暴力と再評価
暴力は「クズ」の証。
そんな噂が運動場の金網の向こうでささやかれていた。
一度の過ち、それだけで全てを失うのか?
夜組、暴力、再評価。
僕の人生は、まだ取り戻せるのか……?
“処分”という名の扉の向こうに立つ、大人の笑顔の意味は。
## 第三章:暴力と再評価」
その日、学習時間のあいまに運動場へ出ると、ふと異様な空気を感じた。金網の向こう、倉庫の影で何人かの子どもが寄り合っている。小さな声。煙の匂い。禁制の行為だ。
「おい……見た? あいつ、夜組行き決定らしいぜ」
「まじかよ。清麻呂、成績よかったのに……暴力とか?」
「クズ認定、確定だな。夜組って、あれ、落伍者の吹き溜まりだろ?」
僕は声をかけず、音も立てず、静かにその場を離れた。でも、その会話は頭に焼きついた。
――夜組=クズ。
僕はクズになるのか? 本当に、そういう場所なのか?
「夜組」という言葉は前にも聞いたことがある。その時も、「夜組なんて」という言い方をされていた。
僕は夜組になったのか?
アキラを突き飛ばした、あの行動だけで?
たった一回の過ちで?
その夜、医療室に呼び出された。診断結果の報告だと告げられていたけど……降格処分通知? でも、そういうのって医療室ではやらないはず。
深呼吸。
「5Aクラスの清麻呂です」
「入りたまえ」
扉の向こう、白い壁に囲まれた部屋に入ると、白衣の大人がマスクをつけて立っていた。医療室の先生でもないけど、誰だろう? ネームプレートは高梨正。見たこと無いな。
ただ、声が和やかだ。
笑ってる?
死刑宣告ではないよね?
思わぬ形で再評価の機会を与えられた清麻呂。
だが、それは救いか、それとも試練か?
「暴力」とは何か、「感情」とは何かを問う第三章。
次回、少年に下される“再定義”が、物語の歯車を大きく動かします。