ようやく辿り着いたぜっ!!
────探索開始から8時間。
俺達は、様々な地獄を渡り歩いた。
「おいバサラ、足元気をつけ」
「あっ悪ィ俺の方が踏んだッ!!」
「「「ふざけんなよテメェ──ッ!?」」」
ある時は、トラップに満ちた仕掛けの小道。
モリがミスって起動の仕掛けを踏んだ事で転がってきた大玉により、回避した全ての罠に襲いかかられた…
「よっしゃ任せろ、物理はお手の物じゃッ!」
「嘘つくな後ろ下がれッ!」
「俺!俺やるからっ!」
「バサラちゃんやると全破壊がオチねェ〜」
ある時は、扉の開閉を妨げる石像を移動させる(壊すと中からモンスターが出てくる)を移動させようとして───
「せーので行くぞ」
「わかったわ!」
「「せーのっ」」
「うぐゥッ!!」
「ちょオッサ──あっ」
オッサンが腰をいわし、支える力を失った事で石像粉砕。結局よくわからんモンスターが解き放たれて戦う事になった…
「なにこれクイズ?雑学なら5年前で止まってるぞ」
「じゃあもうボロボロ確定じゃん」
「ってかクイズじゃねぇから、○×ゲームだから」
「小学校の校庭でよくやったわねぇ〜」
「うちもっぱらトランプやってたな」
「え、カードゲームよかった系?」
「流石にトレカ系は駄目だった」
「地域格差ってヤツを強く感じるわぁ」
「メンバーの一人が必死に戦ってるのに小学校の思い出に浸るなッ!!」
ある時は、超高性能AIとの○×ゲーム対決。
必死の形相で戦うモリを傍目に雑談をしてたら割と怒られた…
「泳げる人〜?」
「中2までスイミングスクールに通い、25mをバタ足けのびでクリアしましたッ!!」
「平泳ぎで足を攣って溺れたことがあります!」
「万年欠席でしたッ!」
「全員クオリティカスなのは同じなのに経歴は全く違うの興味深いわねぇ…?」
ある時は、より深くへ続く奈落の湖。
オッサンはドワーフ故の体型で泳げ無い事から探索を泳げそう組に託すも、誰一人乗り気でなかったためじゃんけんとなる。結果俺が負け、全員に25mけのびの貫禄を見せつける事となった…
これだけマジで鬱。
「おいモリ【光槍雨】使えよ」
「アレ名前の割に単体串刺しにする魔法なんだわ」
「じゃああそこたむろしてるモンスター一掃出来る魔法あるだろ、使って?」
「魔力の温存って知ってるか〜??」
「魔力は回復遅いからねぇ、光属性は消費が軽いみたいだけど」
「俺、【狂化】しようかッ!!」
「コイツいつも狂化しようとしてんな」
「9時間逃げないと殺されるとか地獄なので駄目で〜すっ!死ねェ!」
「口が粗暴すぎる、ストレス貯まってんだな…」
「誰のせいだと思ってる〜??」
ある時は、最奥に繋ぐ大広間。
そこを塞ぐよう群れる数多のモンスター達を倒さねば最後の道は開かれないというのに、全てのトラップに引っ掛かってここまで辿り着いた事にモリのストレスが爆発。
仲間割れを引き起こし、オッサンが頑張った事で場は収まった…
そうして俺達は、身を襲うあらゆる困難を乗り越え、道を進んだ。
迷宮も、罠も、モンスターも、全てを越えた奈落の道その最奥に隠された宝物殿…そこに待ち受けるものとは一体何なのか─────!?
▽▽▽▽
「みたいな煽り思いついたけどどうよ」
「どうよイズ何?」
「煽り考える動画撮っとけや」
「二人まだストレス貯まってるのぉ?」
「いやこれは平常運転」
「平時の態度にしては粗暴すぎない?」
などと、やけ〜に長い坂道を登りつつ思考した無意味な総集編を伝えてみればめちゃめちゃに罵られた。悲しい…;;
というかこの煽り嘘じゃね?
着いてないからまだ何か待ち受けてるとかわからんぞ、詐欺しちまったなぁ〜
まぁ動画撮ってねぇしいいだろっ!
