も、モブオぉぉぉ
俺は、魔王をしているアスモデウスという。
俺のいる世界は、魔法と剣の世界。文明レベルは中世ヨーロッパといったところだ。当然、勇者と魔王も存在している。
この世界は平和で、争いがなく暇だ!
俺は暴れたいのだ!
暇を持て余している俺は、書類仕事を部下に任せ、たまに世界を放浪する。
今日も人間のなんとかって王国を旅している。
ああ、もちろん人間の姿に擬態している。
そんな俺は王都観光中に、かつての勇者が作ったと言われる村について聞いた。
その話を聞いた俺は、興味をそそられた。
「勇者……魔王のついとなる存在が作った村か……ひま……敵城視察として見に行ってやるか」
勇者の作ったとされる村は、王都から東に馬車で3日の距離にあるらしい。
まあ、どんな村かは知らんが、東に向かうと現れる2番目か3番目の村がそうらしいからとりあえず行けばわかるな。
「まあ、わしなら半日もかからんか」
ビュン!
「よし。村に着いた。多分ここだろう。魔王であるわしの冴え渡る勘がここだと伝えている。それにしても、勇者が作ったにしては、まあ、普通の農村って感じだな」
ドラクエとかに出てくる村をイメージしてくれ。そんな感じだから。
「とりあえず見て回ってみるか」
ふむふむふむふむ
「うむ。何もないな。帰るか」
村人たちが平和に暮らす光景がそこにはひろがっていた。
「うむ。平和じゃなぁ……ついつい。お茶を片手に混沌を振りかざしたくなるなぁ……」
もう一度村を見渡してみる。
「何もないし。次の村へと向かうかの……」
次の村へと向かおうとした時だった。
1人の少年に目が止まった。その少年は見てくれは普通のどこにでもいる普通のジャイアンの横にいるスネ夫のさらに後ろにいる名前のないモブのような存在だった。
だが、わしの目は誤魔化せん。
「あやつはわしに匹敵するかそれ以上の才能を秘めている!」
わしは可能性を秘めたやつを見つけるとついつい育てたくなってしまう。
それに、あれほどの才能を生まれさすのは忍びない。
「よし。攫うか」
シュバっ!
シャッ!
「ふぅ!旅に出る度に人をさらい鍛えてきたからさらうのにもなれたな。さて、催眠の魔法をかけて鍛えるか」
さらってきたモブの少年に催眠魔法をかける。
「さて!まずは名前を教えろ」
わしが命じればどんなことでも聞く状態となっている。
「モブオです」
「そうか。まあ、名などどうでも良いか。ただ、同情してしまうほどの名前だな」
「いえ。僕は所詮モブですのでお気になさらず」
「おお。なら、さっそく鍛えてやる」
「よろしくお願いします」
「うむ。まずは、この大陸を5周してこい。それを3日でできるようになったら、次の修行に入る」
「わかりました」
少年をさらって半年、暇なわしは各国の王都巡りをした。たまにモブオの様子を覗いたりもしたな。
「魔王様。お待たせしました。次の修行をお願いします」
モブオは立派になっていた。身長は2メートルを超え、全身ムキムキになり、逆立った金髪に、周囲には黄色のオーラを身に纏っていた。
「いや。お前……変わりすぎじゃね……まあ、良いか……最終段階に入る。わしと手合わせをしてわしに勝ったら卒業じゃ」
「わかりました。魔王様を血祭りにして差し上げます」
その言葉と一緒にお互いに拳を一閃。
お互いに弾け飛び、引き分けに終わる。
「うむ。何もいうことはない。本気のわしと引き分けたのじゃからな」
「ありがとうございました。この御恩は、いつかあなた様を血祭りに上げることで返すといたします」
「むははは!楽しみにしておくわ!」
それから、すぐに人間と争いが起きた。
最初は優勢だった魔王軍だが、勇者が現れた途端に一気に魔王城まで攻められてしまった。
今まさに目の前まで勇者たちが来ている。
「ムハハ!別に待ってなどいなかったがな!お決まりのセリフだから言わせてもらうぞ!待っていたぞ!勇者とその仲間たち……」
あれ?あやつは……「モブオ!」
そう!勇者の仲間の中にモブオがいた。
一瞬わからなかった。さらにムキムキになり、白目をの状態だったし、さらに髪が逆立ち、金色のオーラが緑色に変わっていた。
「お前を血祭りに上げてやる」
うん。完全に理性が失われているな!
「お前を血祭りに上げてやる……お前を血祭りに上げてやる」
しか言わんしな!
混沌と破壊を好む魔王のわしでも、そこまで血祭りに上げてやるなんて連呼したことないぞ。
というか、奴の方がラスボスじゃね?明らかにわしより強くね?
わしも対抗して黒いオーラとか出した方が良いかな?
「お前を血祭りに上げてやる」
まだ言っとるしぃぃぃ!!どんだけ血祭りが好きなんじゃ!そんなに好きなら、毎年ハロウィンに吸血鬼どもが「血祭り」をやっとるからそっちに行ってくれ。
「よし!みんな!ここはモブオに任せて。俺たちは遠くから観戦だ!」
ゆ、ゆうしゃあぁぁぁぁ!
「手柄は仲間だし俺が8割、モブオ以外で2割でいいな?」
「お前を血祭りに上げてやる!」
うん!そんな勇者は、血祭りに上げてやった方がよいぞ!
「俺じゃない!魔王だ!」
「魔王を血祭りに上げてやる!」
「わしじゃない!勇者じゃ!」
「……全てを血祭りに上げてやる」
おぃぃぃぃぃ!魔王のわしより魔王っぽい発言しちゃったよ!
「ちまつりにあげてやるぅぅぅぅ!」
こうして無事に全員仲良く血祭りにあげられましたとさ!
めでたしめでたし