表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/175

今さら戻って来てくれなんて言っても、もう遅い!

続きです。

 数日後。

わたしたちはそれぞれの家で療養していた。

あの後、程なくしてやって来た討伐体の人たちに保護されて、すぐにギルドで診察と治療を施してもらったのだ。


 人間の体というのは案外丈夫なもので、異常プラヌラを散々体内に侵入させてしまっていたのにも関わらず、生命の危機に陥るほどの汚染ではなかったそうだ。

むしろ問題としては傷と毒の炎症の方が大きかったみたい。


 サチとシュルームは無傷で、プルームは手に裂傷、当然ではあるのだけどわたしとダンとラヴィの状態が特に悪かった。

ラヴィは骨が折れてたらしく、骨を強制的に正しい位置に戻す施術を受けていたときは・・・・・・・まぁなかなか騒がしかった。

わたしとダンは外傷と毒の影響が酷く、ちょっと前まで誰だか分からなくなるくらい包帯を巻かれていたりもした。

今はだいぶ良くなって、部分的に包帯が残るくらいだ。


 ある程度良くなってからは街にも繰り出したりしたけど、なんだかすっかりわたしたちの名は知れ渡っていたみたいだった。

ガーたちにも会ったけど、みんなびっくりしてた。

この調子ならパーティを成立させることができる日もそう遠くないかもしれない。


 パーティといえば、ダンたちとのことだけれど・・・・・・・。


「コーラル、ダン来たよー?」

「あ、うん。分かった、今行く」


 あれからダンは毎日見舞いと称してわたしたちのところへ来ていた。

どちらかと言えばダンの方が怪我が酷いというのに、なんだか変な話だ。


 わたしが出迎えに行くまでもなく、ラヴィに通されたダンはわたしの部屋までやってくる。

ここ数日で少し筋肉量の落ちたダンは、ベッドの上に座るわたしを見て微笑んだ。


「だいぶよくなったみたいだな」

「そっちもね」


 ダンが後ろ手でドアを閉める。

そうして手近な椅子を引いて、それに腰掛けた。

今更気まずさもない・・・・・・・と言いたいところだけど、ダンの方はそうでもないみたいだ。

状況が状況だったとはいえプロポーズしたわけだし、まぁ向こうからしたら確かに・・・・・・・って感じだ。


「それで・・・・・・・昨日言ったこと、考えてくれたか?」

「・・・・・・・うん」


 ダンが昨日わたしに話したこと、それは「俺たちのところに戻ってこないか?」という趣旨のものだった。

わたしがちゃんと強いコードに目覚めたからとかではなく、わたしたちの間にあった誤解が解けたから、だからもう別々でいる必要はないんじゃないか・・・・・・・ということなのだけど・・・・・・・。

これに関しては、昨日言われた時点で心は決まっていた。

ダンには悪いけど・・・・・・・。


「わたし、ラヴィと一緒にやってみたい」

「・・・・・・・そうか」


 ダンの表情には、特別悲哀や失望の色は現れない。

たぶん、ある程度覚悟はしていたんだろう。

この一件で分かったけど、ダンってわたしのことほんとに好きみたいだし。


「わたしさ、こうやって・・・・・・・事故みたいな形とはいえ、ラヴィと・・・・・・・新しい仲間と出会ってさ。そしたら、色んなことが分かってくるようになったっていうか・・・・・・・今まで知らないままでいたことがたくさんあったんだなって、初めて気づけたの。そりゃ、さ・・・・・・・うまくいかないこともあるだろうし、何か間違えることも・・・・・・・これからあると思う。けど、そういうのが生きてくってことなんだって、今は思うの。だからさ、今は・・・・・・・新しい仲間と一緒に、自分たちの足で、頭で、楽しかったり辛かったり、喧嘩したり悩んだり、そういうふうに歩いていきたい」


 自分で言うことじゃないかもだけど、わたし・・・・・・・たぶん成長した、んだと思う。

ダンたちから離れたからってわけじゃないけど、今は色々自分たちで考えてやってみたいって思うのだ。


「まぁ、ほら・・・・・・・かわいい子には旅をさせよって言うじゃん。それに・・・・・・・別にもう会わないってわけじゃないんだから。ダンたちもここに来るだろうし、わたしだってダンの家行くし。だから、そんな寂しいことでもないよ」


 完全な絶縁すら覚悟していただけあって、わたし自身今後もそういう関係であれることに自分で言いながら安堵している。

わたしの言葉に、さっきまでは変わらない表情を貫いていたダンが少し寂しそうな顔をして、笑う。


「ああ、分かってる。俺たちは、どこで誰と何してようが・・・・・・・ずっと家族のままだ」


 思えばどれほど長い間ダンと過ごしただろう。

わたしの人生の大半は、きっとダンたちと一緒の時間だ。

昔は、信頼し合えるのはその中だけだったけど、今は違う。


 ラヴィは当然、ちょっとの間だけ行動を共にしたガーたちだって、今は信頼できる。

“家族”以外誰も信用できないわたしの幼年期は、もう終わったんだ。


 わたしは、ダンたちに守られて、大事にされて生きて来た。

それを忘れちゃいけない。

だから・・・・・・・。


「ありがとうね、ダン」

「はっ、お前が素直な日もあるんだな」

「ひねくれてるのはプルームでしょ!」

「それもそうだな・・・・・・・」


 改まった感じで言葉を交わすのは、なんだかむず痒い。

包帯の下の治りかけの傷の痒みとよく似ていた。

続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