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第31話:筋肉偵察と、はみ出したお尻


学園の裏庭、夕暮れ時の美しい噴水広場。


そこでは、俺の将来の安泰スローライフを握る最重要カップル候補、勇者アリオスと、聖女クレアが数年ぶりの再会を果たそうとしていた。


二人は同じ「始まりの村」の出身だが、俺が筋肉に目覚めて村を飛び出し、王都の寄宿学校へ入ってから数年。


さらに彼らも「勇者」と「聖女」として召し上げられたばかりで、王都に来てからまともに顔を合わせるのは、実はこれが初めてだった。


つまり、今の俺は彼らにとって「見覚えはあるが、正体不明の巨大な何か」でしかない。


「ディエス様……。茂みがミシミシ言っています。というか、その体格で隠れるのは物理的に無理がありますよ。はみ出したお尻が丸見えです」


黒髪をなびかせ、呆れ果てた顔で背後からささやくのは従者のリナだ。


彼女は魔導書を片手に、俺の巨体を隠蔽する魔法の障壁を維持しようと必死に魔力を練っている。


「うるせぇリナ! 勇者と聖女がくっつけば、魔王が倒されて俺のスローライフが確定するんだ。これは俺の人生を懸けた、重要な『筋肉偵察』なんだよ!」


俺は丸太のような腕を折りたたみ、無理やり体を小さくして潜んでいたが、盛り上がった広背筋とパンパンに張った**大臀筋ケツ**が、植え込みのキャパシティを完全に超えていた。


「……ディエス様……お尻……硬い。……茂みが、可哀想……」


銀髪を揺らしながら、無表情に俺の腰回りをなでて安全確認(?)をしているのは、同じく従者のエルザだ。


「アリオス……。やっと会えたわ。聖女なんて呼ばれて、急に広い王都に連れてこられて……私、ずっと不安だったの」


噴水のそばで、クレアが潤んだ瞳でアリオスを見上げていた。


控えめで心優しい彼女にとって、唯一の理解者であるアリオスは、まさに心の支えなのだろう。


「クレア……。僕もだよ。君を守れるくらい強くなるために、僕、この学園で必死に修行してるんだ。君がいてくれるから、僕は頑張れる」


「アリオス……」


いいぞ! そのままくっつけ! 伝説の幼馴染カップルが誕生すれば、俺は予定通り開拓地で筋肉を愛でるだけの隠居生活が送れる! アリオス、お前は昔から鈍感すぎるんだ。クレアがお前のためにどれだけ祈り、村で怪我をしたお前のために薬草を摘み歩いていたか、その「献身」の重さをこの俺の大胸筋の厚みほどに理解しろ!


「(いけぇぇアリオス! そこで抱きしめねぇで何が勇者だ! 背筋を伸ばせ! 胸板で受け止めろ!)」


興奮のあまり、無意識に大胸筋をバクバクと躍動させてしまった。


その筋肉の鼓動が地面を伝わり、茂みが「バキバキッ!」と凄まじい音を立てて砕け散る。


「……えっ? い、今、茂みが動いたような……」


「ひっ!? 熊……? 魔獣がいるの!?」


驚いたアリオスとクレアが飛び退く。


「ああっ、もう! だから言ったじゃないですか!」


リナが頭を抱え、俺の襟首を掴んで引きずる。


だが、破壊された茂みの中から姿を現した、制服をはち切れさせた巨躯の俺を見て、二人は凍りついた。


俺は観念して仁王立ちし、はち切れそうなシャツから自慢の上腕二頭筋をのぞかせた。


「ガハハ! 悪いな、そこな若者たちよ。あまりにいい雰囲気だったもんで、つい筋肉が反応しちまった!」


「だ、誰だ貴方は……!? その、岩のような体……」


アリオスがクレアを庇うように前に出る。クレアは恐怖よりも、溢れんばかりの「健全な生命力」を感じたのか、呆然と俺を見上げていた。


「俺か? 俺はただの、通りすがりの筋肉愛好家だ。いいか少年、お前がその剣を振れるのは、誰が後ろで祈ってるおかげだと思ってんだ? さっさと腹くくって、その子を幸せにしやがれ!」


俺は正体を明かさぬまま、アリオスの肩をガシッと掴んで物理的な喝を入れると、リナに耳を引っ張られて闇へと撤退した。


「……ディエス様。今のじゃ、ただの『お節介な不審な城門』ですよ」


「うるせぇ。愛には勢いが必要なんだよ!」

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