表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/70

第2話:俺が「よわくてつよい」理由


「ディエス、しっかりしなさい! 今日は大事な記念日ですよ」


だれかがぼくの肩をゆすっている。


ぼくの名前は、ディエス・フォン・バルカス。バルカス伯爵家の次男だ。


今日はぼくの10歳のたんじょう日。いつもならごちそうを食べておしまいのはずだった。


でも、ちがった。

(……あ、あれ? 俺、なんでジムでダンベルの下じきに……?)


頭のなかが、ぐわんぐわんとゆれる。


さっきまで「10歳のこども」だったぼくの頭に、見たこともない「30歳のサラリーマン」の記憶がいっきになだれ込んできた。


仕事におわれていた毎日。

大好きだった筋トレ。


そして、死ぬほどやりこんだゲーム『エターナル・キングダム』の知識だ。


「……思い出した。ここ、あのゲームの世界だ」


俺は自分の小さくて白い手を見た。


鏡をのぞきこむと、そこには**「茶髪で、まだひょろひょろとした、お坊ちゃん」**の姿がある。

でも、俺はこのキャラを知っている。


こいつは、魔法がすべてのこの世界で、魔法才能に優れた勇者にボコボコにされる、かわいそうな「かませ犬の悪役」だ。


「ディエス? 顔色がわるいですよ。さあ、魔法の練習を始めましょう」


目の前には、厳しい顔をしたお父様が立っている。


お父様はぼくに魔法の才能があると信じていて、毎日熱心に教えてくる。


それも無理はない。この世界は魔法至上主義。魔法が使えなければ出世はないとされているのだ。


でも、俺の記憶(ゲーム知識)が残酷な真実を告げていた。

(……無理だよ、親父。このディエスってキャラ、魔法の才能は世界で一番よわいんだから)


この世界は魔法がすべてだ。火を出したり、風をおこしたりできる奴がえらい。


でも、ディエスにはそんな才能は1ミリもない。そのかわり――。

(魔法はカスだけど、「防御力」と「攻撃のパワー」だけは、ゲームのなかで最強なんだよな)


岩が当たってもピンピンしている。剣で斬られても「かゆい」ですむ。


そんな、ステータスを筋肉に全部つぎこんだような極端なキャラ。それが今の俺だ。


「よし、決めたぞ」

俺はひょろひょろの腕をにぎりしめた。


魔法なんてがんばっても無駄だ。


だったら、この最強の肉体をさらにきたえあげて、魔法もルールも無視する**「バーバリアン(野蛮人)スタイル」**で生きてやる。


(かませ犬の悪役なんてまっぴらごめんだ。圧倒的な筋力で敵をぶっつぶして、美女をたくさんはべらせて、だらだら自由に生きてやるんだ!)


「ディエス、何をニヤニヤしているのですか。さあ、この杖を持って、火をイメージするのです!」


親父が期待にみちた目でぼくを見ている。


俺はため息をつきながら、茶髪ひょろひょろの腕で杖をにぎった。

……しーん。杖からは、けむりすら出ない。

(すまん、親父。俺の進む道は、そっちじゃないんだ)


俺は確信した。生き残るには、このひょろひょろの体に、だれよりも早く、デカい筋肉をよろいのように着せるしかない。


「まずは情報収集だ。効率よく筋肉をデカくする方法を調べなきゃ」


10歳のこどもとは思えない目つきで、俺は自分の細い腕をじっと見つめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