第24話:対抗戦無双と、ボリスの排除宣言
魔導対抗戦の幕が上がった。 会場となる演習場には豪華な観覧席が設けられ、生徒や教師たちが固唾を呑んで見守っている。
「第一試合、ディエス・フォン・バルカス対……」
相手は、成績優秀な魔導士の家系だという二年生の男子生徒だった。彼は俺の岩石のような巨体を見上げ、顔を引きつらせながらも杖を構える。
「魔法も使えない野蛮人が、この聖なる対抗戦に何の用だ! 食らえ、『爆炎の矢』!」
十数本の火矢が、一斉に俺を目がけて放たれた。
普通の生徒なら防御障壁を張るか回避する場面だ。
だが、俺は筋肉ではち切れそうな胸板を無防備にさらし、一歩も動かずにそれを受け止めた。
ボシュゥゥゥッ!!
「な……!? 直撃したのに、服すら焦げていないだと!?」
「ガハハ! 悪いな、俺の筋肉は魔法が大好物なんだよ!」
俺は拾った指輪を輝かせ、身体中の筋肉を「魔法防御」へフルコンバートしていた。
物理防御を犠牲にしているが、相手が魔法で来る限り、今の俺は文字通り無敵だ。
俺は突進してくる相手の攻撃を、たった一本の指――丸太のような人差し指を突き出すだけで受け止めた。
指先一つに魔防を凝縮し、そのまま相手の杖の先をツンと突く。
ドガァァァァン!!
相手の放った魔法の残エネルギーが指輪の変換で逆流し、相手は場外の壁まで一気に吹き飛んだ。
「よし、撃破だ。リナ、今の見たか? 俺は一歩も動かず、指一本しか使ってねぇ。これは『魔法的な現象』だろ?」
俺が観客席に向かって自慢の上腕二頭筋を誇示しながら叫ぶと、リナが即座に顔を真っ赤にして立ち上がった。
「……もう、審判が困った顔でこっちを見てるじゃないですか! どこが魔法的な現象なんですか! 指一本で人を吹き飛ばすのは、魔法じゃなくてただの怪力です!」
リナの鋭いツッコミが響く中、審判の教師は「魔法防御による反動……という解釈でいいのか?」と頭を抱えている。
横ではエルザが「……ディエス様の指先……素敵……」と恍惚とした表情を浮かべていた。
だが、この圧倒的な無双劇を、冷徹な目で見つめている男がいた。 観覧席の特等席に座るボリス・フォン・カトラスだ。
「……許しがたい。あのような卑俗な力に、我が校の魔導が汚されるとは」
ボリスは手にしたグラスを指先で弾き、冷たく言い放った。
「あの男を、この学園から排除せよ。ルールで裁けぬというのなら……権力でな」
ボリスの背後に控える取り巻きたちが、一斉に不敵な笑みを浮かべる。
俺の知らないところで、学園生活を揺るがす黒い影が動き始めていた。




