みんな、一緒に行くぞッ!
「さぁてさてさてェ〜ッ!複数回に渡る発言の無視と同時に繰り出された攻撃に流石のリンフウくんも堪忍袋バチギレッ!!端整な顔をグチャグチャにしながら襲いかかって来ててとても怖いッ!!泣いちゃうッ!!
だァが残念なことに恐怖に震え両手両足を丸めているワシ(三十代)は【狂化】くんの自動操縦に全てを任しているため、ラーは俺の僕となる─────ッ!!」
「【王煉焔付呪】、技能【獄炎槍撃】、技能【炎弧連閃】ァッ!!死ねこのクソッ!!クソバカ狂人がッ!!」
「あ!いっけないんだぁ〜〜ッ!!死ねとか他人に言っちゃいけないんだぞッ!!インターネットのお互いに素顔が見えないというのは一般的な生活ではありえない状況。その非現実感故に罵倒の語彙が普段以上に過激なものが出てしまうというのは稀なことではなく、多くの人が無意識にそうなっているでしょう。ですが、どこに呟こうと画面の向こうには誰か知らない人がその言葉を見聞きし傷ついているのです。どうか皆さんはその事実を忘れず、発言の前に一度それを思い浮かべてからという事を心がけるようにしましょう。その地道な努力がインターネットいじめを減らしていくのです」
「技能【爆貫炎槍】ッ!!」
「おっと危な─────いッ!!今のはおそらく99.99%の確率で貫通攻撃ですね~っ!あれ喰らうと普通にしっかりとした痛みとダメージが襲って来るのでマジでやめてください。お願います」
にしてもエグいな〜〜〜これはッ!!
えっ!?なにがエグいかって!?まさかご存知ないのですかね皆さんはッ!?
はぁ〜〜しゃあなし教えてたるわ……耳の穴から反対側の耳ひっぱり出すくらいかっぽじってよく聞くのだよ?
────これ、戦闘開始からもう1時間経ってますッ!!
つまり千日手の状態なんですねェ〜〜クソゲッ!!決め手が欠けるにも程があるだろッ!!?あり得んッ!!!
まぁねェ〜……ワッシの【狂化】くんの戦闘性能が諸々の強化によって初期と比べて格段というか、もう別スキル並の性能を獲得してしまっているからねェ〜……
というかそもそもアバターの運動性能をほぼ決める筋力値に極振り以上の桁ぶち込んでるからから機体性能も流石に大抵の相手には圧倒的ィ……
でもそこを技術とか諸々で補いつつ渡り合って来るのがこのリンフウくんッ!!強い…ッ!!思った五千万倍強い…ッ!!正直一巻終盤のボス枠雑魚かと思ってた……ッ!!
というか正味こんなふざけてられないくらい本格的にマズイんだよなぁ……普通に奥の手あり得るしね……
ん〜〜〜〜流石にガチ勢相手だと手が足りんッ!!ボク必殺【突き刺す剣】しかないッ!!リンフウくん複数当然のようにあるッ!!卑怯者ォ────ッ!!
「技能【裂ける槍】、技能【荊棘の毒】ッ!!」
「まァた来たよこのクソ技ッ!!本当に強いタイプのバカの一つ覚えやめろぉッ!!勝てないッ!!」
特にこの技マジでクソだからみんなに共有したいッ!
これねぇ〜?お得意の技能【裂ける槍】で一時的に超分裂させたあの赤い槍にねぇ〜?高倍率のダメージ入る毒効果を付与してねェ〜?全ぇ〜〜部ボクに叩き込んで来るの舐めんなクソボケナスッッ!!!
絶ッ対に俺操作してたら死んでま〜す^^乙で〜す^^戦闘中急にゲーム性変えんな。対応できるわけないだろ。
まぁ【狂化】くんは有能だから一発食らったらもう全回避してるけどねっ!強いッ!最強ッ!!実質青眼ッ!!
「ん〜〜〜〜〜にしても本当に何も無いな?先行1ターン目に相手になんかいないと使えない通常魔法だけ来た気分…気分……?……ハウアッ!!」
──────来た来た来た来たァ〜〜ッ!!!
これなんすわぁ〜〜ッ!!脳の皮膜からぷちゅぷちゅエキスが漏れ出るこの感覚ゥ〜〜ッ!!
自分が天才だと錯覚してポエムを量産した青春を思い出す万能感ッ!!それが再度この俺の全身を満たしているのがわかるッ!!
「思いついたなら即・直・行ッ!!みんな────ッ!!オラに力を分けてくれ─────ッ!!」
俺は一時間前に手に入れたばかりの技能を確認し、思いついた事は実現可能と判断ッ!!内心ニヤニヤと口角を爆上げしつつ、理想達成のためその技能の名を高らかに宣言する─────ッ!!
「技能【自我介入】、技能【狂気洗練】ッ!!
