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第38話:公爵家の力(※物理)


「いい加減にしろ、この野蛮な欠陥品がッ!」


学園の中央広場。全校生徒が注目する中、ボリス・フォン・カトラスが顔を真っ赤にして叫んでいた。


昨夜放った刺客たちが「ピカピカに磨き上げられた床の一部」として発見されたことに、彼はプライドをズタズタにされたのだ。


「公爵家である我がカトラス家の権威を侮辱した罪、万死に値する! 騎士団を呼べ! 貴様を今すぐ不敬罪で捕縛してやる!」


ボリスが背後の取り巻きに命じ、家紋の入った正式な「差し押さえ書」を突きつける。


それは家柄の力を利用し、ディエスを学園から追放し、監獄へ送るための卑劣な「公的暴力」だった。


「ガハハ! 権威だの不敬だの、相変わらず口が回るなぁ、ボリス」


ディエスは、周囲を囲む武装した家の私兵たちを無視して、一歩前に出た。


その瞬間、ミシミシッと地面が鳴り、空気が重くなる。


「だが、お前が突きつけているその『紙切れ』……。俺の広背筋プライドに言わせれば、少しばかり強度が足りねぇな」


「何を……! ひっ!?」


ディエスがボリスの手から差し押さえ書を奪い取ると、それを両手の指先だけでギュッと握り潰した。


紙は圧縮され、一瞬で硬い弾丸のような塊へと変わる。


「紙の力で人を動かそうってんなら、せめて俺の指圧に耐えられる紙を持ってこい。お前の家の『重み』ってのは、この程度か?」


「ふ、ふざけるな! お前たち、何をしている! その男を叩き伏せろ!」


ボリスの命令で私兵たちが一斉に斬りかかる。


だが、ディエスは動かない。ただ、大胸筋をバクン! と一回躍動させただけだ。


「……ふんぬっ!!」


凄まじい「筋圧」が衝撃波となって全方位に吹き荒れた。


斬りかかった兵士たちの剣が、ディエスの筋肉に触れる前に**パキンッ!**と音を立てて砕け散る。彼らは風圧だけで数メートル吹き飛び、広場の壁に綺麗に等間隔でめり込んだ。


「ば、馬鹿な……。剣が通じないだと!? どんな魔法だ!?」


「魔法じゃねぇ。これは『自己研鑽ワークアウト』という名の真実だ」


ディエスは震えるボリスの肩に、岩のような手を置いた。


それだけでボリスの膝がガクガクと折れ、彼は公開の場で地面に這いつくばる形になる。


「いいかボリス。家柄なんてのは、先祖が担いできた『重荷』だ。お前はそれを背負ってるんじゃねぇ、その重みに潰されてるだけだ。重荷を背負う筋力もねぇ奴が、他人の人生を左右しようなんて、百キロ早ぇんだよ」


「……あ、あ……」


全校生徒の冷ややかな視線がボリスに刺さる。


かつて「名門の末っ子」として恐れられていた面影はどこにもない。


そこには、圧倒的な「個」の力の前に、己の無力さを晒し者にされた惨めな少年がいるだけだった。


「ディエス様、いい加減にしてください。公開処刑の時間が長引くと、お昼のプロテイン摂取時間がズレてしまいます」


リナが背後で時計を見ながら、ため息混じりに告げる。


その横でエルザは、地面にめり込んだ私兵たちの「めり込み具合」をメジャーで測りながら、無表情にディエスを称えていた。


「……ディエス様。今日も、圧勝。……ボリス、震えてる。……見苦しい」


ディエスは、もはや腰が抜けて声も出ないボリスを路傍の石のように見捨て、背中を向けた。


逃げ道も、言い訳も、公爵家の権威も、すべてはディエスの筋肉という名の「圧倒的な正義」の前に粉砕されたのである。

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