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第22話:歩く城門と、未来の「盾」との遭遇


三日間の「地獄の山籠もり特訓」を経て、俺たちは久しぶりに王立エターナル学園の門をくぐった。


だが、門を通り抜けようとした瞬間、周囲の空気が一変したのを肌で感じた。


【一般生徒視点】


朝の登校風景が、一瞬にして凍りついた。 正門から、巨大な「何か」が近づいてくる。


「……おい、あれを見ろ。城門が……歩いてるのか?」


誰かが震える声で呟いた。


そこにいたのは、バルカス家の次男、ディエス・フォン・バルカス。


だが、数日前よりも明らかに異常だった。


制服の生地はもはや限界を超えて悲鳴を上げ、彼が歩くたびに、周囲の地面がわずかに震動しているような錯覚に陥る。


「どけ。筋肉の通り道だ」


低く響く声。彼が通るルート上の生徒たちが、まるでモーゼの十戒のように、本能的な恐怖で左右に割れていく。


背中の広背筋が動くたびに、厚い生地を内側から突き破らんとする「質量」の暴力。


あれはもう生徒ではない。歩く城門、あるいは**「移動式の筋肉要塞」**だ。


【ディエス視点】


周囲のビビりようはなかなかのものだったが、今の俺の関心は他にあった。


プロテイン抜き三日目。俺の筋肉は、極限まで飢えている。


「リナ……。頼む、一口でいい。プロテインを、俺の乾いた細胞に流し込ませてくれ……」


俺は丸太のような腕をだらりと下げ、ゾンビのような足取りでリナに懇願した。


「ダメです。まだ三日経っていません! その『歩く城門』みたいな威圧感を少しは反省してください。周りの生徒たちが、生け贄を捧げるような目で貴方を見てるじゃないですか!」


リナはくまの残る目で鋭く突っ込んでくる。


だが、横のエルザは俺の岩石のような上腕三頭筋に頬を寄せ、うっとりと目を細めていた。


「……ディエス様の体……さらに、高密度。……城壁よりも、安心する……」


そんなやり取りをしながら校舎へ向かっていると、ふと、並木道の陰に立つ一人の少年が目に入った。


アリオス。 ゲームの本来の主人公であり、後に「勇者」として世界を救うはずの少年だ。


今はまだ、その才能の片鱗も見せない、目立たない一生徒に過ぎないが。


(おっと、あいつがアリオスか……)


俺は足を止め、アリオスをじっと見据えた。


今はひょろひょろだが、こいつが順調に育って魔王を倒してくれれば、俺は開拓地で安全にゴロゴロできる。


いわば、俺の「早期退職」のための生命保険だ。


「おい、お前」


「……えっ? 僕、ですか?」


アリオスがびくりと肩を揺らす。俺は厚い胸板をそらし、威圧感たっぷりにニヤリと笑った。


「いい面構えだ。しっかり飯を食って、強くなれよ。期待してるぜ(俺が楽するために)」


「は、はい! ありがとうございます!」


アリオスは、学園の有名人(筋肉的な意味で)に激励されたと思い込んだのか、頬を紅潮させて深々と頭を下げた。


「ディエス様、また無駄に後輩を怖がらせて……。あの子、震えてましたよ」


「バカ言え、リナ。俺は将来の投資をしてるんだよ」


俺は満足げに頷くと、プロテインへの渇望を胸に、ざわつく校舎へと足を踏み入れた。


将来の勇者も確認した。指輪のコンバートも試した。 さあ、あとはこの筋肉をどう「学園の行事」で暴れさせるかだな。

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