第11話:お屋敷の日常と、15歳ディエスの「夢」
二人の才能を目覚めさせてから、バルカス家のお屋敷はさらににぎやかになった。
俺の毎日は、朝から晩まで筋肉を鍛えることと、可愛い従者たちを愛でることでいっぱいだ。
「リナ、エルザ! 修行の時間だぞ!」
俺がはち切れそうなシャツから丸太のような太い腕をだして呼ぶと、二人はすぐに駆け寄ってくる。
「はい、ディエス様! 今日も魔法の練習、頑張ります!」
「わたしも……剣の修行、お願いします……っ」
黒髪のリナは、俺が導いた魔力の通り道のおかげで、今では庭の巨大な岩を氷漬けにして粉砕するほどの威力をもっている。
銀髪のエルザは、俺が教えたストレッチでさらに体がしなやかになり、その動きはまるで目にも留まらぬ風のようだ。
「よしよし、いい子たちだ。じゃあ、まずはご褒美だ」
俺は二人の頭を、岩石のような大きな手でわしわしとなでてあげた。
「ひゃうんっ……」
「あ、あの、ディエス様……手が、大きくて、熱いです……」
二人は顔を真っ赤にして、俺の厚い胸板に体をあずけてくる。
かつて「呪い」や「盾」として虐げられていた彼女たちにとって、この熱い手のひらこそが、今や唯一の安らぎなのだ。
もちろん、俺の目は彼女たちの健康的な成長をなめるようにチェックしている。
(……うーむ、リナのくびれ、さらに引き締まってきたな。エルザの太ももは、いい感じに弾力が出てきた。最高だ。やっぱり修行は、可愛い女の子と一緒にやるのが一番だな!)
そんな俺たちの様子を、遠くからメイドさんたちが冷たい目で見ている。
「……ねえ、見た? あの二人、ディエス様にすっかり飼い慣らされて……」
「ディエス様ったら、15歳にしてあんなにゴツいのに、やることはやっぱりド変態だわ」
ひどい言い草だ。俺はただ、愛をこめて修行を監修しているだけなのに。 そんな時、お父様がやってきた。
「ディエス……。お前、そんな筋肉ダルマになって、将来はどうするつもりだ? 魔法の才能がなくては、騎士団でも苦労するぞ」
この国は16歳から1年間、魔法学園に通うことができる。その卒業資格があれば、王立魔法軍に志願できるはずだ。
「親父、俺の夢は決まっています。17歳で魔法学園を卒業したら、軍で適当に手柄をたてて、あの土地をもらうんです」
俺が指さしたのは、地図のすみっこにある「不毛の地」だった。 かつてバルカス家が領有していたが、魔物があまりに多すぎて、開発もできずに国に返してしまった、呪われた大地だ。
「な、あそこだと!? あそこは魔物の巣窟だぞ! 王都の魔法兵団ですら匙を投げた場所だ!」
「だからいいんですよ。誰も欲しがらない場所なら、俺が筋肉で魔物をぶっ飛ばして、美女たちとゴロゴロするのに最高じゃないですか。かつての名誉を取り戻すって言えば、親父も鼻が高いでしょ?」
「……名誉というか、自殺行為にしか見えんが……」
お父様は頭を抱えたが、隣にいた兄のカイン様は楽しそうに笑った。
「いいじゃないですか父上。ディエスのこの筋肉と、この二人の力があれば、あの大地も最高の楽園になるかもしれませんよ」
相変わらずシュッとしたイケメンの兄様は、俺の丸太のような腕をポンと叩いてくれた。兄様だけは分かってくれる。
俺の夢は、魔法の階級社会なんてクソ食らえだと言わんばかりに、この力で呪われた土地を「筋肉の聖域」に変えて、だらだら自由に生きることなんだ。
「よし! 修行の後は、俺特製のコンディショニング・マッサージだ! 二人とも、部屋へ行くぞ!」
「「はい、ディエス様っ!」」
二人は嬉しそうについてくる。 メイドさんたちの「通報した方がいいかしら……」という声を背中に受けながら、俺は力強く、鼻歌まじりに部屋へと向かった。




