盆と茄子と胡瓜
---八月。
この月になると私は必ず胡瓜で馬を、茄子で牛を作る。 そしてそれを玄関に置く。 それが毎年の恒例なのだ。
お盆。 それは亡くなった先祖達が隔世から現世に還ってくる時期。 そして私が最も好きな時でもある。
「今年はお盆休みをたくさんもらえたから、実家でゆっくりしようと思ってるよ」
『あら~。 それなら早く帰ってらっしゃい。 お父さんがあんたの顔が見たくて仕方ないって」
「はーい」
母とそんな会話を電話で交わして、電車で乗った。 東京から地元に帰るまでにそこそこ時間がかかる。 その間に私はスマホに入れてある曲をイヤホンで聴く。 その時間が何気に好きだ。
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「ただいまー!!」
私は、実家の玄関に足を踏み入れる。 荷物を置いて、父母と軽く世間話をしたら私はあるところに向かった。
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「ただいま……。 一年ぶり……。 今日は暑いでしょう? 水持ってきたよ。 大きいやつね? 貴方、すぐに喉が渇くもんね」
しばらくの談笑。 それを日が落ちるまでやる。
---それが私。
「それじゃあね。 来年も来るね」
---貴方。
そこには小さなお墓があった。