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第4話『愛してると言って』


 「うわぁぁぁぁ!」


 智和にぶん殴られてから俺の意識は覚醒し、目の前で起きた惨劇に恐怖しながら絶叫し机を揺らせて飛び起きた。当然、クラス中は何事かと目が点になるが、俺は気が動転し体がフラついている。


 殴り過ぎたと智和が慌てて俺に謝罪して来たが、そんなことに構っている余裕など微塵も無い。まずは、これから話しかけて来るだろう立華に顔を向けた。


 向けたのだが、明らかに俺の記憶に存在しない事態が目の前で淡々と起こっている。理由を聞く為に俺は智和に口を開く。


 「泣いてんじゃん! 本当に悪かったって!」

 「なぁ智和……。りっちゃんはどこ行ったんだ?」

 「あー。相沢さんなら授業が終わってすぐ帰ったぞ」

 「なんだって!?」


 過去改変が起こっていた。本来の過去であれば立華が俺を心配して駆け寄って来るはずなのに、その本人がこの場から居なくなったことで、起こる筈だったイベントが綺麗サッパリ無くなってしまったのである。


|(マズイ事態になっちまったよ。どうすればいいんだ?)


 顔面蒼白になる俺に智和は、気を遣ったかの様に心配しだして、立華の行き先について教えてくれた。何だかんだで智和は、いつもおちゃらけてはいるが心優しい男なのである。


 ーーただし、女からはモテないが。


 「相沢さんなら真っ直ぐ家に帰るって友達連中と話してたぞ」

 「分かったありがとう! 悪りぃ今日は一緒に帰れねぇから!」

 「はぁ? カラオケどうすんだよ?」

 「また今度!」


 本当は、カラオケに行って馬鹿騒ぎしていた過去だけどそんなことをしている余裕がない。一世一代の初デートで、あんな惨劇を見せられたんだ。


 過去が変わったのなら今日、立華は死ぬのかもしれない。無我夢中で俺は、立華の家に進路を向けて走り出した。


 「りっちゃん!」


 やっとの思いで、なんとか立華の姿が見えて俺はなりふり構わず盛大に叫ぶ。すると、立華がチラッと俺の方を向き逃げ始める。


|(何がどうなってんだチクショー!)


 立華に追いついた俺は、肩を掴み頼み込みながら何とか静止させることに成功した。


 「何で逃げるんだよ」

 「何でてなに? 今更話しかけないで!」

 「りっちゃん何言ってーー」

 「もう私に関わらないでくれる?」


 強い口調。鋭い眼差しで睨みつける彼女に、俺は声を出す事が出来なかった。


♦︎


 四月二十日の今日、彼女は死ぬ事はなかった。だが、俺とは一切の会話を受け付けず交流が出来ないまま 『X dey』の八月最終日がやってくる。


 必死に俺は立華を探し回ったが中々見つからず、時間だけが過ぎて夜になってしまった。早く見つけなければ立華が死んでしまう。


 噂で聞いた、あの屋上はどうだろうか?


 その可能性に賭けて、俺は事故現場になる現場で待ち伏せる事にした。


 数分待つと、誰かが走り去り転落防止用フェンスを乗り越えてビルの縁で立っていた。その人影は紛れもなく立華である。


 「こんなところでなにしてるんだ?」

 「なんだ、ゴロちゃんか。何でここが分かったと?」

 「そんなことはどうでもいい。そこから離れろ」

 「ゴロちゃんは優しいな。あんなに突き放したのに私の心配するなんて」

 「当たり前やろ! 俺はりっちゃんを助けに来たんだぜ?」


 妙にしおらしくて、俺は困惑している。一体、彼女に何をしたらこんな顔をさせるのか。涙は流していないが、まるで泣いているのだと思ってしまった。


 「そっか、ありがとう。でも無理や。それは叶わん。だからもし、私にもし気があるってのなら、今度は未来で私を『愛してる』って言ってくれる?」

 「それどういうーー」


 言葉を言いかけた時、強い強風が吹きこれはやばいと俺は悟る。嫌な気配は、すぐそこまでやって来ていたのだから。


 「じゃあね。ゴロちゃん」

 「待て! りっちゃん!」


 言葉だけ置き去りにし、彼女はビルの屋上から飛びだった。


 また俺は助ける事が出来なかった。これで惨劇は二度目となる。絶望している余裕など、俺にはないのだから。


 また、金属の様な物が足元に落ちてきた。なんとなく分かるが『時渡り』だろう。


|(次こそは必ず助ける!!)


 何の躊躇もなく、俺は『時渡り』を喉元に突き刺し血を吐きながら絶命した。


♦︎


 「いつまで寝てんだよタコ助!」


 いつもの様に俺は、智和にぶん殴られて俺の意識は覚醒する。だが、今回はする事が決まってるんだ。


 『相沢立華に告白する』


 何かが変わるかも知れない。俺も一歩、足を踏み出す決心をした。


 私、平吾郎は平成七年の四月、三度目のタイムリープにどうやら成功したみたいです。


お読みいただき、ありがとうございました!


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