどいい。最近、首の筋肉の鍛え方が足りないと思ってたんだ!」


俺は丸太のような太い腕を自慢げにむき出しにした。


その横では、銀髪のエルザが静かに剣を磨いている。


「……ディエス様の首……鉄より硬い。……でも、念のため……私が、全部斬る」


エルザの瞳は「主人の筋肉に傷をつけるものは、たとえ公爵家でも許さない」という静かな殺気に満ちていた。


カトラス公爵家の屋敷に着くと、豪華な応接室に通された。


そこで俺たちを待っていたのは、ボリスではなく、背が高く落ち着いた雰囲気の青年だった。ボリスの長男であり、次期当主の長兄だ。


「……君がディエス・フォン・バルカスか。弟が大変な迷惑をかけた。家族を代表して、深く詫びよう」


長兄は立ち上がり、深々と頭を下げた。これには黒髪のリナも「えっ、本当に謝ってる……」と目を丸くする。


「あんな愚弟でも、身内として甘やかしてしまった。普段なら父か私が見ていたのだが、魔物討伐の遠征で不在にしていてね。君が公開の場で完膚なきまでに彼の鼻柱を折ってくれたおかげで、ようやく目が覚めたようだ」


長兄は俺たちに席を勧め、上質な茶を淹れさせた。


「今は屋敷の奥で、先祖の教典を写経する日々を送らせている。……ところでディエス君、君のその肉体、ただの鍛錬ではないな? 我が領地の兵たちもそれなりに鍛えているが、君ほどの熱気を感じる者はいない」


「ガハハ! 写経もいいが、ペンを持つのと同じ数だけスクワットを混ぜるよう伝えてくれ。集中力が倍増するぞ!」


俺は岩のような大胸筋をドンドンと叩いてアドバイスを送った。長兄は苦笑しながらも、俺の筋肉をまじまじと観察し、感心したように頷いた。


「はは、検討しておこう。……さて、謝罪だけでは済まない。君の好みを調べさせてもらった。我が領地で育った最高級の赤身肉三十キロだ。今夜はこの屋敷の料理人に、君の筋肉を最も喜ばせる調理をさせよう。ゆっくりしていってくれ」


提示された大量の肉を想像し、俺の筋肉が歓喜でピクピクと跳ねた。


「さすが公爵家、話がわかるじゃねぇか! ありがたくいただくぜ!」


リナが横で「……罠じゃなくて、ただの豪華な食事会になりましたね。


でも、これで公爵家とのしがらみは消えました。ディエス様、肉に夢中でテーブルまで食べないでくださいよ!?」と鋭いツッコミを入れる。


「……ディエス様……肉を食べる姿……勇ましい。……私が、食べやすい大きさに切る」


銀髪をなびかせたエルザも、毒見と称して俺の隣をしっかり陣取っていた。


こうして、公爵家との因縁は、意外なほど温かい「肉」の饗宴によって解決したのであった。


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