第10話:目覚める原石、バルカス流の導き
二人が俺の部屋にやってきてから数日。
俺特製の「魔獣肉スープ」と、バルカス領の豊かな食事のおかげで、リナとエルザはすっかり元気になった。
まだ少し細いけれど、肌につやが戻り、マッチョな俺を見ても悲鳴をあげなくなったのは大きな進歩だ。
「さて、二人とも。今日は、お前らのなかに眠っている『本当の力』を引き出してやる」
俺は丸太のような腕を組み、どっしりと椅子にすわって言った。
「本当の力、ですか……? わたしたち、魔法も剣も、だれにも教えてもらったことがなくて……」
黒髪のリナが不安そうに首をかしげる。
銀髪のエルザも、おどおどしながら俺の岩石のような胸板を見つめていた。
「大丈夫だ。俺には、お前らの体のなかの『熱の流れ』が視えるからな」
俺は勇者が将来のラスボスに対抗するために得た知識を総動員して、二人の背中に手をあてた。
普通、この世界では才能は「運」だと思われている。
でも、俺は知っている。体のなかにある「魔力の通り道」を、筋肉の動かし方一つで正しい方向へ導けば、誰でも凄まじい力が手に入ることを。
「いいか、リナ。深く息を吸って……俺の指がふれているところに意識を集中しろ」
俺はリナの白い背中に、ゴツゴツした太い指をそえた。もちろん、下心も忘れない。
(……くぅー! リナの背中、すべすべで最高だ。この細い腰のラインもたまらん。……おっと、集中集中)
俺が指先から微かな刺激を送り、滞っていた魔力を強引に押し流すと、リナの体がビクッとふるえた。
「あ……っ、熱い……。なにか、熱いものが体のなかをぐるぐる回って……!」
「よし、そのまま一気に突き破れ! 自分の『生命力』を信じろ!」
ドクン!! リナの体から、青白い光があふれだした。
魔力の奔流が全身を駆け巡った証拠だ。 リナは驚いた顔で自分の手を見つめている。
彼女の指先からは、周囲を凍てつかせるほど鋭く、それでいて気高い氷の霧が立ち上っていた。
「すごいです……ディエス様! 私、魔法が『自分の意志』で動かせます!」
「次はエルザだ。お前は魔法じゃなく、身体のバネを解放するぞ。ちょっと、あられもないポーズになるけど我慢しろよ」
俺はエルザの体を抱きかかえ、筋肉の可動域を広げる特殊なバルカス流ストレッチを施した。
エルザは顔を真っ赤にして「ふえぇ……っ」と変な声をだしていたが、終わるころには、彼女の動きは野生の獣さえ凌駕するほど速くなっていた。
「……信じられません。体が、羽みたいに軽いです。これなら、誰かの盾じゃなく、自分のために戦えます」
二人は、自分の才能を「呪い」や「使い捨て」から「力」へと変えてくれた俺を見て、深い尊敬のまなざしを向けてきた。
「ディエス様……わたしたちを拾ってくれただけでなく、こんな希望まで……。本当に、一生ついていきます!」
「ガハハハ! いい心がけだ。そのかわり、将来やりたいことができたらちゃんと言うんだぞ。……まあ、俺が最高の領地を切り拓くまでは、夜の相手も含めてしっかり仕えてもらうけどな!」
俺がニヤニヤしながら言うと、二人は顔を真っ赤にして「……はい、喜んで」と小さくつぶやいた。
こうして、俺の最強の右腕と左腕が誕生した。 魔法の才能がない俺と、最強の素質をもつ二人。
この「バルカス・パーティー」で、世界を驚かせてやる準備は整った。




