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好きと言えなかった日

作者: 空詩
掲載日:2026/01/15

今日も僕は占い館に来てしまった。


「いっらしゃいませ」

先生はいつもの笑顔で迎えてくれた。

「今日は何を占いますか」

「えーと、仕事運についてお願いします」

本当は、占って欲しいことなんてない。僕は考えるふりをして答えた。


タロットカードが並ばられる。

「うーん、今週は人間関係に動きがありそう」

「人間関係…ですか」

「そう。伝えるべきことがあるなら伝える時期かもしれないです」

胸がドキッとした。


「伝えるべきことですか…」

「はい」

「言わないと伝わらないことって世の中にたくさんあるでしょう」


僕は今しかないと思った。

「あの、先生…」

「はい?」

彼女は不思議そうに僕を見つめる。



「その…今週末、食事とか…」

僕はここまで言いかけて、入口のベルがと鳴った。


「あ、次のお客様が来ちゃいました」と先生が時計を見た。

「すみません、先程の話なんでしたっけ?」


「いえ、何でもないですよ」

僕は笑顔を作り立ち上がった。


「今日もありがとうございました」

「また来てください」

彼女は笑顔で見送ってくれた。


ポケットの中でスマホが鳴った。友達からのメッセージだった。

「想い伝えた?」

「言えなかった」と返信して、空を見上げた。


カードは僕に伝えていた。

「伝えるべきことは伝える時期」だと。

だけど僕は勇気が出なかった。

もし断られてしまったら、彼女に会えなくなってしまう。


「…来週また行こう」呟き、僕は歩き出した。


占い師は未来を見ることができる。

でも未来を変えられるのは僕しかいない。


商店街の角を曲がった時、後ろから声がした。


「ちょっと待って」

振り返ると先生が息を切らして立っていた。


「食事…食事私も行きたいです」

彼女は少し照れた様子で僕に伝えた。


「さっき出たカード、実は私のことだったの」



好きと言えなかった日は、好きと言わなくても伝わった日になった。


読んでいただきありがとうございます。

他にも短編を投稿しています。

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― 新着の感想 ―
2人の思いは占いを通して実ろうとしていたんですね! 読んでいてとても腑に落ちました!
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