10.神は謝らない
天使は神様に事の次第を全て話す。
そして、
「あの者は悪だった! 天界にはふさわしくない! 悪魔の手先となってしまったのだ!」
と何度も主張した。
その様子を見て、神様は呆れる。
悪魔にのせられて、感情的にさせられている、と。
しょうがないので、神様自身が告げにいくことにした。
更に数日後、彼女の前に、今度は神様が現れる。
そして、本来は天界へ来るはずであったこと、手違いで悪魔の方へ送られてしまったこと、今からでも変更できることを説明した。
改めて、彼女の意志を問う。
傍で聞いていた悪魔が
「お前のところの天使が迷惑をかけたのだが」
というのをまるで聞こえていないかのように、神様は無視をする。
彼女は静かに首を横に振り、神様の提案に断る意志を表した。
「だが、気が変わったならばいつでもくると良い」
とだけ告げて去っていった。
神様が去ってから、
「ご迷惑をおかけしました」と謝る彼女に悪魔は
「こんな、大物まで釣れるとは」とむしろ喜ぶ。
「いつも、助けてくれてありがとうございます! 私はまた悪魔さんといられて嬉しいのです。今度こそ、恩を返したいです!」
というと、悪魔は、
「言っただろう、全部自分のためだ。助けようと思ったことなど一度もない、と。」
実際、次々と珍妙のご馳走をもたらす彼女は素晴らしい存在だった。
全く自分勝手極まりない、その言葉を聞いて彼女は微笑んだ。