敵対意志無いって言ったじゃんッ!
「…見たとは?」
「見ましたよね、わかります」
全く覚えが無いのでとりあえず質問するが、少女は断固とした様子で冷や汗をかきつつ断定の言葉を口にし、より強く睨みつける。
えぇ…彼女的にそこはもう否定しようのない事実なんだぁ〜そっかぁ…
しゃあねぇ彼女的に何見られたと思ってるか考えるかぁ〜っ!聞かん坊の子供に対してやさしさの化身すぎるわぁ…!
してなんだろうなぁ〜?
判断の鍵となるのは、彼女がなぜそこまで『見られた』事に執着しているか…
何か見られてまずいモノを彼女が持っていたか?それを見られたかもと錯覚したことで、「敵対意志はない」と告げて安心させてから襲う算段であると、思考したのかもだ。
例えば【ロイヤルジュエル】を持って…いや、それはないな。
ブリリアントカットは光をよく反射して煌めく。
あのタイミングで手にしていたとして、俺が「なんかキラキラしてる〜」と思っていない筈がない、ではジュエルではない何か…ハッ!
「なるほど、そういう事か…ッ!」
「…?」
ワシに電流走る────ッ!!
そうだ…!彼女は装備が鎧的なものでなく普通の洋服的な、スカートとかを纏っている!
そして何より気づくべきだった!
彼女は本当に少女で、多感な時期であるという事に…ッ!!
「…はい、見ました」
彼女自身が「見られた」と…そう感じてしまっているのであれば、それを否定する事は彼女の自尊心を崩す事に他ならない。
ならば俺は、自ら小児性愛の汚名を被ろう!前途ある少女の為にッ!!
「やっぱり見られてた…!」
少女は強く鋭い眼光を以てこちらを睨み直す!
無実の罪であるが、俺はそれを受け止めよう…彼女を傷つけない為に────ッ!
▽▽▽▽
────くっそ!やっぱり見られてた…ッ!
迂闊だったという一言しかないだろう…!
イベント開始から既に3日、アタシたちと同じように森へと配置されたプレイヤー…それこそ私に襲いかかったPKプレイヤーもいなくなったものだと考えていた…
廃都市にリスポーンしたプレイヤーも見当たらなかったし、見られている気配も無かったから誰もいないものだと思ってたからこんな事に…!
とはいえ、起こったことはもう消せない。
幸いというか、あの距離では【宝の地図】の内容は見られてはいないはず…
ならば私が考えるべきは、どうにかして彼を────瞬間、彼は妙なことを口にした。
▽▽▽▽
「まぁ…なんですか、同じ目的で来たわけですから…水に流してやくれないですかね?」
彼女のスカート、その中を覗いてしまった…その話は事実でないにしろ認めよう。
とはいえ、自分から見たいと思って見てしまったわけではないとは伝えさせてもらいたい…っ!
というか彼女もこの山頂に長居しようという様子だし、変に意識されるのは困るッ!
折角のこの展望、せめて昼飯を食う時間ぐらいは気まずい思いにさせないでくれッ!!
▽▽▽▽
────まさか、気づいている…いや、知っているのッ!?
ここに【宝の地図】に記された宝物が眠っているということを、彼もまたッ!
そう…そうね、考えて無かったけど確かにそう。
私は【宝の地図】が1つしかないと考えていたけど、一度回収すれば再度出現する可能性など十二分にあり得る。
というか、彼らが山頂に現れた時点で気づくべきだった…!普通に考えて、こんな山に理由なく登るなんて事ありえないんだからッ!
ダメねアタシ…【宝の地図】を手に入れた事で頭がいっぱいになって、周りが見えなくなってた…
───そうしてアタシは目を見開く。
目前に立ち、相対するプレイヤーを倒す為にッ!!
「技能【静止の魔眼】───ッ!」
▽▽▽▽
蒼色に光る彼女の眼。
突如として発された言葉、俺は驚愕の声を上げ─────ない。
(ちょ、動けんがッ!?ナニコレって声も出ねェ!)
「ご忠告どうもありがとう…でも御生憎さま、私達に譲る気は無いの!
エス、ルー!追い払うわよッ!」
「んな急に、まぁやるっすけどッ!!」
「ロールさん急に言い出すのマジでやめろよなァ!!」
俺が急な異常事に思考が定まらない中、かかった声と共に二人の男は武器を取る。
剣と杖。一人は構えると共に陣を開き、一人は構えと共に駆けて来たッ!
ちょちょちょなんでこの人達襲いかかってくるわけッ!?そんなにパンツ見られたの嫌だったんですかねぇッ!?
軽率に濡れ衣など被らなければよかった───半ばキレそうな感情を抱きつつ、俺は目前まで迫ったエスと呼ばれた男の剣が振られる光景をただ眺める他無かった────。
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