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3.悪魔は諦めない
悔しくなった悪魔は、どうにかして、王女に深い絶望を感じさせたいと思うようになった。
どうすれば、負の感情を抱くのかを画策する。
希望がないから、諦めてしまうのだとすれば、希望を与えようと悪魔は考える。
そして、彼は王女の部屋に足繁く通うようになった。彼女は体が弱いようで、あまり部屋の外に出ることはなかった。
気を紛らわすような贈り物を与えたり、話し相手になったりする。
すると、王女は逆に優しくされる方がつらく苦痛に感じると判明した。
ならば徹底的に優しくしてやろう! と悪魔は決める。
所構わず、彼女に対して優しくし、見せつけるように甘えさせる。
周りの人間は、悪魔は気が触れたのか、天変地異の前触れか、と騒然とする。
彼女は戸惑い、どのように反応したらよいのかわからず、僅かに苦痛に感じでいるようだった。
これはこれで、ささやかな美味であったが、優しさに慣れたならば、より強い負の感情を味わえるはずだと、昏く嗤う。