11.物語は終わらない
その後悪魔達はあっさりと元いた国に帰る。
少し時を戻そう。
彼がいなくなってから、国は大混乱に陥っていた。仕事の大部分を担っていたからだ。
しかし、人々は次第に落ち着きを取り戻していく。協力してこの窮地を乗り切ろうとしたからだ。
むしろ悪魔がいなくなったことで、まるで憑き物が落ちたかのように、人々は、争わなくなった。
争いは何も生まない……! みなで手を取り合って、助け合い、平和に暮らそう……! という穏やかな生活になっていった。
そうなると、物事が円滑に進む。残業時間も減る。ストレスも減る。ますます円滑に物事が進む! という、まるで、セミナーの資料のように理想的なサイクルが出来ていた。
しかし、彼が戻ってきたことで一瞬で元のブラックな王宮に戻る。
人々が気が付いた時には、いがみ合い、誰もの心の中に、疑心暗鬼を飼うような世の中になっていた。
また、彼の傍には少女が一人。その正体は誰も覚えていない、死んだことすら知らない、王女。
次々と彼女の命を狙ったり、罵倒したり、様々な負の感情を椀子蕎麦の如く引っ切り無しにやってきたり。
彼女を溺愛し甘やかす悪魔と、希望も絶望も知らない少女の平和な日常が始まる。