好きと言えなかった日
今日も僕は占い館に来てしまった。
「いっらしゃいませ」
先生はいつもの笑顔で迎えてくれた。
「今日は何を占いますか」
「えーと、仕事運についてお願いします」
本当は、占って欲しいことなんてない。僕は考えるふりをして答えた。
タロットカードが並ばられる。
「うーん、今週は人間関係に動きがありそう」
「人間関係…ですか」
「そう。伝えるべきことがあるなら伝える時期かもしれないです」
胸がドキッとした。
「伝えるべきことですか…」
「はい」
「言わないと伝わらないことって世の中にたくさんあるでしょう」
僕は今しかないと思った。
「あの、先生…」
「はい?」
彼女は不思議そうに僕を見つめる。
「その…今週末、食事とか…」
僕はここまで言いかけて、入口のベルがと鳴った。
「あ、次のお客様が来ちゃいました」と先生が時計を見た。
「すみません、先程の話なんでしたっけ?」
「いえ、何でもないですよ」
僕は笑顔を作り立ち上がった。
「今日もありがとうございました」
「また来てください」
彼女は笑顔で見送ってくれた。
ポケットの中でスマホが鳴った。友達からのメッセージだった。
「想い伝えた?」
「言えなかった」と返信して、空を見上げた。
カードは僕に伝えていた。
「伝えるべきことは伝える時期」だと。
だけど僕は勇気が出なかった。
もし断られてしまったら、彼女に会えなくなってしまう。
「…来週また行こう」呟き、僕は歩き出した。
占い師は未来を見ることができる。
でも未来を変えられるのは僕しかいない。
商店街の角を曲がった時、後ろから声がした。
「ちょっと待って」
振り返ると先生が息を切らして立っていた。
「食事…食事私も行きたいです」
彼女は少し照れた様子で僕に伝えた。
「さっき出たカード、実は私のことだったの」
好きと言えなかった日は、好きと言わなくても伝わった日になった。
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