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乙女ゲー 変態豚貴族の気持ち

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拝啓

 穏やかな小春日和が続いております。フェミルム伯家の更なる発展を期待させて頂きます。

さて、この度は私が居ながら少々騒がしい事件が続いてしまい申し訳ない。フェミルム伯を含む諸侯の方々に不信感を抱かれてしまっているでしょう。その挽回としてジャンスキッキ侯爵家との縁談を紹介させていただきます。パーバー・フェミルム伯には只今奥様がおらず、探しておられたのを知りこの度は手紙を送らせていただきました。ジャンスキッキ侯爵家の娘のアイリスはこの度学園を卒業したばかりの若く綺麗で愛らしい少女でジャンスキッキ侯家の一人娘です。既にこちらでジャンスキッキ侯とは話をつけさせたのでフェミルム伯のお返事次第で婚姻ができる状況です。色好い返事をお待ちしております。

敬具

王国歴90年3月9日

イーケェメント・コイ・ハーイスクル

パーバー・フェミルム伯


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 ふむ。これはボクチンを馬鹿にしているという事か?手紙を同じ部屋で執務をしている文官の一人に確認をしてもらうか。


「読め。カイン、お前はどう思う?ボクチンは馬鹿だからよぉ、分かんないんだ。これは喧嘩を売ってるってことでいいんだよな。」

「は、はい。え~はい。…え、ん?いやまさか。…その、第一王子殿下は学園を卒業したばかりであまり経験がないからだと思われます。ですから、恐らく喧嘩を売っていないのではないかと…」

「その態度はよぉ。ボクチンの捉え方はあってるてぇことでいいんだよなぁ。念のため他の奴らも読め。」


 カインの後にもこの部屋にいる文官達に手紙渡してもカインと同じように動揺しながらも、似たようなことを言ってやがる。


「なぁ。殿下は学園の生徒や教師の家名が分かってねぇんじゃないよなぁ。それとも、第一王子なのに学園では誰にも関心を持たず、一人ぼっちだったなぁんてことぉねぇよなぁ?」

「第一王子殿下の学園での成績などの評価は高く多くの生徒に慕われている、との噂話はありますので、頭が良く、人望もあったのではないかと思われます。」

「ボクチンもそう聞いてるし、学園に居た息子達から手紙を貰っている。正直学園の問題なんてどうでもいいがよぉ。これは流石に怒るぞぉ!。建前は貴族として最低限の義務が出来てねぇ奴は王子レース脱落、でいいよなぁ。絶対ぶっ殺してやるぅぅ!」


 王侯貴族として他貴族家の家名と血縁関係や領地持ちならその場所と特産品や、他の家との関係、社交界であった人の人相と名前ぐらい覚えなきゃいけないんだ、それが最低限の務めだ。何も一度会ったら絶対覚えろって訳ではない、もしそうなら今頃貴族はいなくなってる。


 何のために何度も社交界や誕生日や結婚パーティーをやって、その度に毎回自己紹介をしてると思ってやがる。どうせ、パーティーの度に必死に覚えようとしたり、覚えてもらおうとしてる奴を馬鹿にしていやがってんだろうな。


 殿下は今18歳で、それまでに何度も社交界などのパーティーに呼ばれてるし、これで覚えてないのはボクチンを超える馬鹿だろ。

 誰も解けなかった数学の問題を解いたとか、4つも外国語をその年で覚えたとか、上級魔術を使えるとか、近衛騎士レベルの剣術が出来るとか、どうでもいいよねぇ。確かに出来ないよりは出来た方がいいだろうけど、最低限のことができてることが前提だしぃ。

 そもそも、数学の問題なんか研究者にやらせればいいし、外国語とか外交官が出来ていればいいし、魔術と剣術は兵士にでもなるつもりなのか?


 例えパーティーで覚えきれなくても息子達は学園で殿下と同じクラスになったこともある。これでボクチンの息子だって気づいていないのは明かにボクチンのフェミルム家を軽んじてる!妻がいなけりゃ、息子がいないとでも思ってんのかぁ。養子があんだろうが。やはり第一王子にはケジメつけさせないとなぁ。


 それに、親族が何人も学園の教師になっているんだ。学園でのイザコザだってかなり正確に把握している。

 

 何より、ボクチンが怒っているのはそこだ!!

殿下は卒業パーティーで自身の婚約者の罪を断罪して、男爵の娘との婚約の発表をした。

 これについてはどうでもいい。侯爵家の娘なのに男爵家の娘に嵌められた間抜けだ。そんなのが婚約者になっていたことの方が驚きだ。教育に失敗している今の侯爵家の当主が低能さが露呈したことが国にとっては問題だが、ボクチンの気にすることじゃない。


そこじゃない。ボクチンが怒っているのは元婚約者に対する罰としてボクチンに嫁がせようとしていることだ!!


