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第11.5話:凍土に眠る過去(前編)


15歳になり、俺の肉体はさらなる円熟味を増していた。


丸太のように太い首、岩壁を思わせる背筋。


もはや服の予備が何枚あっても足りないほどだ。そんなある日、親父のもとへ旧知の貴族から、ある厄介な依頼が舞い込んできた。


「ディエス……お前の従者が言っていたあの村を覚えているか? 土地を再開発する話が出ているのだが、未だに漂う冷気が強すぎて誰も近づけんのだ。再調査を頼めないか」


その言葉が出た瞬間、俺の隣で髪を整えていたリナの手が止まった。


彼女の瞳には、かつて故郷を自らの力で氷漬けにしてしまったあの日への、深い怯えが浮かんでいる。


「……リナ、俺と行こう。お前の過去、俺の熱気で全部溶かしてやるよ」


「でも、ディエス様……。私があそこへ行けば、また……」


迷いを見せる彼女の細い肩を、俺は力強く抱き寄せた。10歳の頃とは違う、一人の女性としての温もりを感じる。 


「大丈夫だ。俺の筋肉が、お前の冷え切った心をアイシングしてやるからな」


数日後、俺たちは馬車を降り、かつて惨劇の舞台となった廃村の入り口に立っていた。


そこは、5年が過ぎた今もなお、巨大な氷柱が天を突き、時間が止まったような静寂に包まれている。


一歩足を踏み入れるごとに、リナの吐息が白く震えた。


「……あそこ、見覚えがあります。あれは村長の家です。よくおつかいで行ったんです。いつも、甘い木の実をくれたっけ……」


彼女は、半ば氷に埋もれた大きな屋敷を指さした。その表情には、恐怖よりも先に、懐かしさがじんわりと滲み出しているようだ。


さらに進むと、少し開けた場所に出た。そこには、子供たちが遊ぶための手作りの遊具が、氷の彫刻のように固まっていた。


「ここは……思い出の広場。あの日も、友達とここで隠れん坊をしていました。私が鬼で……みんなを探している途中で、急に足元から真っ白な霧が広がって……」


リナの言葉が途切れ、感情がせきを切ったように溢れ出した。


彼女の大きな瞳から、一粒、また一粒と涙がこぼれ落ちる。その雫は地面に触れる前に、冷気によって小さな真珠のような氷の粒へと変わった。


「私、みんなが好きだったんです。村も、友達も……。なのに、どうして……っ!」


膝をつき、積もった雪に顔を埋めて泣きじゃくるリナ。


かつての楽しかった記憶が蘇るほど、それを壊してしまったという罪悪感が、彼女の心を鋭く刺し貫いていく。 


俺は黙って、彼女の隣に膝をついた。


冷たく凍りついたこの場所で、リナの悲しみだけが、痛いほどに熱く伝わってきた。


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