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第28話:街道の守護獣と筋肉の金策

新道に商人の馬車が戻り始めたのはいいが、急造の道ゆえの問題も発生していた。


山を切り開き、俺が爆音を立てて暴れ回ったせいで、住処を荒らされた魔物たちが苛立って街道に姿を現し始めたのだ。


「ディエス様、前方にオークの群れ、十体! 獲物を見つけて色めき立っています!」


馬車の御者台からリナが鋭く叫ぶ。


だが、俺は恐怖を感じるどころか、はち切れそうなシャツのボタンを一つ飛ばしながら、ニヤリと笑った。


「ガハハ! ちょうどいい、新しい特製スープの具材と、路銭(小銭)が欲しかったところだ。リナ、エルザ! 露払い(ウォームアップ)の時間だぞ!」


俺は並走する馬車から猛然と飛び降りた。着地の衝撃で地面がクレーターのように陥没する。


「グガァッ!?」


先頭のオークが困惑する暇もなかった。


俺は岩石のような拳を振り抜き、そいつの脳天に叩き込む。


「肉体奥義・剛力爆裂破!!」


バキィッ! という快音と共に、オークの巨体が地面にめり込んだ。


周囲のオークたちが一瞬で硬直する。そこへ、リナの詠唱が響き渡った。


「逃がしません! 『氷華の乱舞ブリザード・チェイス』!」


リナが杖を振ると、逃げようとしたオークたちの足元が瞬時に凍りつき、その巨体を地面に縫い止める。


広域制圧魔法によって動きを封じられた魔物たちへ、影のようにエルザが滑り込んだ。


「……一瞬で、終わらせる……。『瞬光・八重桜やえざくら』!」


神速の抜刀。エルザの剣は、凍りついて隙だらけになったオークたちの急所を、一瞬にして正確に斬り裂いていった。


俺が「面」で圧倒し、リナが「場」を支配し、エルザが「点」で仕留める。まさに完璧な連携だ。


「よし、こいつらの魔核と丈夫な皮は高く売れるな。リナ、仕分けを頼む!」


「もう! 私は秘書兼魔導士であって、解体業者じゃないんですからね! ……と言いつつ、今の部位破壊は素材の価値を損なわない見事な一撃でした。しっかり回収させていただきます!」


リナが文句を言いながらも、手際よく魔法で素材を仕分けていく。


俺は仕上がった素材をそのまま商人の馬車に積み込ませ、市場価格より少しだけ安く、だが確実に現金で買い取らせた。


「ディエス様……魔物を倒して安全を確保し、ついでに素材を換金して遠征費を稼ぐ。……貴方、実はめちゃくちゃ計画的セコいですよね?」 


「バカ言え。これが『持続可能な筋肉経営』ってやつだ」


俺は返り血を自慢の大胸筋で弾き飛ばしながら、再び馬車の先頭へと躍り出た。


商会長は、魔物をハエ叩きのように沈めていく俺たちの背中を見つめ、震えながら呟いた。


「……あの方々、野蛮に見えて、実は一番頼りになる『街道の守護聖域』なんじゃないか……?」



俺はバルカス領の平和と、俺のプロテイン代を守るため、新道を塞ぐ不届きな魔物たちを次々と「価値ある素材」へと変えていった。

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