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9.天使は怒らない

 数日して、天使が怒鳴り込んできた。


 この世界の天使は神様に使える見習いのような立場であった。


 天使は、本来くるはずだった清純な魂が何者かによって奪われたと知る。

 死神の所に行けば、悪魔が連れて行ったと言う。


 それに対して苦情を言いにきたのだった。


 彼女に、「貴女は騙されている! こいつは悪魔なのだ!」と事実を突きつける。

 彼女は、「知っています」と答える。

「ならばなぜ!」と天使が言う。天使の常識ではありえないことだった。自ら悪魔の手に堕ちるなど……。


彼女はしばらく考えてから、ぽつりと言った。「悪魔に助けられたから」だと。


 天使にとっては、同時に、天使は助けてくれなかったと言われているような気がした。


 しかし、天使にはしょうがないことだったのだ。

 そうなる運命の者だったから。全てのことにはルールがあった。

 天使にも、出来ることに限りがあったのだ。

 救いを求める声が聞こえても全てを助けるわけにはいかないから。天界のルールを破ってまで助けることはできない。


 もちろん、彼女がつらい目に遭っていることは知ってはいたが、それは言い換えれば天からの試練であったのだ。それを乗り切ったその清純な魂を天界で上位にしようと決められていたのだ。


 そう説明をするが、彼女は頑なに首を振る。


 やがて天使は苛立ち始める。なぜこの栄誉を受け取らないのだと。天界で認められることは、普通の人間ではあまり例のないことだった。


 それなのに、無碍に断ろうとする! しかも悪魔の手をとって!

 彼女に憤り、安易に騙されてしまった彼女を軽蔑する。


「私の眷属になにか用ですか。」


 悪魔が現れると、天使は


「その清純な魂を返せ!」と怒鳴る。「本来の正しい道に戻さなければならない!」と主張する。


 悪魔は、にやにやとその様子を見ていて、「天使の負の感情は美酒だ」と笑う。


「なんて悪趣味な!」と更に憤る天使。更に、突っかかろうとする天使に、


「本人の意志はどうなんですか?」


 悪魔の言葉に、天使は痛いところを付かれたように黙り込む。


そして、「本当にこれで良いんだな!」と言って彼女が肯定するのを見て「よかろう! 後で悔いるがよい!」と捨て台詞をいって去っていった。


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