つまり仮に動画撮ってたら使うんですけどね、初見さん!
「ってかこの坂長すぎるッ!もう20分は登ってんじゃねぇかァ!?」
「というか勾配キツすぎるだろ馬鹿かッ!?」
「確かにこれゲームじゃないと足腰死ぬなぁ〜」
「バサラちゃん背負ってくれてありがとうねぇ〜」
「筋力・体力馬鹿はエグいな、なんで人一人背負って平然としてるわけ?」
「真面目に頑張ってきたからなッ!!」
オッサンは手足が短いので俺が背負って運んでいます。ドワーフだからね…この実質山の斜面ぐらい傾斜あるクソ坂を簡単には登れんのだよ。
「…お?あそこちょっと開けてそうじゃないか?」
動画を聞くのも飽きてきたので、気まぐれに覗き込んだ荒い息と愚痴を吐きながら進む二人の目前。
何やら少し光が漏れ、平地となっていそうな場所が見えた!ようやく目的地っぽいなぁッ!
こりゃ一部のモンスターしか【ロイヤルジュエル】食べに来ませんわ…
モリやオキも俺の言葉でそれに気づいたようで「おっマジじゃん!」と少し表情が明るくなった。よかったねぇ〜!
「とりま、何あるかわからんし気張るぞ」
「面倒〜そこそこで行くわ」
「ねむくなってきた〜」
「魔力切れたから何かあっても眺めてるわね〜」
「コイツら…ッ!」
しかし面倒なので適当に返したらすぐ青筋浮かべちゃった。そんなにストレスばっかりだとハゲちゃうぞっ!寛容になろうぜ?
でもなったら甘えてもっと遊び回るので悪しからず!ごめんね〜ッ!!
そんな感じにごたつきながらも、少しすれば見えた先の空間に辿り着いた。
空間の様相は先の洞窟とさして変わらず、地面を崩して作った空間のような人の干渉は感じられない空間を流用したような場所。
しかしこれまでと違う点が一つあり…
「…どうする、逃げる?」
「アイツの後ろにしか出口ないんだよなぁ〜」
山のように積まれた【ロイヤルジュエル】の上、寝息を立てる巨大なモンスター。
造形的にはティラノザウルスに近いが、これまでに見たものよりも遥かに巨体で、どれよりも禍々しい外見をしていた。
あとなんかぬめっていて、キショい!
絶対に関わっちゃ駄目なタイプの見た目で、俺らとしても「触らぬ神に祟りなし」的に逃げたい感じなのだが、その体躯に隠された後方の壁にはこれまで見つからなかった外への道らしき整備された扉の姿。
つまる話、この奈落から出るにはこのモンスターへの干渉が不可欠。
「起きた後、隙見て通れたりしないのかしら?」
「絶対あれプレイヤー近づくまで起きないけど近づいたら起きて直後に殺しに来るタイプでしょ」
「人柱になりたい人〜ッ!」
「「「ヤダッ!」」」
素晴らしい提案をしたのに拒絶されてしまった、くそぅ!
とはいえ、まず動いてみなければ埒が明かないというのも事実。止まっているのは時間の無駄だろう。
「ならば仕方ない、俺がなろう!」
という訳で、俺が人柱になりますッ!!
鎧は脱げないので準備よし、剣は重いので準備よし、アイテムはどうせ使わないので準備よしっ!完璧だなッ!
早速キショティラノくんに─────
「待て待て待て待て、気狂ったか?」
「せめて全員で行こうとかさぁ…」
「【ロイヤルジュエル】取られたら詰むんだけどぉ?」
突撃しようと止められた、なんでじゃッ!
別に考えなしじゃないからええやろッ!
まぁ俺はやさしさの化身なので怒らず、作戦を説明してやるのだッ!えらいっ!
「だってメタ的にまともに戦っても多分勝てないように設計されてるじゃんあれ?
倒したら馬鹿みたいな量ジュエルもってかれるから。
だからとりま【狂化】してティラノと戦ってる間にお前ら逃がすって寸法よッ!」
ん〜!まさに天才の発想ッ!これはIQアインシュタインの5乗ありますわ〜ッ!!
