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使用人達がそんな噂話をしている頃、イズは朝食のお説教をスノトーラから受けていた。


「お姉様」

「はい」

「おもてなしとは?」

「心です!」


生徒の様に手を勢い良く上げてイズは言った。

その瞳に一切の曇りはない。自信に満ちていた。


「…」


まぁ、間違いではない。


「言い方を間違えました」


スノトーラは咳払いをし、場を整える。


「…その思いは尊敬しますが、私が言いたかったのは何故ヴィナディス様におもてなしをする意味はあるのかと」

「それはお客様だから」

「…」


まぁ、それも間違いではない。


「…」


スノトーラは黙り込んだ。

おもてなしする価値なんてヴィナディスにあるのだろうか。


「あの方は、お姉様を差し置いて自分が主人であるかの様に振る舞うのですよ?」

「だからこそおもてなししなきゃ。私のお家だから」

「…」


まぁ、それもそうかと思えてくる。

イズの謎理論は何故か反論しづらい為、厄介だ。


「それよりも、ヴィナディスお姉様の反応微妙じゃなかった?もっとなんとかしたいな」

「…」


イズは勝手に反省会を始めた。

スノトーラはそれを冷たい目で眺めながら、ヴィナディスの本当の狙いがまだわかっていない状況に顔を顰める。

ーー魔力が回復したし…またやるか

イズの様に異能力を使えない人間が多い中、使えるだけスノトーラはかなり貴重な存在だ。

ヴァンディル卿はかなりの魔力を保有している為底無しだが、スノトーラはそうはいかない。

ーーローゲの動きも気になるもの…


「お姉様、失礼します」


スノトーラは説得を諦め、今度はヴィナディスとローゲを観察しようと立ち上がった。





そしてイズ一人の反省会が終わらぬ間に、昼食の時間になる。


「新鮮野菜も美味しいけど、料理長の料理ってめちゃくちゃ美味しい!」


イズは頬が落ちぬように手で支えながら満足げな表情を見せる。

その様子を眺めていた使用人達もほっこりとした雰囲気になる。


「まぁ、マシですわね」


ヴィナディスも朝食よりは満足げだ。

ーーこっちの方がヴィナディスお姉様のお口に合うのね

イズは朝食の反省を再び始めていた。


「スープでございます」


ローゲが次の食事を配り始める。

彼がイズの前にスープを置いた瞬間、彼はちらりとヴィナディスに目配せをした。

ーーこれです

ーー分かったわ

下剤が入ったスープだ。

ヴィナディスはワクワクしていた。

わざわざ毒を盛るほどの勇気は彼女にない。

だが、嘘を誇張させ、人を追いやる事に全く罪悪感を感じない人種だ。

直接命に関わる様な事に手を出さなければ許されるとでも思っているのかもしれない。


「あら、おいものスープ!」


イズはそのスープを目の前にして嬉しそうな表情を見せる。

ーーいける!

スープの入ったカップを持ち上げたイズを見てヴィナディスは目を輝かせる。


「これスノちゃんの大好物だよね。はい」


イズはそれを躊躇いもなくスノトーラに渡した。


「いいです。欲しければお代わりを頼みます」

「いいよ。あげるよ。好きなんだから、お代わり分もこれも食べなよ」


スノトーラは断るが、イズも引かない。

昔からこうだ。

いや2人の家がそうだった。

子供達のとっておきの好物は沢山食べる様に両親が予め大盛りにしてくれて更に自分たちの分をくれるのだ。

そんな親心を見て育ったイズもまた同じ行為をする。


「でも…」


いつもの事だが、それを当たり前の様には受け取らない。


「食べなよ。私、そこまで好きじゃないから」

「…では、ありがとうございます」


2人の押し合いが終わると、冷静なスノトーラは頬を染めて嬉しそうにそれを受け取る。

こういう小さな思いの受け渡しが、大きくなって、イズという人間を作り出すのかもしれない。

スノトーラがイズのスープを受け取って口をつけようとした瞬間ーー


「ちょっとダメ!」


ヴィナディスが焦って立ち上がる。

2人のイチャイチャした空気に入り込めなかったが、あのスープを飲まれては困る。

ヴィナディスの大きな声に驚いてスノトーラは飲む手を止めた。


「あれ、もしかしてヴィナディスお姉様もお好きでした?」


イズは「気がつかなくてごめんなさい」と謝る。


「違うわよ!」


もちろん、ヴィナディスはそれを否定し立ち上がると、自分のスープを持って、イズのスープと交換する。


「飲みたければこれを飲みなさい!貴方は自分のを飲むのよ!」


ヴィナディスは慌てながら、イズの下剤入りスープを突き返す。


「おぉ、気遣ってくれたのですね。大丈夫ですよ!私、領地でもりもり食べてます!ヴィナディスお姉様がどうぞ?」


そんなことは知らないイズは自分のスープを笑顔でヴィナディスに返す。


「!っ…」


ヴィナディスは自分の手元に来た下剤スープに怯える。


「こんなの飲めるわけないじゃない!」


そう言ってヴィナディスはカップを床に叩きつけた。


「巫山戯ないで!!」


上手くいかない怒りと焦りで彼女は叫ぶと、そのまま部屋を出て行った。


「気に入らなかったのかな?」


出て行ったヴィナディスを心配し、イズはションボリとして悲しそうな表情を見せる。


「…きっと、性格的にイラつきやすい人なのですよ」


スノトーラはため息まじりに言って下に叩きつけられたスープを見る。

ーー何かあったのでしょうね

あの不自然さにスノトーラが気付かないわけがなかった。


「そっか…おやつに牛乳を届ける様にしようかな?夕食には玉ねぎを沢山使ってもらおう」


イズはそれを真剣に考える。


「あ、そうだ菜園の方にお礼を言いにいかなきゃ。お礼を用意しないと」


午後のイズの予定が決まった。

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