選択対象は─────テメェだ、モリィ〜〜ッ!!」
瞬間、反転ッ!!【狂化】に支配された身体は、これまで目前にて幾度と数え切れぬ剣閃を重ねてきた敵たるリンフウから興味を無くしたかの如く後方へと突然に駆け出す。
「なっ─────」
予想通りというかいつも通りというか、想定外の事態にリンフウは一瞬硬直。とはいえこれは仕方ないよねぇ〜普通無拍子で後方に走り出すとかあり得んからねぇ〜
つまり俺の天才的策略に嵌まったという事ッ!!故にしゃあなしッ!!あたまよくてごめんねッ!!chuッ!!
「────ちょ、急になッ」
そして同時、超速で大地を蹴りつけた身体は瞬間移動と錯覚する速度でモリに接近し────
「本当にごめんモリッ!!俺絶対に負けないから許してくれッ!!石は多分倍くらいにして返すッ!!あと本当に今度なんか奢るから許してくれッ!!」
────その首を両断し、撥ね飛ばすッ!!
当然にモリのHPは一瞬にして全損し、その肉体は粒子に還るッ!!ごめんッ!!
「これねぇ、以前聞いた話の試しなんですけど────」
そしてすかさず標的を変更、最も近くにいたブランの首を撥ね飛ばしていくゥ〜ッ!!当然彼にもなんか買います。
「どうやらβテストの時に集団PK…特に初心者狙ったやつが流行ったみたいなんすよね。それも自分がパーティに入ったり誘ったりで仲間のフリして襲うやつ。
元々そういう嫌がらせすると経験値獲得が長時間爆減する仕様はあったらしいんですけど、まぁそれでもやる奴はやると」
そんで最後にオキを選択するが────ここはお祈りっすねェ〜!!
モリを最初にやれたのはタイミング的なラッキーですッ!!普通に考えて自分たちを守るために一時間ガチバトルかましてた奴が急に殺しに来るとか思わんからね……その隙を狙えたのがデカ────いッ!説明不要ッ!!
ブランは流石にステータス差がエグすぎるので悲しいけれども当然の結果。けどオキはねぇ〜……
オキって言ったらうちの玄人枠二人目ですからねぇ〜これはちょっとねぇ、簡単に殺させちゃくれぁせんよ……
不意を狙えたわけでもない上に、モリと同様に玄人のゲーマー。察して貰えないと後ろのリンフウが追いついて作戦が終わる……ッ!つまりは詰み……ッ!!
完全な賭け、ギャンブルだッ!!お願いだ俺の友情ッ!!オキに意図を察させてくれ─────ッ!!
「そこで運営さんは新たな仕様を追加っ!(本当にされたのかは不明)その仕様と言うのは〜〜」
─────直後、オキの頭が宙を舞う。
無防備だった訳では無い、武器にその手は届いていた。
しかし─────敢えて。
敢えてオキは、その手の武器で俺の攻撃を防がなかったのだ。
─────最高の友達だぜ、お前らッ!!
「ズバリ、武装に対する呪詛の確定付与ッ!!」
そしてここでも俺は賭けに勝利をみせるッ!ステータス欄から眺めた装備詳細、『不神躯・中庸』の技能欄に輝く『【呪詛】保管:3』の文字列ッ!!
実在不明の仕様は実際に存在したッ!!
この瞬間、俺の勝利は確定するッ!!
そうだッ!!足りないのならば足せばいい──────ッ!!
俺はいつぞやの戦いの後、何故か持っていた崩壊しかけの剣を取り出す!
この剣自体はもう使えないし使う気も無い、だが欲しいものはその中に入っているッ!!
「多分覚えたっ!!みんな、一緒に行くぞッ!!技能【自我介入】ッ!!技能【呪詛吸収強化】ッ!!
【固有付与】ッ、技能【裂ける槍】技能【荊棘の毒】技能【魔剣彩撃】ッ!!
技能【狂気洗練】─────ッ!!」
一応所持権的にはオッサンの物かもなので壊れかけの元・ロイの魔剣『カラドボルグ』をポッケにしまいつつ、再度標的をリンフウに戻すッ!!
そして────────ッ!!
「このォ、狂人がああああああああああああああああああ──────ッッ!!?」
「サァサッ!!思いつきの奥の手、とくとご覧あれェえええええええ─────ッッ!!!
技能【自我介入】ッ!技能【裂ける槍】ッ!!」
天へと構えた大剣は、直後数十の剣へと分裂するッ!!最大数は凡そ百ッ!!
でも相手にホーミング攻撃かます【荊棘の毒】が効果を与えられるのは五十程度ッ!!わりと少ないねッ!!
