第14話:16歳 学園編 入学試験
あれからリナとエルザとの仲も深まり、
ついにこの日がやってきた。 王立エターナル学園の入学試験だ。
16歳となった俺は、はち切れんばかりの制服に身を包んで、学園の門をくぐった。
周りは、ひょろひょろした魔法使いの卵ばかりだ。 そんななか、すでに大人よりも大きな体格をもち、肩幅が周囲の二倍はある俺が歩くと、道が割れるように開いていく。
「おい、見ろよ……あの熊みたいな男。本当に入学生か?」
「バカ言えよ、どこかの護衛だろ」
「制服のボタンが、筋肉で今にも弾け飛びそうよ……」
そんな声を聞き流しながら、俺は背後に控えるリナとエルザを振り返った。
二人は俺の従者として、学園への同行が許されている。
「リナ、エルザ。俺の筋肉を見せつけて、さっさと合格を決めるぞ」
「わたしも……ディエス様の邪魔をするなら、叩き斬ります……っ」
「ディエス様もエルザも、ここは魔法学園ってこと忘れないでくださいよ」
心配そうにリナが声をかける。
銀髪のエルザは、俺が鍛えすぎて少し物騒な子になってしまった。
黒髪のリナは俺が問題を起こさないか見てて欲しいと親父に頼まれているそうだ。
でも、俺を尊敬する目はキラキラしていて、今日も俺の目を全力で楽しませてくれる。
試験会場に入ると、そこには豪華な椅子に座った試験官たちがいた。
「次の受験生、ディエス・フォン・バルカス。……ふむ、君が名門の次男か。では、あの標的に向かって、君が持てる最大火力の魔法を放ちなさい」
そうだった。俺が特異なだけでバルカス家は元々魔法の名門だったのを思い出した。
試験官が指差したのは、分厚い鉄でできたマトだった。
周りの受験生たちが、杖を振って「火球!」なんて叫んでいる。
俺は杖を持っていない。というか、俺の魔法の才能は「最底辺」だ。
俺は丸太のような太い腕を組み、ニヤリと笑った。 「ファイアボールは苦手なんですよ。代わりに、肉体強化魔法を見せましょう」
俺は、ゆっくりとマトに近づいた。
そして、岩石のような拳をぎゅっと握りしめる。 「ふんっ!!」
ドォォォォォン!!!
魔法の爆発音ではない。純粋な「肉体の衝撃」が会場に響き渡った。
鉄のマトは、俺の拳がめり込み、クッキーのように粉々に砕け散った。 飛び散った鉄屑が、試験官の目の前をかすめて壁に突き刺さる。
「……な、なんだと!? 今、魔法の気配は感知できなかったぞ……。それに肉体強化魔法程度じゃこのマトは壊せないはずだが!?」
「でも壊れたぜ」
俺は、破れた制服の袖から覗く、たくましい上腕二頭筋を見せつけながら答えた。
試験官たちは顔を真っ青にしてガタガタ震えている。 受験生たちも、あまりの野蛮さに言葉を失っていた。
(よし、これで合格は間違いなしだ。魔法がダメでも、この圧倒的な力があれば文句は言わせない)
俺は驚愕する人々を無視して、リナとエルザの腰をグイッと引き寄せた。
「さあ、帰るぞ。合格祝いに、今日は二人をじっくりマッサージしてやるからな」
「はい! ディエス様!」とエルザが言い、
「もう、試験官の方も困ってるじゃないですか」とリナは呆れている。
その様子を、会場の隅でじっと見つめている少年がいた。
公爵家の末っ子、ボリス・フォン・カトラス。
この学園で、勇者の前に立ちはだかることになるライバルだ。
「……なんだあいつ。あんなやつが入学できるわけないだろう」と冷めた目で見ていたのだ。
まあ、勇者が頑張ってくれるだろう。
今の俺の頭にあるのは、学園をさっさと卒業して、開拓地で美女とゴロゴロすることだけだ。




