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その後、茫然としているティッタを放っておいて全てお開きになった。

ヴァング公爵はまた話し合う事を約束し帰った。

ヴィナディスもどうやら懲りた様で謝りはしなかったがそれ以上何かを言うことも無かった。

まだ心と頭がうまく整理できていなかったのかもしれない。

ローゲは別室で話を詳しく聞き取るために連れて行かれた。

処分が決定するまで部屋から出ることもできないはずだ。


「誠に申し訳ありませんでしたっ…」


そして使用人達は一通りの事が済むと、イズの前で頭を下げた。

自分達の過ちを認め、イズに懺悔する。


「…いかなる処分も受ける所存です」


浅はかさを悔やみながら一人が言った。

それに反論する者は誰もいなかった。

彼らには覚悟ができていたのだ。


「…これは君の判断に任せる」


ヴァンディル卿がイズに言った。


「君の気が済む形にしてくれ。彼らの紹介状の破棄も出来る」


ヴァンディル卿は処分の余地のイズに説明する。

正直、紹介状の破棄は彼らには厳しいものがある。


「ん〜…」


イズは考える素振りをしながら唸る。


「確かに勝手に『悪女』だなんて思われていたのは心外ですね…」


イズはウンウンと頷きながら言う。

使用人達の喉が鳴る。

どんな処分も受ける覚悟はあるが、やはり緊張はするのだ。


「でも、嵌められた事ですし仕方ない事もあるし…」


イズはぶつぶつと呟く。


「何より、リフィやじっちゃん、料理長さんとは楽しかったし、皆様にはお世話になりました…」


これはこのままなかった事にされるのかと使用人達は思い始める。

イズならあり得るだろうと。

そんな彼らの心情が伺えたのか、イズはニタリと悪戯な笑みを見せる。


「いえいえ、だからと言って許せるかどうかぁ〜…」


使用人達の心を揺さぶろうとしているのが丸わかりな口調なイズは言った。


「そうですね!皆様には罰としてこれからもこの屋敷で働いていただきます!」


イズははしゃぐ様に言った。


「「「「!?」」」」


その発言に驚いたのは使用人だけではない。

ヴァンディル卿も目が飛び出さないかと言うぐらい驚きを顔に浮かべる。


「…この屋敷は畳む…予定だ…」


もしかして重要な事をイズは忘れてしまったのではないかとヴァンディル卿はイズに説明する。

無くなる場所で人が働くわけにはいかない。


「はい。だから、ここはずっとこのままにしてください」


イズは満足げな表情で言った。


「!?」


ヴァンディル卿はまたしても驚き、目を見開く。


「私、ここの皆さんを気に入ってしまいました。だから皆さんにはここで働く罰を与えます。私も定期的にここにきて『悪女』の名に恥じぬ様に皆様を意地悪の限りを尽くします!」


イズは「覚悟してくださいね」と笑って使用人達に言葉を投げかける。

それは彼らにとっては嬉しい話だ。

働き慣れた場所には愛着がある。

だが、それを素直に喜んでいいのか怒涛の展開が続きすぎて彼らの頭が追いつかない。


「私、考えたのですよ」


イズは真面目そうな顔をして語り出すが、どうもしっくりこない。


「この噂って、結局私が怠けた事が原因ですよね?もっと『私がヴァンディル伯爵夫人だ!』って行動しておけば防げた事なんですよ」


イズは自分の言葉に自分で納得した様にウンウン頷く。


「ですから、私、もっとちゃんとしようと思って。伯爵夫人の仕事をちゃんとしたいのです」

「…そうか」


イズの言葉にヴァンディル卿は頷いた。

納得した様だ。


「しかも!」


イズはグイッとヴァンディル卿に顔を近づける。


「旦那様、何故ここを畳むって言い始めたのですか?」

「…領地の仕事に専念するためだ」

「でも、国王陛下のお許しを頂けるまで時間がかかったのですよね?」

「………」

「ですよね?」

「…あぁ」


ヴァンディル卿は渋々白状した。


「この3年間遠征に行かなかったのも、結構渋られたのに強行しましたか?」

「…あぁ」


それを聞いてイズは鼻から盛大に息を出す。

腕を組んでお怒りモードだ。


「なんで、領地の仕事に専念しようと?」

「……」


ヴァンディル卿は何かやばいと感じたのか視線を逸らす。


「旦那様?」

「……」


イズはもう一度問いかけるが、ヴァンディル卿は視線を外したままダンマリを決める。


「もしかして、自分の子供に顔を忘れたくないからとか言いませんよね?」

「!」


イズの一言にヴァンディル卿はでかい図体をびくつかせ、ぎこちなくイズの方へ顔を向ける。

ーー嘘だろ?

使用人達は信じられないと言う顔をした。

3年以上も前から知っているヴァンディル卿はそんな人間ではない。

だが、ヴァンディル卿の様子を見てそれが崩れ始める。

イズの真っ直ぐな水色の目を見つめると、ヴァンディル卿はやっと観念したのか口を開く。


「すまない……」


ヴァンディル卿は彼らしくない弱々しい声で言った。

その声色は全く彼の強面の顔に似合わない。

使用人達はその言葉を聞いてさらなる衝撃を感じるのだった。


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