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そしてイズ達はティッタについての説明に夫婦で前ヴァンディル伯爵夫妻の元にも向かった。

これも2人でやろうと決めたことだ。

2人ともいきなり来たティッタに疑問を抱いていた様で、話を聞くなり驚いた様だったが納得した。

そしてすぐにイズに謝罪を始めた。


「イズちゃん、ごめんなさい。あれだけあのこを見ていたのに気づかないだなんて…」


アルヴィング夫人は申し訳なさそうにイズに言った。

いつも自信に溢れていたあるヴァング夫人は赤い目元をしていた。

イズは深々と頭を下げるアルヴィング夫人達に戸惑った。


「そんなお義母様もお義父様も…」


イズは慌てて頭を上げてもらおうとあたふたする。

ここで、なんで気づかなかったのだと彼らを責めるのは間違っている。

彼らが謝る事などないのだ。

気づかなかったのならしょうがない。

それにこの件で傷ついているのは2人も一緒なのだ。

彼らの後悔はひしひしと伝わってくる。


「あっ、なら…」


イズは困った様に口を開く。


「今度女の勘を鍛えに一緒に修行しましょう!私も恋話は好きなのですが、なかなか情報を掴めないのです。もしかしたら、私たち間違ってたのかも」


イズは真顔でそんな事を語り始めた。


「今回の分かった私たちの欠点です。早めで良かったです。これから修行できるじゃないですか!特別にお義父様も同行させて上げますよ?」


そんな事を言われて仕舞えば申し訳なさそうな顔をしていたアルヴィング夫人達はゆっくりと軽い笑みを見せた。


「…イズちゃんがウチの嫁で本当に良かったわ」


目尻にシワを寄せて彼女は言った。

横で前ヴァンディル伯爵も頷いていた。


「もしかして…他の人を迎えるおつもりだったのですか?」


イズが冗談まじりにそう言えば、先程までの重苦しい空気はいつの間にか軽くなっていた。

軽い笑い声がその場を包む。


「まさか。イズちゃん以外に考えられないわ」

「誠にその通りだ」


温かい声色で2人は言った。


「それは、とってもとっても光栄です」


そしてイズはあっけらかんと爽快な笑みを浮かべる。


「私もお義父様とお義母様の娘になれて幸せです!」


言葉通り幸せそうな表情を見せるイズを眺めて、全員が温かい目をしていた。

イズの空気は伝染する。

伝染するたびにイズの幸せは大きくなる。

そんなイズをヴァンディル卿は目を細めていた。


ーー私だけだったっら、誰も慰める事などできなかっただろうな…


彼はそう思いながらイズを眺める。

彼女だから皆が前に進めるのだと彼は感じていた。

イズの言葉、表情、仕草、香りーーすべてが、イズそのものが幸せの結晶に見えていたのかもしれない。

ヴァンディル卿は彼女といるとどうしようもない不思議な感覚になる。

もっと彼女の側にいたい、触れたい、様々な欲望が込み上げてくるのに、心はどことなく満足しているのだ。


ーー不思議な女性だ…


ヴァンディル卿はただイズを見つめながら思った。


それから幾分話し合った後、最後にアルヴィング夫人とイズがデートの約束をしたところで穏やかな空気のままその場はお開きになった。


「…会えませんでしたね」


帰りの馬車の中でイズはポツリと呟いた。


「…」


ヴァンディル卿はそれに何も返さなかった。

イズは小さくなる屋敷を振り返る。

結局その日はティッタがイズ達の目の前に現れることはなかった。


彼女はアルヴァング夫人の元に来ても何も語らず与えられた部屋で籠もっているらしい。

アルヴィング夫人達はティッタが落ち着くまで付き合うつもりだろう。

彼女の中で整理しつつある何かが収納し終えるまでイズとヴァンディル卿が彼女と会うことはないはずだ。

ティッタがどの道を進むかは未定だが、これから彼女が納得できる方法を探していくのだろう。