「ッ、何故俺の────まさかッ!?」
「そのまさかを超えるのが俺クオリティよッ!!技能【自我介入】ッ!技能【荊棘の毒】ッ!技能【魔剣炎撃】ッ!!技能【魔剣風撃】ッ!!技能【魔剣水撃】ッ!!技能【魔剣土撃】ッ!!技能【魔剣光撃】ッ!!技能【魔剣闇撃】ッ!!技能【魔剣天撃】─────ッ!!」
天を覆う大剣の群れは、虹光を放ち敵を睨むッ!!
炎・風・水・土・光・闇・天、ゲーム内における全ての属性を唯一つの技能権限で扱えるのが『カラドボルグ』が有する超レア技能【魔剣彩撃】ッ!!
勿論魔力の消費は軽くないッ!!むしろ重いとすら言えるッ!!実際今のでほぼスッカラカンだッ!!
だが賭けるだけの価値はあったァ────ッ!!この一撃は、波状の連撃は必ずお前の命を奪い尽くすッッ!!!
「トドメだァ────ッッ!!死にやがれ、リンフウうううううううううううううううううう───────ッッッ!!!」
「あ、あああああああああ、ああああああ───────ッッッ!!!
技能ッ!!!【心臓穿つ必殺の槍】イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ────────ッッッ!!!!」
虹光が天より注ぐ中、尚もリンフウは諦めないッ!!四肢が細断され耳が削げ身体に大剣が突き刺さって─────なおもッ!!
その口は、奥の手の技能を宣言する─────ッ!!
その瞬間、大地に落ちた真紅の槍は空を駆け抜けるッ!!大剣の降り注ぐその狭間を抜けて、抜けて、突き抜けて────俺の元へッ!!
一点狙うは俺の心臓ッ!!確かにそこを抜かれてしまえば、俺とて流石に死に絶えるだろうなァ〜〜奥の手に相応しい技能ッ!!
─────だがッ!!
「技能─────」
俺はただ一つ、手元に残した大剣を掴む!
いや────掴むのではない、掴んでしまっては心臓を守れない。
姿勢が崩れれば心臓を狙う槍の起動は変わってしまう。こちらが行うのは槍の撃退ではなく、迎撃であるべき。
なら─────撃ち出すだけだッ!!
「─────【突き刺す剣】ッ!!」
武器を用いた技能攻撃には補正がかかる。ある程度の対象誤差までなら自動的な補正によって中和され、相当にエイムが悪くなければほぼ当たる─────その性質を利用させて貰うぞぉッ!!
俺は手のひらに乗せた大剣を反対の腕、その拳によって撃ち放つッッ!!!当然遠距離からではない、至近距離に寄せてからッッ!!!流石に遠距離狙える自信は無いからねッッ!!!
そうして撃ち放たれた大剣は【突き刺す剣】の魔力光を纏いながら、狙い通りに真紅の槍と衝突した─────ッ!!
直後、切っ先が割れたのは真紅の槍ッ!!
【絶対貫通】の性質によって美しい槍は2つにバリバリと裂けてゆき、1秒とせずに一対へと分かたれてしまう。
されどなおも槍は直進するッ!!俺の心臓を狙って、前へっ!!前へとッ!!
──────瞬間、爆散ッ!!
裂けた槍に残存した魔力は与えられた命令へ忠実に従おうとしてみせた、しかしそれは己の死を意味するッッ!!!
常に一つの方向へ流れつづける性質を持つ魔力は、その流れる方向が逆になるだけで容易く爆散してしまうッ!!
それは多くの魔力を持つ者や、より精密な魔力道具ならばより激しくッッ!!!
つまり近くだったので結局被弾しました熱いッ!!!まるで夏の砂浜のようッ!!!まぁ痛覚設定切ってるんですけどね、初見さんッッ!!!
「馬鹿なァあああああ────ッッ!!僕が、僕がああああああああああああああッッ!!!?うわあああああああああああああああああああああ───────────ッッ!!!!」
「リンフウ、これが─────結束の力だッ!!!」
光の雨に打たれながら、絶望の悲鳴を上げながら、リンフウの身体は粒子と消える。
長きに渡る戦いだった……なんだか一年ぐらい戦っていたような気さえ感じる戦いだった………
オッサン!リオ!モリ!ブラン!オキ!
終わったよ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!
「さぁてっ!そんじゃここからは【狂化】終わりまでのフリータ──────イムッ!!
2つ目ぐらいのイベント動画『【努力】イベントでロイヤルジュエル集める簡単な方法【未来】』の撮影開始だァ──────ッッ!!!プレイヤーの皆さん襲ってプリ──────ズッ!!!」
ちなこのあと結局イベント終わりまで【狂化】が続いたので沢山【ロイヤルジュエル】が集まりました!すっごく嬉しいねッ!!
ブクマ・ポイント・いいね・感想等いただけると幸いです!モチベが上がります!
※なんかいらない部分あったので消しました。
※技能名『荊棘の毒槍』→『荊棘の毒』に変更しました。




