第23話:魔導対抗戦の抜け道
学園の講堂に全生徒が集められ、恒例の行事「魔導対抗戦」についての説明が始まった。
壇上に立った教師が、羊皮紙を広げて厳かに告げる。
「今回の対抗戦は、個人によるトーナメント形式とする。ルールは一つ。**『魔法を駆使して、相手を場外へ出すか戦闘不能にすること』**だ。いいな、あくまでこれは魔導の研鑽の場である」
周囲の生徒たちが「よし、得意の炎魔法で……」「氷の術式を練り直さないと」と沸き立つなか、俺は丸太のような腕を組み、鼻で笑った。
「なあリナ、今の聞いたか? 『魔法を駆使して』ってよ」
「……嫌な予感がします。ディエス様、その邪悪な笑みはやめてください」
リナが警戒露わに俺を睨むが、俺の「筋肉脳」はすでにルールの抜け道を見つけ出していた。
「要するにだ。魔法を『使って』攻撃しろとは言われたが、魔法『だけ』で戦えとは一言も言ってねえよな? 俺が指輪で魔法を筋肉にコンバートして、その反動で相手を殴り飛ばしても、それは『魔法を駆使した結果の物理現象』だろ」
「どんな屁理屈ですか! それはもう、ただの暴力です! 審判が黙っていませんよ!」
「ガハハ! 審判が『魔法じゃない』って証拠を出せなきゃ勝ちだ。俺の筋肉は今や魔防の塊だからな。相手の魔法を吸収して、その勢いで突っ込んでやる」
俺がニヤニヤしながら戦略を練っていると、遠くでこちらを忌々しげに睨む視線に気づいた。
公爵家の末っ子、ボリスだ。
「……フン、野蛮人が。魔導の聖域を筋肉で汚そうとは。ディエス・フォン・バルカス、貴様のその浅知恵ごと、僕の至高の魔術で焼き尽くしてやるよ」
ボリスが指をパチンと鳴らすと、周囲の取り巻きたちが一斉に俺を嘲笑う。
だが、俺の視線はボリスの細い首筋に釘付けだった。
「おーおー、相変わらずいい声で鳴くなぁボリス。お前、そんなに俺の筋肉が羨ましいのか? 対抗戦の時は、お前の魔法を全部俺のケツの筋肉で受け止めてやるから楽しみにしてろよ」
「なっ……!? 貴様、公爵家の僕に向かって何を……!」
「ディエス様! 公の場でケツとか言わない! エルザも、無言で剣の柄を握らない! 殺気が漏れてます!」
リナのツッコミが響く中、俺は確信していた。
魔法使い同士がちまちまと呪文を唱え合っている土俵に、俺という「理不尽な城門」が殴り込みをかける。 それがどれほど面白い光景になるかをな。
「よし、エルザ。今日の夕食までに、対抗戦用の『物理魔法・噴射型タックル』の練習に付き合え」
「……はい。ディエス様の……突き、全力で受け止める……」
「だから! 二人とも言い方が不穏なんですってば!」
リナの嘆きをよそに、俺は対抗戦での「合法的な暴力」を夢見て、大胸筋を期待に膨らませた。