「…確かに平面積だから上に逃げればあんまし関係ないのか?」
「バサラ先生〜!逃げてる最中にティラノ負けたらどうなるんですか〜!」
「必死こいて逃げて下さいッ!」
「やっぱり作戦雑ねぇ〜!」
「でも実際それぐらいしか方法ないじゃん?」
「確かに思いつかないの腹立つ」
最近すぐに腹立つじゃんコイツら〜更年期?
俺も人のこと言ってられない時期か…頭ふにゃふにゃにしてみんなと仲良く出来るようにしないと…
「というか俺ずっと観戦してたからそろそろ働きたいんですわ、よろしくて?」
「えーめんどいからずっと無職でよくない?」
「ゲーム遊ばせてよッ!!みんなやっててズルいッ!!」
「自分でクソ構成にしたのに逆ギレしやがった!」
【狂化】の性能上がらないかなぁ〜!そこだけ不満ッ!!パーティメンバーだけ襲わないようになってくれりゃそれでいいのッ!!
不満を吐き出す俺と不合理を指摘するモリとオキ3人で文句をブーブーと言い合う中──
「ん〜まぁバサラちゃんからジュエル回収しておけば別にいいんじゃなぁい?」
何も言わず思案していたオッサンが、一人肯定の意見を口にした。オッサン…!
「それはまぁ…だが、殺されると面倒じゃないか?」
「バサラちゃんが挑んで負ければ1人の欠員になるけど私達は逃げられる。
バサラちゃんが勝った上、【狂化】が解ける前に追いつかれたら3人の欠員にはなるけど…
まぁ多分リスポーン出来るし、どちらにせよジュエルはマイナスにならない。無くなるのは時間くらいかしら?
今は18個の【ロイヤルジュエル】を持ってる訳だけど、流石に結構リードしてると思うわよ。
多分ここ、逃げ出せないの前提で組まれてるから。
だから多少の時間的マイナスはチャラに出来ると思うわ。
危険性考えて逃げれずに18個止まりと、バサラちゃんに止めてもらっている内に逃げて地上の石探しに戻るの、どっちがいいかしら?」
お〜!これはゲーム玄人の意見ッ!
この前も同じような事あった気がするが、オッサンは実年齢何歳なのだろうか…?協力ゲーのプラス要素とマイナス要素の計算が速すぎないか?
経験則的な判断力に関心しつつ、オッサンの意見を得て思考するモリを見つめる。
モリは「確かにそれはそうだな」的に表情を変えて顎に手を置き、5秒程度して俯いた表を上げた。
「まぁそれでいいか…バサラ、やってこい」
「お、いいのね!んじゃとりまティラノのヘイト受けとくから【狂化】が戦ってる内に逃げてくれよな!」
祝ッ!オッサンのおはなしのおかげで許諾下りるッ!!
となれば早速いっちゃうぞっ!もう準備はできてるからねッ!
俺は気分的に軽く関節を鳴らしつつ、眠るティラノの元に歩を進めた!
一歩二歩三歩、警戒することなく近寄り10mほどにまで接近するとようやくティラノも気づいたようで立ち上がろうとするが────
「技能【突き刺す剣】────ッ!!」
遅いんだよなぁ〜ッ!?
ティラノを引き寄せ厚い表皮を貫通して腹を突き刺すと、直後に魔力が内部から爆裂ッ!!
これには流石にティラノも驚愕ッ!口から大量の血的なダメージエフェクトを吐き出しつつ俺を強く睨んで来たッ!!ふぇ…怖いよぉ…!
怖いので俺は交代しちゃいますッ!
オラ久々の出番だぞ起きろ〜っ!!
「技能【狂化】────ッ!!」
強い視線の中、俺はその名を叫ぶ──ッ!
真紅に落ちる俺の視界と出現する【自動操縦状態】の表示ッ!
久々の無感覚に内心頬を釣り上げると同時!
俺の体躯は地面を蹴り付け天井近くまで飛び上がった─────ッ!!
ブクマ・ポイント・いいね・感想等いただけると幸いです!モチベが上がります!
大変遅れてマジで申し訳ないです…




