異常との再会
────謎のプレイヤー・通称『狩り場を舞う狂人』が初心者向け狩り場にて暴れまわり、
確認されているだけでレベル1〜10の初心者27人・11〜15の中級者78人・15〜18レベルの上級者3人、合計108人のプレイヤーを一方的に蹂躙した事件から3日。
マジック&ブレイド・オンラインがサーバー内に有する公式スレッドチャンネルでは『【絶殺】狂人に復讐する方法を探すスレ』
『プレイヤー達で狂人探そうずwww』『【賞金追加】狂人殺す【18万】』などといった、狩り場を舞う狂人への復讐に心を燃やすプレイヤー達とそれを傍から楽しむプレイヤーが数多く集まっていた。
しかし、スレへの反応は毎分毎秒と更新されて行くが提供されるのは嘘偽りの情報ばかりで、一向に真実の情報は集まらない。
「ブラン〜、何やってるのぉ〜」
「ん…一昨日襲ってきたプレイヤーの情報集めてる」
「わたしあの人嫌い!関わりたくないっ!」
「まぁ急に殺して来た相手を好きにはなれないよな、俺が気になって調べてるだけだから気にしなくていいよ」
噴水広場でスレッドの数々を目に通しため息を吐くブラン。それにまとわりつくリオは先日よりも密着状態。
…まぁ理由としては彼から離れたら影に即殺されたからトラウマになっているからというのが9割なのだが。恋愛感情は互いに0である。
(…にしても、情報が少なすぎるよな。
みんな「よくいる殺人狂のバカプレイヤー」だと思ってたから動画とかもないみたいだし…)
ブランはどちらかといえば傍から楽しむ側の人間だ。
自分が一撃で倒された事に対して驚きこそしたが、むしろ内心的には「あのプレイヤーすげぇ」と感じており、今度どう状況が動くかを楽しみに見守っている。
ちなみに、実は大半のプレイヤーは逃げるのに必死だったり不意を突かれていたり乱戦で見る暇も無かったりで、まともに狩り場を舞う狂人の顔を見たのは彼だけだったりする。
「お、そこのカップル二人〜道迷ったんだけど質問OK?」
「「カップルじゃないです」」
中々変わらない状況に退屈な感情を抱き、そろそろレベル上げにでも向かおうかと考えていた…そんな時のこと。
近くから響いた声に辺りを軽く見渡し、どうやら自分たちを指しているのだと気づいた二人は否定の言葉を相手に返す。
「えぇ…最近の若い子ってカップルでもないのにあんなにくっ付くんだ、磁力でも発生してんのか…?」
驚愕と疑問符を全身を以て表す声の主。
ブランは彼のふざけたような口ぶりに少し青筋を浮かべた。
「ブラン、どうする?」
「…まぁ質問は別にいいですよ、どこに────」
とはいえ別に彼を拒絶する必要性は全く無いし、そもそも始まりの街の広場など初心者の溜まり場でもあるため、質問をされる事は想定済み。
ブランは「不安故かより密着して問を口にするリオもいる事だし、さっさと質問に答えて立ち去ってもらうが吉」と判断を下し、これまで画面に向けていたその面を上げ────驚愕の表情を浮かべる。
「お?どうした…って、あぁっ!待て、大丈夫!!
今だけだから、別に性癖とかじゃないからッ!上裸だけど俺普通のお兄さんだから、ねって!?」
─────そこには一昨日、自分を脇腹から両断した大剣使いの男…バサラが立っていた。
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