 断罪するときの発言でボクチンをなんて思ってるかなんて、学園にいた息子や親族から筒抜けだぁ!ふざけやがってぇぇ!


『貴様との婚約は破棄する。それから貴様が起こした数々の罪を忘れている訳じゃないだろうな。罰として貴様に変態豚貴族のフェミルム伯に嫁いでもらう!』


 変態豚貴族だとぉぉぉぉ!!!!!!

 思い出しただけで、怒りがぶり返す!しかも!しかもだ!それをパーティーで言いやがった!!ぜっっっっったいに許さん!


 クソッ!病気で太っているというのに、それを馬鹿にするとは!何たる屈辱!何たる恥!そもそもボクチンと婚約することの何が罰だ!!!


 ジャンスキッキの娘も何故嫌がる!?泣いて喜ぶところだろうがよぉ!


しかも、本当に来た手紙にはその発言に対する謝罪ではなく、ジャンスキッキの娘に対する罰を与える為の内容!!


 卒業パーティーの直後に手紙を送ってきたようだが、こっちとら侮辱されたのだ。その緊急性を理解しているボクチンの息子や親族が魔道電話を使って連絡してきたんだ。だからこそ、今正確に理解してるし、怒っているのだぁ!



 バンッ!!


「イーケェメント殿下に他の王子と比べて優秀なのに何で第一王子殿下って呼ばれてるか、教えてやらねぇとな!このボクチンが!」


 机を叩いた音にビクついている文官達を見る。一緒に誰かを陥れることをよくやってたのに腑抜けちまったなぁ。

 懐かしいぁ。昔は良く馬鹿にされたものだ。その度に、他の奴らに気づかれないようにこいつらと一緒に陥れてやってたら、いつの間にか陰口だけで公の場や面と向かって馬鹿にされなくなっていた。

 

「お前らぁ、いつまでビビッてやがる!誰に喧嘩売ったか分からせてやる!昔みたいに家に帰らずに暫く仕事になるからなぁ。気合入れろよぉ!ただ、喜べよ!その分の給料は上げといてやるぅ!」

「おお!!懐かしいですね。ボーナス期待しときやす、大将!」

「懐かしいなぁ、その呼ばれ方ぁ。学園以来か。まあいいか、今だけだからな。ヨシッ、やるぞ、テメェラァ!!」

「「「おおお!!大将を馬鹿にした奴に報いを!!!」」」





 金髪碧眼の美丈高が必死に交戦しながら、何故自分がこうなってしまったのか、後悔していた。


「クッソ!何を間違えた!どこで道を間違えたというのだ!アイリスを捨てたことか!?クソ!!」


 得意の剣術や魔術で応戦したものの大勢の騎士に囲まれてついに、第一王子であるイーケェメント元王子は地面に膝をつき、嘆き悲しみながら王族用の幽閉塔に連れていかれた。






 

 その様子を部屋に入ってきた執事に伝えられて、喜びに頬が吊り上がる。


「誇りあるジャンスキッキ家を馬鹿にして、あんな木端男爵なんかと結婚するからそうなるのよ!おーほっほっほっほ。あ~気分が良いわ。それで、お父様いつになったら私の婚約者を見つけてくるの?高身長でイケメンで年は近い方がいいわ。ああ、領地持ちの貴族であることは絶対条件よ。後はそうね。当主か嫡男がいいわ。早く見つけて頂戴。」


 当たり前の条件を言った私をお父様が罪悪感のあるような顔で視線を逸らす。


「あ、ああ。そのことなんだが、探しはした。我がジャンスキッキ家の力も使ってある程度の相手側の要求も飲める準備はしたんだが…」

「そうなのね。全く勿体つけないで早く教えて頂戴。それで候補はいくつあるのかしら。候補から厳選しないといけないんだから、時間がいるのに、いつまで勿体つけるのよ。」

「そう…だな。全ての家から突っぱねられた。後は、家格の合わない家だけだ。どうやら我が家は落ち目だと思われているらしい。お前は男爵の娘にいいように踊らされた挙句、期待の第一王子が落ちぶれた原因だと思われている。それに先程の執事の連絡で確定的になった第一王子の王子継承権の消失。お前が王子の手綱を握れていないからこうなったと王家に思われるだろうな。」

「な、何よそれ!言いがかりじゃない!私は正しい行動をしていたわ!男爵の娘が王子に色目を使ってたから虐めただけじゃない。そんなことを理由に私との婚約を解消した王子の責任でしょう!?王家の教育の無能さを棚上げして、逆恨みじゃないの!?」

「勿論、第一王子の側近や教育係、件の男爵とその娘は処刑されるだろうな。だが、それで王家の怒りが治まるとは思えない。第一王子は天才すぎた。その男爵の娘以外の誰もが第一王子を理想だと思い込み過ぎたのが原因だろうな。それを男爵の娘じゃなく、お前が初めからしていればよかったのだ。と考えて、お前にまで罪が問われそうだ。勿論、抵抗はするが無理だろうな。先程も言ったが今の我が家は落ちぶれ始めていて、王家を止められるほど力がない。」