彼女がきちんと納得できるまでどれぐらいの月日がかかるか分からないが、それを信じるしかない様だ。


「まだ子供なのだ」


ヴァンディル卿は呟いた。


「それで許される事ではないが、あれはまだ親を必要としている」


そう言うとヴァンディル卿は眉間にシワを寄せた。

彼はそれが問題だと思っていたのだろう。


「今回はいい機会かもしれない…あいつにも私にも両親にも…」


そう言うと彼は視線を下げて綺麗な瞳を睫毛で隠してしまった。

勿体無いとイズは思う。


「もしかしたらお義母様との修行デートに旦那様をお誘いした方が良かったですね」


今度はイズは呟いた。


「私がか?」

「はい。旦那様も女性の気持ちに疎いですから。今後の予防の為に知っておくべきかも」


何も言い返す言葉を思いつかなかったヴァンディル卿は苦笑いを浮かべた。


「予防か…」

「何かあったときは次が肝心なのですよ」


得意げにイズは言うとヴァンディル卿に悪戯な笑みを向けた。


「旦那様、次はないですからね」


イズがそう言うと、苦笑いを浮かべていたヴァンディル卿はすぐに真顔になって頷いた。

そしてイズの手を握ってそこに口づけをする。


「二度としない」


再びイズを見つめる目はあまりにも熱を帯びていた為、イズの顔は一気に赤くなる。


「うっ…はい…」


イズは赤い顔のまま下を向いた。

自分が揶揄うつもりでいたのに、いつの間にかヴァンディル卿に攻められる様だった。


ーー早く防波堤を…


そう思ってイズはそっとヴァンディル卿から逃れようとしたが彼がそれを逃してくれる事はない。

すぐにイズの腰には彼の腕が回され、グイッと2人の体が密着する。


「あっ…ちょ…旦那様…うわっ」


イズは一杯一杯になって抵抗しようとするが、馬車の揺れもあってすぐに彼の胸の中にすっぽりと収まってしまった。

すると今度はイズの頬に手を添えるとヴァンディル卿はイズの目元に軽い口づけを落とす。

密着している彼の体がイズにはだんだんと熱くなる様に感じた。


「っ!!」


ヴァンディル卿の唇が離れると同時にイズがうっすらと目を開けると、そこには何とも甘い表情の彼の顔があった。

イズはまたしても脳が爆発したかの様な感覚になる。

自分でも全身が真っ赤であることが嫌でもわかる。


「旦那様の…」


イズは自分の中で生まれる熱を隠そうとふて腐れながら言葉を出す。


「旦那様の熱がうつったじゃないですか…」


苦し紛れの言い訳だと分かっていてもイズは黙ってられなかった。

その表情を見たヴァンディル卿はぷはっと吹き出して、何とも清々しい笑顔を見せる。

いつも難しい顔の彼も笑えば好青年にも見えるから不思議だ。


「私のこの思いも移ればいいのにな………」


そう言って、ヴァンディル卿はイズの唇にそっと唇をふれさす。


「〜〜〜〜っ!」


彼の熱っぽい息が全身で感じる様で堪らなくなったイズは少しだけ体を縮こませる。

彼の色気やイズの恥ずかしさやと様々な感情が入り乱れる。

ヴァンディル卿はその小さく熱っぽくなったイズをさらに抱きしめ、目を細め嬉しそうに笑う。


「全く……君はすぐに煽る」


ヴァンディル卿はイズの唇にの上で声を出す。

彼の熱っぽい息と共に低い声が体に直接響く様だった。


ーーたっ…食べられる…!


イズはここが馬車の中である事を忘れていない。

これ以上はダメだとイズはギュッと目を固く閉じて身をさらに縮こめさせる。

イズなりの抵抗だった。


「ははっ!」


ヴァンディル卿はまた豪快に吹き出して笑う。


「家までは我慢するよ」


そう言って彼はそっとふれていたイズの唇を塞いだ。


ーー家では待ってくれないのね…


イズはそのままヴァンディル卿に抱きしめられながら、逃れる術を探しながら逃れられないのだろうと悟のだった。

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