白色照明
続きです。
時を同じくして、また別の家では・・・・・・。
「い、たた・・・・・・。なんだ・・・・・・もう、夜・・・・・・?」
コーラルの居ない、コーラルの部屋。
わたしはそこの床に倒れていた。
例の地下通路の入り口は、開け放たれている。
意を決して恐怖の蓋を開けた。
それは昼間の出来事。
そして今、私は・・・・・・。
「気を失っていた、のか・・・・・・?」
記憶はあやふやだが、またあの少女・・・・・・の霊だろうか、の姿だけは脳裏に焼き付いている。
こういう心霊だの悪魔だのという現象に対しては、おそらく恐怖心は少ない方だろう。
なのにあの少女の存在を意識するといい知れぬ恐怖に支配される。
それだけでなく・・・・・・。
「これは・・・・・・痛み・・・・・・?」
幻肢痛とでもいうのだろうか、生々しくかと思えば曖昧な痛みが痺れのように体中に残っている。
結局、何が私の意識を失わせたのかは分からなかった。
すっかり暗くなった部屋の中、凝り固まった関節を動かして体を起こす。
地下へ続く道はより深い闇に満たされ、まるで異界への入り口のような異様な雰囲気を放っていた。
もう開け放ってしまったからだろうか、以前ほどこの地下通路に対して恐れはない。
あるいは一つ段階を乗り越えたのかも知れない。
もはやこの向こうに何も無いということはありえないだろう。
直感だとか本能だとか、この感覚は既にそういった不確かなものではない。
私は・・・・・・この闇の底に眠るものに辿り着かねばならないのだ。
よろよろと、闇の中に足を踏み入れていく。
この家の雰囲気に似つかわしくない硬質な感触の階段。
暗いだけにつまずいてしまいそうになる。
多少よろめいて壁に手をつくと・・・・・・。
冷たい感触に・・・・・・でっぱり・・・・・・???
「いや、これは・・・・・・」
スイッチだ。
私の家にはこうしたスイッチが至る所に設置されている。
大概は照明のスイッチだ。
もちろん、本来普通の家にこういったものがあるわけではない。
この家には魔導回路が張り巡らされている。
古びたボロ家に似つかわしくない、いわばハイテクだ。
どうしてこの家にそんなものがあるのか・・・・・・そんなこと考えたこともなかったし、そういうものだとして幼い頃から過ごしていた。
手に触れたものがスイッチだと理解すると、迷わずにそれを指で押し込む。
ずっと使わずにいたその歳月を感じさせない反応速度で、家の中の照明より数段明るい照明が眩しく輝いた。
「・・・・・・」
明かりがついてしまえばなんてこともない普通の階段だ。
継ぎ目のない石のような独特の壁に囲まれてはいるが、構造自体はただの階段。
なんの不思議も因縁も感じさせない、無機的なものだった。
一歩一歩、自らの足音を聞きながら下っていく。
一段下りるたびに、空気が薄くなっていくような、息が詰まるような感覚があった。
そして、たぶんそれは・・・・・・精神的なものだ。
側から見れば・・・・・・おそらくビビりすぎ、過剰なくらい慎重に下っている。
それにもかかわらず、その終点はすぐに見えてきた。
簡素な部屋の中、潔癖な白色の光が反射する。
開けた視界、その眩しさに・・・・・・。
私は目を細めた。
続きます。




