第3話『変える力』
「ねぇー。私が今日誕生日なの知ってるでしょ? 何かプレゼントしてよ」
「忘れる訳無いじゃんか。でも高価な物は買えないぞ?」
「いいよ! ゴロちゃんから貰えるなら何でも嬉しい」
「変なもん渡されても文句言うなよ」
デート感はあんまり無いけれど、それなりに楽しく立華とショッピングを満喫していた。四月二十日、その日が彼女の誕生日なのは勿論知っていたし忘れた事も無い。
だけど、過去の俺は俺なんかが誕生日を祝うのは今更だし、学校の男子全員を敵に回すような行為に当たるので、敢えて何もしなかったんだ。
ーー嘘である。
言い訳ばっか並べて、立華から逃げていたのはすべからず俺であり向き合う事を放棄していた。俺は今貰ったチャンスを生かさせばならない。
彼女の死を止めなければならないから。
雑貨屋さんに入店する俺と立華は、店内を物色していると真紅に輝くブレスレットが複数並べられている。普段あまり綺麗な物に無頓着な俺でも少しだけ、美しいなと感じさせられていた。
「ゴロちゃん! これがいい!」
「確かに綺麗だなーっておい! 高いじゃないか!」
「ダメ〜?」
「分かりましたよ。買いますよ」
「うぁーい! ゴロちゃんありがとう。一生大事にするね」
出費は痛かったけど、まぁ喜んで貰えたようでしてとりあえずは買い物を終えた。十数年、俺が立華の誕生日を祝わなかった戒めだと自分に言い聞かせて自分の過ちを悔いたのでした。
♦︎
駅のホームまでの帰り道に、お互いにアイスを頬張ったり冗談を言い合ったり、なんだか幼少の頃に戻ったみたいだ。
立華は、昔の結婚の約束を覚えているのだろうか。まぁ、十中八九覚えてはいないであろう。ふとしたタイミングで俺は昔話しを掘り下げていた。
「なぁ、昔した約束って覚えてる?」
「え? 何それ。そんな約束したっけ?」
「いや。覚えてないんならその方がいいんだ」
「何それ。意味分かんない」
まぁ、当然だろうな。覚えている方がどうかしている。きっと俺が異常なんだろうな。立華に笑って誤魔化しながら目的地の駅のホームまで辿り着いていた。
今日はヤケに人が多くて混んでいる。滅多にないことだけど、何かイベントでもあるんだろうか。
電車の音が鳴り響きホームに向かって来ていた。俺と立華は別の線での帰りなので先に見送ろうとしたが、立華が何かバツが悪い顔つきになり控えめに口を開いた。
「ねぇ、ゴロちゃん昔の約束覚えてる?」
「ーーえ? それってどういう……」
「実は私本当は……」
立華が何か言いかけていた時、何者かの手がりっちゃんの背中を強く押していた。
それは一瞬で。儚く無慈悲。電車が向かってくるタイミングに合わせたみたいに、立華はホームから飛んでいた。
「りっちゃん!!」
「ごめんねゴロちゃん」
何の躊躇もなく電車は立華を引き潰した。悪魔が嘲笑うかの様に死を見せつけられて、俺はただその状況で絶叫するしかなかったんです。
「うぁぁぁ!! どうしてなんや!! 死ぬのはまだの筈やろがー!!」
駅中騒然とし、俺はただ地面を殴りつけることしか出来なかった。だが、犯人らしき人物が走って逃走するのをしっかり目に焼き付ける。
これではっきりした。相沢立華は他殺である。
絶望に伏していると、カランと金属が落ちて来た音がした。
それは、俺が見た事のあるタイムリープするのに使った鋭く光る刀。宝刀『時渡り』が足元に落ちている。
「これでハッキリした。ありがとう時渡り。俺は命を賭けて立華を必ず救ってみせる!」
宝刀『時渡り』を首元に突き刺して、俺はこの場で自決した。死の経験が蓄積する度に、恐怖に支配されそうになる。
俺の行動は、何か間違っていたのだろうか。
「戻れー!!」
薄れいく記憶の中で後悔だけが渦巻いていた。
♦︎
「いつまで寝てんだよタコ助!」
智和に、頭を叩かれて目が覚めた。今度こそ俺はやり直してみせる。相沢立華が死なない世界を作る為に。
私、平吾郎は平成七年四月、二度目のタイムリープになんとか成功したようです。
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