「そんな!?じゃあ、私までしょ、処刑されるの!?冗談じゃないわよ!?何か方法があるんでしょ!?ねぇ、お父様!?」


 そんな!?でも、お父様は表情が先程から変わらない罪悪感や後悔の表情のまま、それでもうなづいた。

 何か、あるのね!?私の助かる道が。


「ある。だが、すまないがこの解決策はお前が嫌だと言ってもどうしようもないからな。我が国の影響力の少ない国外に行って、そこで平民に混じって修道女として暮らしてもらう。それなら、命までは奪われないだろう。」

「信じらんない!嫌よ!なんで私が修道女なんてやんなきゃいけないのよ!?第一王子が全部悪いんだから、そこをついて王家に抗ってよ!」


 修道女なんて我慢できるわけないわ。食事や服飾が質素で娯楽もなくて楽しみなんて何一つないなんて生きていけないわ!他になにか道が有る筈よ!…そうだわ。国外のジャンスキッキ侯爵の親戚に養って貰えばいいじゃない。


「お父様、親戚に頼ればいいじゃない。これで完璧ね。ああ、よかった。」

「それは出来ない。国外の親戚というのは家が潰れる程の事態以外では何か利が無いと動かない。縁があるだけの他人だ。親戚にお前が渡った所で、我が王家にその親戚が貸しを作れる機会だと考え、喜んでお前を差し出すだろうな。」

「そんな!?」

「だから国外の修道院だ。国外という事で王家が動くことの負担大きくさせ、更に修道院という文化によって手を出しづらくする。修道院で苦労していることを伝え、加えてお前が懺悔してる様にみせるんだ。そうすれば、恐らくお前にまで手は伸びないだろうな。」


 どうして、こんなことに。どこで私は間違えたの?私が第一王子を肩書じゃなくて、本人をもっと見ていればよかったの!?






「どうだったぁ?」

「元第一王子とジャンスキッキの娘の両名が後悔しながら、屈辱に濡れた人生を噛みしめて生きておられます。」

「ぶひひ、ひっひっひっひ。これでボクチンのことを侮辱したことを思い知らせてやれたなぁ!気分が良いなぁ、実に気分が良い。うむ、久しぶりにアレをやるかぁ。お前らもヤルかぁ?」

「いえ、久しぶりに家族との団欒を取りたいので。」

「寝ていなかった分たっぷり寝ますので。」

「家の埃が溜まってそうで、それの掃除をしますので。」


「そうか、そうか。ではボクチン一人で遊ぼうかなぁ。ボクチンのお眼鏡に叶うロリちゃんは生まれているかな、ぶひぶひっひ。」


 そう言って、変態豚貴族ことパーバー・フェミルム伯が部屋から消え去った。


「なあ、アレ止めなくていいのか?流石に可哀そうじゃないか?」

「仕方ねぇだろ?」

「別にいいんじゃねぇか。人の性癖なんて。それに無理やり襲ってるわけでもねぇしよ。」

「嫌、あの金額と伯爵だってこと考えると、平民じゃ怖くて断れねぇよ。」

「いや…そっちもあるけどよ。アレやってるから変態豚貴族って言われていて、モテない原因だって教えた方がいいんじゃね?」


 そう、30歳にもなって本人は婚約できないことを豚の様な見た目のせいだと思って居る。しかし、そんなことはない。確かにイケメンの方がいいだろうが、そんなの金使って愛人を雇えば済む話だ。

 フェミルム伯程の領地を持っていて金がある貴族が婚約すらできない何てことは普通はない。

 フェミルム伯の場合は定期的に自身の領地の中から好みのロリを見つけて売春することが原因だと思われる。


「そうは言ってもな。この前、大将にそれとなくやめさせるように言ったけどよ、ヤル理由を複数個用意してるとな。論破できねぇよ。めんどくせぇし。」

「だよなぁ。やめればモテんのにな。こんな領地持ってて勿体ないな。」


 理由の一つとして、子供のいる家族への金銭的支援だそうだ。無償で与えたら、不公平になるから好みのロリが仕事をしてその給料として支援をしている、らしい。

 更に、金をフェミルム伯が溜め込むのも良くないから、金を領地の色んな所に無作為にばらまいて経済を活性化させるため、らしい。

 他にも、色々あったが、半分以上聞き流して覚えてない。


「それより、金も手に入ったし、打ち上げ行かないか?」

「おっけー。」

「俺も予定無いし行く。」

「俺も丁度飲みたい気分だったわ。」

「お前ら、大将にした行かない言い訳はどうしたよ。」

「おまゆう?というか、俺の性癖はダイナマイトボディーだし。」

「俺はロリというより人妻だし。」

「俺はノーマルだから。」



読んでいただきありがとうございます。

もし,良ければ感想や評価を頂けたら次の励みになります。

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